調査報道の面白さがぎっしり。文献に当たったり、聴き取りをしたり。ジリジリするような地道な調査と、リリースする前のドキドキ感。スタンリー・トゥッチが演じたアルメニア系の弁護士やユダヤ系の編集局長など、社会の中の少数派ってやっぱり嗅覚が鋭い。虐げられる側から物事を見ざるを得ないところがあるから。虐待を行っている聖職者リストを受け取っていながら(そのときは問題視しなまま)やりすごしていたロビー(マイケル・キートン)のうかつさは苦い。
ただ、私がこの作品で最も強く感じたことは、性的虐待の被害者の苦しみだった。魂の殺人と言われる犯罪の被害者の悲痛さを描いてこそ、隠蔽してきたバチカンの罪深さを描くことにもなるのだけれど、私としては「苦しみ」にスポットライトが当たったように思った。それだけに、ギャラベディアン弁護士が被害者の背中に当てた手の温かさに感動した。
(2016/04/16 TOHOシネマズ高知1)