グスコーブドリの伝記

ものすごく魅力的な失敗作のような。絵の美しさやキャラクターのユニークさはよいし、音楽は手風琴や笛の音色がこの作品の雰囲気にピッタリ。(キャラクターごとのテーマを徹底したのはやりすぎかな?)
「失敗作」かどうかは作り手にしかわからないことなので、失敗作と言い切るのは間違いだと思うけれど・・・。
たとえば、冒頭のグスコー一家の団らんの場面。セリフや笑い声が不自然で、いかにも冷害の前の幸せな一時を描くためという感じがする。あるいは冷害で父と母が子どもを残して相次いで森へ行ってしまったのは自発的姥捨てなのかもしれないが、あの描写では突然両親が出て行ったのは、なぜなのかまったくわからない。両親という食いぶちが減ったおかげで、ブドリは生き延びることが出来たのだとすれば、誰か(何か)の犠牲のうえに私たちは成り立っているという宮沢賢治的テーマにつながるんだけど。あとでブドリが両親に生かされたと悟る場面があれば、わかりやすいのに。しかし、作り手が、家族団らんのシーンは不自然でよい、両親が出て行ったのは、なぜだかわからなくてよい、とそういうつもりで作ったのであれば、作り手にとっての失敗作とは言えない。今、二つ例を挙げたけれど、大体この調子だったと思う。

残念なのは、この映画の肝が伝わってこない点だ。「誰かのためになりたい、たとえ命を投げ出しても」なんて思ってもない観客にも、ブドリの「みんなのためなら、ぼくはどうなったって構いはしない」という気持ちを理解はできる程度に共鳴させるのが感動させるということのはずなんだけど。セリフで言わせてしまうなんて。
命を救うために命を掛けなければならない場面は、現実にあると思う。例えば、昨年の福島第一原発事故の現場で働いた人たちにどんな葛藤があったのか想像してしまう。その中にブドリがいたら(?)。
「海猿」シリーズは、命を掛ける話だからまだ共感が得られやすいのかもしれない。「ブドリ」は命を投げ出す話だから作り手としても難しかったのかな?

ともあれ、私にとっては魅力的な作品で、もしかしたらまた観に行くかも。

監督:杉井ギサブロー
(2012/07/07 TOHOシネマズ高知4)

スノーホワイト

おしまいになるにつれてつまらなくなる。
(予告編『メリダとおそろしの森』を面白そうだと思って見ていたら、メリダが戦いだして辟易した。見ていても戦いは疲れる。)
スノーホワイト(クリステン・スチュワート)も無理に戦わなくてもよかったのに。戦うんだったら負ければよかった。やはり、ラヴェンナ女王(シャーリーズ・セロン)様にはかないませんでした~(え~ん)、となれば面白かった。
狩人エリック(クリス・ヘムズワース)と幼なじみウィリアム(サム・クラフリン)との三角関係になっていっても戦いよりはよかったのに。ああ、つまらない(え~ん)。私が泣くわ。
だけど、ビジュアルはとてもよかった。開花と同時に実がなっている林檎だか桜だかの木も不思議な感じがしたし、黄金の鏡人間みたいなのが溶けるみたいなのはよく思いつくなぁ。白馬に乗ったスノーホワイトが一軍に追いかけられる遠景も美しい。黒い森の造形もかなり面白かった。弱い心が恐ろしいものを見せるって、これ本当。夏になると目の端に入ったものが何でも蜘蛛に見えてドキンとする。スノーホワイトに林檎を差し出すウィリアムが美しい~。化粧や照明で俳優は美しくなるんやね~。ウィリアムの表情がちょっと怖くて、その白い肌と真っ赤の林檎の対比も効いていた。

SNOW WHITE AND THE HUNTSMAN
監督:ルパート・サンダーズ
(2012/06/30 TOHOシネマズ高知5)