スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム

20年間シリーズを見続けた人へのご褒美のような感動作と聞いて観る気になったのだが、『アメイジング・スパイダーマン』の続きを観たいと思っていたのに『2』が公開されたのも気がつかなかったし、トム・ホランド版は全く観ていない。果たして、私にとって感動作となるのであろうか???

ピーター・パーカーとその友だちとMJの三人が仲良しなのでビックリ(笑)。トム・ホランド版は明るくお茶目なんだ~。これもまた良し。
ヒーローものは主人公が可哀想であればあるほど面白いし、なんらかの犠牲を払ってこそのヒーローだと思っているので、そこらへんをしっかり踏襲したうえで、スパイダーマンの初心忘るべからず(ノブレスオブリージュ)を復唱し、墓場では終わらなかったけれど、ちゃんとお墓参りのシーンはあるし、なかなか感慨のある終わり方で満足、満足。私にとって感動作とは言えないが、観てない作品も観たくなった。

グリーンゴブリン(ウィレム・デフォー)とドクター・オクトパス(アルフレッド・モリナ)の登場は嬉しい。特にドクター・オクトパスの造形が好きなので、こちらメインで暴れてくれて凄く楽しかった。二人の役者もキャラクターの二面性の演じ分けが笑えるくらい上手いし。
あと、アンドリュー・ガーフィールドはよしとして、トビー・マグワイアが老けているのが胸に痛かった。2002年の公開から20年。こちらもなかなかの感慨だった。
(2022/01/12 TOHOシネマズ高知4)

空白

登場人物のほぼ全員のキャラクターが極端すぎると思うが、面白く観た。
タイトルの空白が何を指しているのか意味がわからないが、父と子がそれぞれに描いた青い空に白い雲の絵が「空に白で空白?」と思ったりした。

一貫して伝えることの難しさ、伝わることの意外さを描いていると思う。あまりにも皆独りよがりで相手の反応など伺わないものだから、登場人物同士の意思疎通ができた瞬間、ものすごく(?)感動する。たとえば、港にマスコミが押しかけてきたとき添田(古田新太)を守ろうとして雇われ人の若者がマスコミを蹴散らすが、添田は彼の後ろ姿を見て自分のために盾になっているとわかる。人の気持ちを慮ることがなかった添田に伝わるのか(へぇ~)。または、元妻(田畑智子)が怒って去ろうとすると本心を伝えて謝る。元妻の方にも添田の気持ちは伝わって何やら感動の場面になる。添田とスーパーアオヤギの店長(松坂桃李)、あるいは店長と従業員(寺島しのぶ)、従業員とボランティア仲間など、いずれも気持ちは伝わらない。添田の娘を最初に撥ねた女性とその母親(片岡礼子)の謝罪の気持ちも添田には伝わらない。添田が受けとめないと言った方がイイか。要するに発信する方も受信する方も皆自分勝手なのだ。マスコミの視聴者(読者)への伝え方が恣意的なのは、不適正で最も罪深いことは言うまでもない。受信する方はよっぽど気をつけなければならない。

意思疎通というのは相手があってのことで、添田のように娘を亡くしたら、もう、自分(の中の娘)と対話するしかなくなる。生きているときも娘との意思疎通はできてなかったし、これからもそうだ。ずーっと空白が続く。添田の本当の喪の仕事が始まったところで映画は終わる。
(2021/12/27 あたご劇場)

少年の君

シャオベイ(イー・ヤンチェンシー)が高橋大輔に見えてしかたなかった(^_^;が、たいへんドラマチックなラブストーリーで感動した。
ニェン(チョウ・ドンユイ)とシャオベイの境遇は、「傷だらけの青春」という言葉がうすっぺらく思えるほど、あまりにも現実味を帯びていて胸が痛んだ。孤立無援の状況は二人の結束を強めるものだから恋愛映画の定石と思えばよかったのかもしれないが、現実世界のいじめや子どもの貧困がちらついて、益々胸が痛むのだった。
それでもドラマの運びは確かなもので、ニェンをいじめ抜いていた女子が死にシャオベイが殺人の容疑で逮捕されると、火曜サスペンス風味も出てきて物語にぐいぐい引き込まれるのであった。

誰かを愛しく思ったり、慕ったり、堅い信頼で結ばれる。それは美しいものだ。
ニェンとシャオベイの取調室を交互に映して二人の結びつきの強さを表現したところは『アタラント号』を思い出したりした。

偉いな~と思ったのは、若手の刑事さん。ニェンの重荷になる嘘を上手い嘘で下ろさせた。真相を話した後、シャオベイと対面し、二人、涙をにじませながらの笑顔がまぶしい。心の中の言葉が聞こえてくるようだった。ここまでくると珠玉のラブストーリーと言うにふさわしい。

中国の大学入試共通テストの様子が描かれていて面白かった。貧富の差やいじめの構造など、どこまでグローバルなんだろう。
(2021/12/24 あたご劇場)

劇場版 きのう何食べた?

ジ、ジルベール!?
美少年を期待したら、そうでもなかった(^Q^)。中身のことだった。

今年観た映画の中で一番笑ったような気がする。愛する人が死ぬかもしれないと思って死ぬほど心配したり、取り越し苦労とわかってほっとしたり、悲喜こもごもがマンガチックなオーバーアクトもピタリとはまり、笑い9分に泣き1分の楽しさだった。

主軸はシロさん(西島秀俊)の両親(梶芽衣子、田山涼成)が、シロさんのパートナーであるケンジ(内野聖陽)に来てほしくない問題。頭ではわかっていても生理的に症状が出てしまう母親。ケンジにとってもシロさんにとってもかなりキツい状況だ。それでも今のところ、理想に向かってよいステップを踏み出した格好になっていると思う。シロさんは年始はケンジと過ごすことにするし、両親と不仲になるわけではない。ケンジも実家に行ってあげてねと言ってくれる。
登場人物が脇役まで皆、クセはあってもいい人ばかりなので、理想的な世界に思えてきた。
(2021/12/22 TOHOシネマズ高知1)