吸いついて離れないカメラワーク。切れっ切れ、ガンガン、猛スピードでぶっ飛ばすスコセッシ演出。欲望に直球ど真ん中、悪徳の権化の証券マンを爆発的な熱量とカラリと明るい茶目っ気で演じたディカプリオ、天晴れ。他の誰にもこうは演じられないだろう。アカデミー賞を獲らせてあげたかった。好き嫌いは分かれるかもしれないが、金儲けの狂気を描いた『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は、毒持ちコメディの傑作だと思う。
コメディと言えば『アメリカン・ハッスル』にも笑った。FBIが詐欺師カップルを利用して、おとり贈賄で汚職政治家を一網打尽にするはずが・・・・というひねりの利いたお話が面白く、ダメ男ダメ女の登場人物が愛しくなるほど魅力的だった(カリーヘアのFBIを除く)。しかも必殺デ・ニーロのカメオ出演。やられた(笑)。愛する人と真っ当に生きることが幸せだというラストも良い。
うえの2本は実話ベースで、『ラッシュ プライドと友情』も実話ベースだ。F1レースの爆音は映画館ならではの迫力だし、優勝を争うライバル同士のジェームズ・ハントとニキ・ラウダの描き分けが面白い。「派手」対「地味」あるいは「放縦」対「堅実」とも言える正反対の二人なのだ。観たのはちょうどソチ・オリンピックの頃で、キム・ヨナちゃんが「浅田が泣きそうなとき、自分も込み上げてくるものがある」とインタビューに応えていたという記事を読んで、ライバル同士の友情というものに思いを馳せた。
(シネマスクウェア 2014年3月号)