茜色に焼かれる

とてもよかった!
茜色の堤防を母子が自転車で行く。支えは互いに対する想いしかない、この先を考えると途方に暮れる。茜色の美しい空、暮れていく空が、本当のラストシーンだと思う。その後はおまけで、作り手がお客さんに明るい気持ちで劇場を後にしてもらおうとしているのだと思う。

息子純平(和田庵)が13歳というのが微妙な線で、まだまだ子どもらしい今は「母ちゃん好き」と言ってくれるけれど、その後はどうかわからない。もう少ししたら母ちゃんに酷いことを言うかもよ。もし、作り手が純平の立場だったとしたら、この映画は母ちゃんに対する「ありがとう」と「ごめん」なのかもしれない。すごく立派な感謝と罪滅ぼしになったと思う。それだけ母ちゃん田中良子(尾野真千子)のキャラクターが立っていた。人としての筋を通し、息子命で健気で面白く、ド迫力のある人を嫌う人はいないでしょう。ケイ(片山友希)との居酒屋の場面は出色。また、純平の愛の証しの跳び蹴りも。即行で新型コロナ禍の状況を織り込んで作っていることにも感心した。冒頭に出てくる字幕「田中良子は芝居がうまい」が本当かどうか、実生活でも演じているのかどうか、最後の最後まで効いているのも面白かった。

サブタイトルで家賃や飲食代の金額が出てくるのは、お金に縛られる「心の不自由」を表していると思う。お金がなければ寝る間もない。心の不自由な人が溢れている。心の不自由を自覚している人はどれだけいるのか。

純平のアゴのほくろは父ちゃんゆずり。父ちゃん役のオダギリジョーのアゴにほくろがあったと思うから。(検索したら庵くんのアゴにもほくろがあった!)
(監督・脚本:石井裕也 2021/05/24 TOHOシネマズ高知1)

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