傑作!フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェルの三枚看板が適材適所。特にサム・ロックウェルは、代表作の一つになりそうな成りきりぶりだ。
娘を殺されたミルドレッド(悲劇の母/ハードボイルド)、警察署長のウィロビー(無能/天使)、警官のディクソン(凶暴/素直)とキャラクターが立ちまくり。ミルドレッドの息子(ルーカス・ヘッジズ)とミルドレッドに好意を持っている男性(ピーター・ディンクレイジ)は繊細に描かれているし、ディクソンの母やミルドレッドの元夫、看板屋の若社長なども印象深い。女性、病人、ゲイ、小人、黒人、若輩などなど、各人が人間は多面体であることを遺憾なく発揮している。こりゃあもう、人間賛歌と言ってイイ。
そういう人々が住む「アメリカの田舎町」自体も主役と言っていいほど雰囲気が伝わってきた。ミルドレッドに対する有言・無言の圧力(牧師さんとか歯医者さんとか)を笑えるようにはしているが、皆が知り合いの田舎町では良いことも悪いことも何かと濃縮されるのかな。
ミルドレッドもディクソンもやり過ぎなんである(ある意味、署長もやりすぎ(^_^;)。それには理由があるわけだが、ディクソンの理由は秘密なだけに、段々わかってきたときは『キリクと魔女』を思い出すほどだった。
署長は愛の伝道師。署長がディクソンの性的指向を知っていたのに少し驚いたけれど、ディクソンに遺した手紙は彼の胸の棘を抜き、傷口に愛の膏薬が効いた!(効き過ぎた(笑)。)
そして、ミルドレッドとディクソンが仲良く鬼退治(?)に向かう幕切れは、二人が映画の冒頭から敵対していたことを思えば感慨深い。これが本当の「愛は地球を救う」だとマジで思った。
印象に残ったところ
・ミルドレッドが鹿と遭遇する場面。『スタンド・バイ・ミー』でゴーディが鹿と、『わたしに会うまでの1600キロ』でシェリルが狐と遭遇してたなぁ。
・驚く脚本。看板に火をつけたのはお前か!(なんか笑える(^_^;。)
・事件、事故で子どもを亡くした親の心境。「後悔」。悔やんで自分を責めないでほしい。でも、映画の登場人物もこうして悔やみきれない思いを抱えて生きていくのを見て、少しでも慰めになったらいいけれど。
監督・脚本:マーティン・マクドナー
(2018/02/03 TOHOシネマズ高知5)
三枚の巨大な広告板を使って警察へのメッセージを伝えるというアイデアが秀逸。署長と母親を、典型的な悪人と善人にしなかったのも見事。そんなこんなで途中までは凄く期待が持てたのに、後半の強引な展開がちょっと残念でした。有名な俳優の出てない地味な作品なのに、ちゃんとヒットしたのは良かったです。
あたた、後半が残念でしたか。
私はあのミルドレッドの放ったファイヤーをバックに、署長の手紙を読んで涙するディクソンに感動するやら可笑しいやらで、後半もOKでした。
とにかく「典型的な悪人と善人にしなかったのも見事」ですよね。