おとなのけんか

おもしろかった。一幕の舞台劇っぽい作品だった。
ペネロペ(ジョディ・フォスター)とマイケル(ジョン・C・ライリー)のロングストリート家、ナンシー(ケイト・ウィンスレット)とアラン(クリストフ・ヴァルツ)のカウアン家の二組の夫婦が、子ども同士のけんかの後始末のために集まって話し合ううちに、おとなのけんかに発展していくというお話。
はじめは「ロングストリート組」対「カウアン組」で反目していたのが、「妻組」対「夫組」になっていったり。共同体というのは色んな組み合わせが効くものだ。また、夫妻のどちらかに協調性がないと、残る一方がイヤでも協調性を発揮しなければならなくなるというのは、往々にして見かける様子であり、お守り役のお二人さんにはお疲れさまと言いたい(?)。

今、調べたら原題は「大虐殺」とのこと(^o^)。
そういえば、始まりのタイトルバックで、いたってのどかな公園を背景に、何か事が起こりそうな(勇ましげな、大事のような)音楽に乗って、出演者やスタッフの名前が画面の奥からズンズンと手前にやってくる。そうか、あの音楽は「これから殺戮が始まるよ」ということだったのか(笑)。
クレジットの背景で子どもがケンカ別れするプロローグから、即、親同士の示談が成立した場面に移行するなど演出の手際もよろしく、双方のちょっとした言葉が気に障り不穏な空気を漂わせる役者の演技も可笑しい。
エピローグは、またしてもあの勇ましい音楽で、のどかな公園を背景に子どもは既に仲直りしていっしょに遊んでいる。いったいあの修羅場はなんだったのか(笑)。子供のケンカに親が出るなというのは、洋の東西を問わない不文律だったのか(?)。

それにしてもセリフの上とはいえ、ジェーン・フォンダが登場するとは。先日、カンヌ国際映画祭のレッドカーペットで若々しくも華やいだ姿を見ることが出来て、流石だと感心したばかりなので、劇中のアランの「J・フォンダのような戦闘的な女性より、バーバレラのようなエロティックな女性が魅力」みたいなセリフを聴くと(←ぜんぜん、そんな風には言ってないけど、そんな風に翻案して聴いたせいか)、ポランスキーはJ・フォンダと仲良しなのかしらんと想像したりして独り可笑しかった。
ジョディ・フォスターに関しては、ナンダカかなしひ。子どもの頃は、もっと大らかだったよねぇ。役柄とはいえ、ちょっと神経質すぎて笑えない(涙)。鎧甲を脱いでガハガハ笑う彼女をもう観ることはできないのだろうか。

CARNAGE
監督:ロマン・ポランスキー
(2012/05/26 TOHOシネマズ高知3)

ペーパーバード 幸せは翼にのって

妻子を空襲で亡くしたホルヘ(イマノール・アリアス)の嘆きの場面、あるいは暴行を受けて帰ってきたエンリケ(ルイス・オマール)にホルヘがありったけの優しさを見せる(エンリケの髭を当たる)場面、はたまた極めつきは撃たれたホルヘを呼ぶミゲル(ロジェール・プリンセプ)たちにペーパーバードが舞う場面など、今や古くなったと思しき音楽と一体となった劇的な演出が全くイヤミにならず、スペインの内戦の頃を振り返る昔の色合いにピタリと嵌り、しかも旅芸人の歌と踊りとで楽しませてくれて、笑えるところもあり、とてもよかった。(子どもには盗むなと厳格にしつけるが、背に腹は代えられないという状況下、二人の大人が懐や帽子からジャガイモを取り出すところが哀しくも可笑しい。また、芸人を辞めて、やもめ村長に嫁ぐと決めた女性のエピソードも可笑しくて、やがて哀しい。)

ホルヘが総統批判の歌を歌ったとき、水を打ったように静まりかえる客席だったが、それからウン十年。老いたミゲルが同じ歌を歌うと客席が沸く。独裁政権下とは隔世の感である。スペインのことなどあまり知らない私でも隔世の感を味わえるということは、スペインの若者もそうなんだろう。映画は、こうやって、自由にものが言える喜びを伝えて行けるのだなぁ。

PAJAROS DE PAPEL
PAPER BIRDS
監督:エミリオ・アラゴン
(シネマ・サンライズ 2012/05/24 高知県立美術館ホール)

ダーク・シャドウ

家族の話だった(^_^)。アンジェリーク(エヴァ・グリーン)にとっては、悲恋物語であった。バーナバス(ジョニー・デップ)とジョゼット(ベラ・ヒースコート)にとっては、形を変えて恋愛成就。ティム・バートン夫妻が円満なせいでしょう。実生活がこんなにも作品に反映するものなのか(?)。前からのことだけど、バートン監督は見事なストーリーテラーだ。今回もリバプールから始まって、あっという間に物語に引き込まれる。70年代のファッションなども懐かしく観た。バーナバス姿のジョニー・デップが織田裕二に似ていると思うのは私だけだろうか。

エリザベス(ミシェル・ファイファー)/ホフマン博士(ヘレナ・ボナム・カーター)/ウィリー(ジャッキー・アール・ヘイリー)/ロジャー(ジョニー・リー・ミラー)/キャロリン(クロエ・グレース・モレッツ)/デイヴィッド(ガリー・マクグラス)

DARK SHADOWS
監督:ティム・バートン
(2012/05/19 TOHOシネマズ高知7)

ブリューゲルの動く絵

これは目のご馳走だ。絵画そのものの美しさが横溢している。小さく描かれた遠景の人々が微妙に動いているのも面白い。
一枚の絵について、映画で懇切丁寧に解説してもらった感じがする。赤い服はスペイン軍の服とか。モチーフが蜘蛛の巣状に配置されているとか。粉ひき風車は神の視点とか。疲れていてものすごく眠かったので、全編うつらうつらしながら観たのが本当にもったいない。ブリューゲルの絵はあまり好きではなかったが、今後観る機会があったら、もっとよく観ようと思った。そして、他の絵画もこのように解説してもらえたら、どんなに楽しいだろう。ぜひ、シリーズ化してほしい。

ブリューゲル(ルトガー・ハウアー)/マリア(シャーロット・ランプリング)/ニクラース・ヨンゲリンク(マイケル・ヨーク)

THE MILL & THE CROSS
監督:レフ・マイェフスキ
(こうちコミュニティシネマ 2012/05/19 メフィストフェレス)