リュック・ベッソン監督作品を全部観たわけではないが、本作が最高傑作だと思う。予告編を見て血しぶきだらけの怖いバイオレンス作品と思いパスを決め込んでいたが、映友の強力プッシュがあり、無料のアマゾンプライムでも迷いつつパスし続けていたのは「銀幕で観よ」という天啓であったかと思いながら駆けつけた。『ニキータ』『レオン』の頃のような抒情や浪漫があり、おっそろしく重厚な音楽なのに犬のとぼけた顔や小走りがユーモラスで、壮大な正当防衛シーンでさえバイオレンスより滑稽味が勝っていた。ごった煮感のある挿入歌も、『ゴッドファーザー』愛のテーマにのせて主人公ダグラス(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)の孤独な現状が描かれたり(涙が出る)、就職先のキャバレーでダグラスが歌う「群衆」は(エディット・ピアフの口ぱくだとしても)素晴らしいし(涙が出る)、アニー・レノックスやシェールが出てくるわで、音楽の門外漢である私でも楽しめた。そのうえ、ダグラスは受難を被りながらも、最後に十字架に掛かるまで生きぬいた。その生き方は、まさに「人はパンのみにて生くるにあらず」。無償の愛を注いでくれるベイビーたちとシェイクスピアが、恋愛では暗黒面に落ちた彼に自尊心を与え続けてくれた。ラストはダグラスの幼少期から逮捕に至るまでを聴き取っていた精神科医エブリン(ジョージョー・T・ギッブス)の家の前に一匹の犬がやって来て彼女を見上げるシーンだ。無償の愛を注いでくれる犬は神の象徴だ。人生の痛みを背負う人に神は寄り添ってくれるらしい。神はエブリンが背負う困難を解決してくれるわけではないけれど、生きる力になってくれるだろう。私はキリスト教徒ではないので、とにかく生き抜いたダグラスと本作品自体(本や映画)が神だと思う。神は心の食べ物、必需品だ。花も実もある娯楽作だった。
Filmmusik(フィルムムジーク)さんの『DOGMAN ドッグマン』の挿入曲とサントラ
(2024/09/05 あたご劇場)
プッシュした甲斐があったなぁ(嬉)。
「神は心の食べ物、必需品だ。花も実もある娯楽作」に快哉。
強力プッシュ、改めてありがとう!よき作品でしたね。
アマゾンプライムの吹き替え版を3、4回に分けて観ましたが、驚くほど声に違和感がありませんでした。細切れ時間の小さい画面では没入感は全くなかったけど、スクリーンで見落としていたダグラスの涙に気づいたりして、何観てたんだ。>自分
ってな感じでした(^_^;。