DVDで見たんですけど、思ったほどにはおもしろくなかったです。
だって、だいたいオスカー・ワイルドの戯曲どおり劇中劇は進んでいくんだもの。
白塗りのヨハネに、でっぷりとしたヘロデ王、金粉まぶした美少年とか出てきてもね〜、悪趣味度はそれほど高くないんじゃないかしら。
興味深かったのは、「ヨハネをボウジーがやるのはミスキャスト、ボウジーがサロメで、ヨハネは私(ワイルド)だ」というセリフです。ああ、「サロメ」ってそういう戯曲だったのか〜と納得しました。
投稿者: お茶屋
海老蔵と菊之助
名古屋の御園座で十一代目市川海老蔵の襲名披露公演を見て来ました。
いや〜、海老ちゃん、いいですね。「源氏物語」(三幕)では、花道に登場しての声のトーンを聴くなり、これで役作りは決まり!と思いました。色気、高貴な身分、秘めた恋ゆえの憂い、情熱が声に現れています。気だるげな又はそっけない調子の物言いには、ときに笑いを誘われましたが、六条の御息所に対してなどは残酷に聞こえました。また、容貌の美しさは言うに及ばず、伏し目がちな表情や演技が自然で、7月の与三郎を見たときは役作りが透けて見えたものですが、この光源氏について言えば、正にはまり役だと思います。
「源氏物語」での菊ちゃんは、朧月夜。藤壺への想いがつのり悶々とする光の君に突然襲われて恐れおののくものの、相手が光の君とわかって一目ぼれ。その後は、自分の心に正直に「会いたかった」と胸にもたれたり、都落ちする光の君を追いかけたりと主体的な女性です。菊ちゃんは、品よく可愛く美しく演じており、最後の別れのシーンなどは、海老ちゃんとの芝居が実に息が合って思わず涙を誘われるほどでした。
今回の「源氏物語」では、藤壺との不義の一夜から六条の御息所、葵上、朧月夜ときて須磨へと都落ちするまでのお話ですが、海老ちゃんファンのWEBサイトの掲示板などで言われているとおり、暗転過多の細切れ芝居であって、役者の魅力で持っているというのは、そのとおりだと思いました。
皆よい俳優で、私は澤村田之助さんが演じた弘徽殿の女御が特に気に入りました。実に憎々しげながらも、「十三で帝に嫁してから幸せだったことは一度もない」という本来なら哀しい身の上を、嘆きよりもその強烈な個性で生き抜いてきた逞しさ。憎しみに費やした時間の長さを感じさせる風貌。感情を隠さないために子供っぽく見えて、どこか憎めない人物であります。物語を読む限りにおいては、(私の読み取り不足でしょうが)単なる悪役に過ぎないと思っていた弘徽殿の女御を生身の人間として実感させてくれたのは収穫でした。「源氏物語」は、本当にあらゆる女性が描かれているんですねえ。
俳優で多少の不満があるのは、頭の中将を演じた尾上松緑さん。私は頭の中将には思い入れがあるので、松緑さんにはちと酷かもしれませんが、あれは頭の中将じゃなーい!と思いました。少なくとも、頭の中将が悪代官に袖の下を渡す町人のような表情をするのはいかがなものかと思います。「助六」の白酒屋は、まだまだ精進の余地はあるものの、頭の中将よりずーーっとよかったので、お若いことですし、今後に期待したいと思います。
また、桐壺帝の中村雁治郎さん。雁治郎さんの解釈では、桐壺帝は藤壺と光の君の密通を感づいていたのでしょうか?私はお芝居をより面白くするために、桐壺帝は感づいていたが、藤壺と光の君を愛するがゆえに二人ともを許し、二人に対しては知らぬ振りをしていると解釈して演じる方がよいと思います。そうすると、帝の二人への愛の深さと心の広さが表現されることとなります。ところが、雁治郎さんは、帝は知らなかったとして演じているように見えます。だから、妻と息子の不義に気づかない無垢な帝が、精一杯妻を愛しているというふうに、人はいいけれど少し小粒な人間に見えてしまいました。
雁治郎さんは、「源氏物語」では言葉尻を長く伸ばしたりで芝居が型に嵌りすぎていたので、型がものいう(?)昔からの芝居「熊谷陣屋」の直実に期待しておりました。(浄瑠璃ものだしぃ。私は浄瑠璃が好きなのよ。)ところが、セリフのとおりがあまりよろしくないせいでしょうか、おやつを頂いたばかりだったせいでしょうか、うとうとしてしまいました〜。がーん!鳴門太夫さんの浄瑠璃は、すばらしかったのにぃ(悔)。
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さて、「助六」は、すばらしく面白いです。抱腹絶倒、愉快痛快。
海老ちゃんは、かっこいいー!かわいいー!これ地じゃないっすかぁ〜(笑)?
花道で一節踊ってくれるんだけど、絵のようなとはこのことだと思いました。うつくしー!
早口のセリフが聴き取りづらいところがあったのが残念ですけど。
それにしても、あれだけ股を開く所作が多いのに、ピンッとなった裾が、ずーっとピンとなったままっでくずれないのが面白いですねー(笑)。
菊ちゃんの揚巻は、色っぽい、かわいい〜!これでもう少し、キリリとしたところがあれば、言うことないですね〜。もっと、ツッコミどころがあってほしいぞ(笑)。
衣裳、すごかったですねえ!
7月にお富と与三郎を見て思ったことですが、海老ちゃんはクレヨンで枠からはみ出さんばかりに塗ったぬり絵、菊ちゃんは色鉛筆で枠からわはみ出すことなく均一に塗ったぬり絵。海老ちゃんは太陽、菊ちゃんは月。
海老ちゃんの思考錯誤ぶりが目に見える与三郎、おもしろかったなー。切られた後の与三郎のため息、色っぽかった〜。(あそうそう、光の君のため息、何種類もため息があるんですが、どれもよかったです。私は海老ちゃんの「ため息」のファン(笑)。)
なんか、海老ちゃんのことばかり書いていますが、私は菊ちゃんが好きなのよ。木目細かい演技が快感なのよ。見る度にいいよね〜と思うものね〜。もっともっと上手に、深みが増していくように精進してください。とりあえず、ぬり絵の枠の取れるのはいつの日か。一皮むけたところを見るのが今から楽しみです。
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観劇日:9月25日、26日
演目昼の部:「源氏物語」(三幕)
夜の部:「熊谷陣屋」、「口上」、「助六由縁江戸桜」
竹の春
俳句の季語で「竹の春」というと秋のこと、「竹の秋」というと春のことだそうです。竹は春に葉が散り、秋に芽吹くからだそうですが、このところ、遠くの山間を見ても竹が真っ茶っ茶ですね。
どうしたもんじゃろうと思っていたら、どうやら今月初めの連続台風で飛んできた潮というか、塩の害だそうです。
竹だけではなく塩害で葉を散らした木々はたくさんありまして、その木からは新芽が吹いているんですよ。葉が散った後、暖かいものだから春が来たと思ったんでしょうね。
それで、なんと桜の花が咲いてたんですよ〜。それも一輪や二輪じゃなく、遠くからもわかるくらいです。一分咲き?二分咲きかな?
狂い咲きと言っちゃ可哀相ですよね。ちゃんと順番どおり葉が散ってから咲いてるんだから。君は正しい。正しいぞー。
『サロメ』ともう1本
『あなたにも書ける恋愛小説』は楽しかったです。
ケイト・ハドソンは、やはりポスト、メグ・ライアンですね。結構芸達者だし、メグ・ライアンより芸域が広そう。
同時上映の『サロメ』は、爆睡してしまいました。よかったらしいいんですけど、ああ、もったいないことしたな〜。
アントニオ・ガデス(7月に亡くなりましたね)のような私好みのカッチョいいダンサーがいなかったせいだと思います。
あと、もっとフラメンコしてほしかったのですが、けっこうバレエっぽかったですよね。
サロメというとオスカー・ワイルドですが、たしか、最近、ケン・ラッセル監督の『サロメ』がDVDで出ていませんでしたか?ちょっと、検索してみよう。
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ありました、ありました。急に見たくなったなあ。
『マーラー』と合わせて購入しませんかって、amazonは商売上手だなあ(笑)。
『マーラー』って見たかったけど見てなかったような。う〜ん、両方ほしくなってしまった。
amazon ケン・ラッセルのサロメ