湿気を帯びたイギリスの風景に詩情があふれ、汽車や船や自動車の乗り物もたくさんで旅の映画になっていたし、セリフがほとんどないので無声映画のようでもあり、風にめくれるページを影絵にしたり、弧を描いて舞い上がりながら風景を俯瞰していく動きも見事で、画力、活動写真力ともに充分魅せてくれた。
しかし、志村けんが酔っぱらいの真似をすると必ず笑えるのに、このアニメの手品師のおじさんの酔っぱらった動きも、その他の軽業師などのコミカルな動きも私にとっては笑えるどころかまどろっこしいくらいで、手品が大好きにもかかわらずアニメでやられてはちっともありがたみがなく、残念至極であった。
それでも最後は少し、しんみりとした気持ちになったので、決して悪い映画ではないと思う。
L’ILLUSIONNISTE/THE ILLUSIONIST 監督: シルヴァン・ショメ
(こうちコミュニティシネマ 2011/09/28 高知県立美術館ホール)