岡田祭り

好きには違いないが、なぜか好きとは言い切れない岡田くん。微妙に好きな岡田将生くんが出演した作品を観て暑気払いを行った。挙げ句の果てにインスタグラムまでフォローしたので、これは好き♥になったと言うべきだろうか。何か抵抗のようなものがあるけれど。
たくさん観た中で、もう一度観たいお気に入りをピックアップ。

【主演映画】
ゆとりですがなにか インターナショナル(2023)
セクハラ・パワハラ、日本で働く外国人、ネット通販などなど、時事ネタ満載、かつ、夫婦や家族の話になっている傑作コメディ。松坂桃李、柳楽優弥、安藤サクラ、仲野太賀ほか、役者がそろっている。

重力ピエロ(2009)
これも家族の話。兄が弟を受けとめる。感動したので感想を書いた。

僕の初恋をキミに捧ぐ(2009)
こっぱずかしいタイトルに尻込みしていたが、ドはまり。乙女心は不滅だ。心臓を移植しなければ限られた命の少年を岡田くんが、その初恋の彼女を井上真央ちゃんが演じる。二人とも可愛い。臓器移植について「そうかもなぁ、そうだろうなぁ」と思うところあり。明るくカラッと笑える(微笑ましい)好きな作品だが、30分短縮してもらえれば完璧。

アントキノイノチ(2011)
これも30分短縮してほしい。観てないと思っていたが、終盤の海辺の場面にきて観てたかもと思い、検索してみたら感想まで書いていた。観覧車の場面では、私なら「お元気ですか~(by井上陽水)」と声を掛けると思いながら観ていたが、上記リンク先のコメント欄にまったく同じことを書いていたので自分の変わりなさに驚いた。松坂桃李、染谷将太、仲野太賀が同じクラスの高校生役。この作品は「カタログ将生」と言ってもいいくらい黒将生、白将生、灰将生、コメディ将生の表情がうかがえる。

【脇役映画】
ドライブ・マイ・カー(2021)
もう一度観るには長尺だけれど、劇中劇「ワーニャ伯父さん」のラストシーンはやっぱり感動的だと思う。それに車中での岡田くんの演技は値千金。感想も書いているけど、車中の演技については西島秀俊のことのみ。なぜ!?(西島くんのファンだから、ひいき目なのかも。)

悪人(2010)
動画配信で再見。やはりもの凄く力のある作品だ。記憶にある場面がいくつもあった。ラストショットは灯台の元から夕焼けを見つめている二人(深津絵里と妻夫木聡)のそれぞれのアップで、二人の逃避行は悲しいだけではなく(生きるうえで必要な)美しいものであったんだと思わされ、思い出しても涙がでそうになる。でも、このカット、すっかり忘れていた。苦しくなる作品という思いを刷新してくれたので、再見してよかった。力のある作品は、素晴らしい鑑賞文を生む。間借り人の映画日誌『悪人』のページと、そのリンク先(推薦テクスト)のページも素晴らしい。

天然コケッコー(2007)
動画配信にて再見。原作漫画は未読だが、各エピソードの余韻が、くらもちふさこ作品特有の「間」を彷彿させる。主人公(夏帆)たちが9年間すごした学び舎を卒業するときの郷愁がたまらない。島根県の田舎の、のどかさも方言もよい。

星の子(2020)
感想

【連続ドラマ】
昭和元禄落語心中(2018)
レンタルDVDにて再見。全10話。物語がむちゃくちゃ面白い。名人、八代目有楽亭八雲(岡田将生)が幼少期(子役)から老年期までの大河浪漫。菊比古(岡田)、助六(山崎育三郎)、みよ吉(大政絢)、そして落語の四角関係が一つの見所だ。もう一つの見所は、元ヤクザで八代目に入門した与太郎(竜星涼)と、助六とみよ吉の忘れ形見の小夏(成海璃子)の落語好き具合で、ドラマ全体が落語賛歌になっている。芸能の中で最も厳しい芸が落語だと思っている私としては、描かれている厳しさが想像していたとおりで、それほど詳しくないのに当たっていたことが嬉しかった。原作もアニメも未見なので見当違いの意見かもしれないが、八代目は名人としては少々険しすぎかなと思った。晩年の力の抜け具合はよかったかな。噺家は50代からが本番だ。若手の力みは疲れる(^_^;。

大豆田とわ子と三人の元夫(2021)
全10話。主役の松たか子に魅せられる。その親友役の市川実日子もいい。人との繋がりを描いたコメディだけど、大好きな人との永遠の別れが織り込まれ忘れがたいドラマとなっている。

ザ・トラベルナース(2022)
全8話。中井貴一にハズレなし。短期の雇われ看護師(トラベルナース)が二人、同じ病院にやってくる。仕事はできるが思いやりがない看護師(岡田将生)が、ベテラン看護師(中井貴一)の影響で一人前になっていくバディもの。毎回、ゲスト出演の患者もいいキャラクターで涙あり笑いあり。特に第7話は、癌が転移した若い患者が「ゾンビは生きている」という映画を撮るのをサポートする話で、感動して2回観た。ベテラン看護師の秘密が徐々に明らかになっていくのも毎回楽しかった。

ゆとりですがなにか(2016)
全10話。正和(岡田将生)、山路(松坂桃李)、まりぶ(柳楽優弥)、茜(安藤サクラ)、山岸(仲野太賀)などのキャラクターが立ちまくりで可笑しい。主に仕事についてのドラマになっている。まりぶ、いいよ~(^o^)。まりぶ、好きだな~(^Q^)。

【ベストキャラクター】
『ゆとりですがなにか インターナショナル』「ゆとりですがなにか」の坂間正和さん、大好き♥。彼が一番好きなキャラクターだけど、あえてここは『1秒先の彼』のハジメ君をベストキャラクターにしたい。どちらもチャーミングなキャラだが、正和くんが好青年なのに対してハジメ君はイケズ(笑)。イケズなのに可愛い。岡田くんの演技としては険しいところも鋭いところも全くなくて“ゆるキャラ”なのだが、1秒先を行く彼なのでシャキシャキ小気味よい。


ここまで書いて、これは客観的には「大好きなんじゃないの」と思う。なお承服しがたいが(ぶつぶつ)。

よい俳優の条件は、何を着ても似合い、台詞のないときの表情が魅力的であることだと思っている。岡田くんはモデルなみに何を着ても似合う。汚い格好をした役を観たことがないので、汚い格好が似合うかどうか観てみたい。ちなみに『想いのこし』で女装してポールダンサーをしていたが、これは似合ってなかった(顔も身体も男らしいので女性には見えなかった)。菊比古役で高座にすわり女性を演じたときの方が女らしかった。台詞のないときの表情は美男美女が有利ではあるけれど、美男美女であれば魅力的だというわけではない。岡田くんの場合、憂いと表情筋の繊細な動き(と派手な動きの破顔、あと照明さんのおかげ)によって見飽きることがなく、たたずまいも役によって異なり、やっぱりよい俳優だと思う。

温泉シャーク

『温泉シャーク』の感想を毛筆で書いた画像

作るが勝ち

ははははは(^_^;。
名だたる温泉町、暑海市の海でサメの犠牲者が続出。実は海と温泉が地下でつながっていて、入浴にきた人が食べられていたという発端。それからサメ退治まで「ははははは(^∑^)」という荒唐無稽さで、桁外れの発想に驚愕((((;゚Д゚))))の連続だった。
こんなに顔文字のふさわしい映画も珍しい ʅ(´ ՞ਊ ՞)ʃ。
手作り感あふれる特撮なども含めて、これは観るより作る方が遙かに楽しいに違いにゃい。
一つだけ物足りなかったのが俳優陣。警察署長(金子清文)以外はアマチュアの俳優さんかしらと思って検索したら皆さんプロフェッショナルだったようで(;゚ω゚)、ちょっとオドロキだった。

メフィストフェレスに温泉シャーク現る!

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上映主催者のゴトゴトシネマのyoutube動画、ぜひ!ご覧ください。

(2024/08/25 メフィストフェレス)

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』の感想を毛筆で書いた画像

老頭児に幸あれ

今年のベストワン候補!これは面白くてめっぽう好きな作品だ。全編をトラディショナルな雰囲気が包み込んでおり、SNS全盛の現在、70年代は古きよき時代になったのだと思わされる。また、クリスマス、スノードーム映画としてもよくできており長く記憶にとどめたい作品だ。

1970年のクリスマス休暇を全寮制の学校に居残ることになった生徒アンガス・タリー(ドミニク・セッサ)、監督の教師ポール・ハナム(ポール・ジアマッティ)、料理長メアリー・ラム(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)は、それぞれの理由で寂しさを抱えている。それが当人たちや関わりのある人たちによって少し、あるいは大いに救われる。

大好きな父親に会うのを禁じられ、母には捨てられた感のあるアンガスは、ひねくれ者ではあるけれど根は人を思いやれて機転も利く頭のいい若者だ。そんな彼もポール・ハナムの救いがなかったら、一生のひねくれ者になったかもしれない。家族以外の人との出会いによって道を踏み外さずにすむ若者を見るたびに、思い出すのが子どもが子どもを殺した事件での有識者のコメントだ。親、友人、それ以外の人のどれもでハートのカードに当たらなかった、どこかでハートに当たっていたら・・・・。子どもの気持ちが少し残っている柔らかい心のこの時期はアンガスにとってラストチャンスだったと思う。

一方、ポール・ハナムは、体も硬いし頭も固い。映画の開巻、寄付金の多い生徒の成績に色をつけろという校長を拒否したときや料理長への敬意は、「いいぞ!」と思ったものの、歴史のテスト結果を配っているときは「う~ん」となり、人との交流に臆病で古傷が癒えないまま、ひねくれて生きてきたことがわかると、ますます「う~ん」。そう、ニンゲン年を食ったからと言って偉くなれるわけではない。まるで自分を見るようである。アンガスを救うため、バートン校を退く決意をしたときには胸が詰まった。クビになったら生きていられないと言っていたのに(涙)。この決意で一気に偉くなった(?)。まるで映画の主人公みたい(笑)。
ロートルの職探しはつらい。なんとか幸せになってほしいと思う。

メアリーの息子はベトナムで戦死した。バートン校はベトナム以前の戦死者からメアリーの息子まで写真を掲げている。1970年以降も写真が増えていっただろう。いや、バートン校に来れない(経済的余裕のない)若者が死んでいるのだろう。いやいや、アメリカ人の代わりに(軍需産業のために)ウクライナやパレスチナで死んでいるのだろう。映画の趣旨とは関係ないことまで思わされる今日この頃。
(2024/08/14 キネマM)

ピクニックatハンギング・ロック

『ピクニックatハンギング・ロック』の感想を毛筆で書いた画像

1980年代に日本で公開されたので制作年も同じ頃かと思ったら1975年とのこと。ピーター・ウィアー監督の初期の作品だ。フィルモグラフィを見たら大好きな『マスター・アンド・コマンダー』も監督していて驚いた。なぜかリドリー・スコット作品と思い込んでいたので。本作はフィルムをデジタル化してのリバイバル。すごく綺麗。空はちゃんと空色だから、オリジナルのフィルムは退色してなかったのだろう。赤茶けた建物や風景はオーストラリアの独自色なのだろうと思った。西部劇なみに乾燥した空気感の中で少女たちの瑞々しさが際立つ。1900年の聖バレンタインデーに、コルセットを締め上げミディドレスに麦わら帽子、手袋、編み上げ靴と真夏に淑女の出で立ちでピクニックに出かける。全寮制の私立学校で教育を受けるお金持ちのお嬢様が、束の間解放されるのが岩山ゆきなのだ。この岩山がいろんな顔に見えて可笑しい(不気味にも見える)。演出(音、間、蛇や蟻など登場)はホラー風味だと思う。原因不明とか行方不明とか、謎というのは人を不安にさせる。私も子どもの頃、友だちに刃物で怪我をさせたことがあった。確かに刃物は持っていたがお互い離れていて私には怪我をさせた記憶が全くなかった。子どもの話を聞いて大人たちはカマイタチではないかとか話していたが、結局子どもに刃物を持たせた親が悪いということで終わった。子どもの私はしばらく(何年も)怖かったが、今は私が怪我をさせたのだろうと思う。怖くて無意識に記憶の差し替えをしていたのだろう。そんなわけで神隠しの類いも(宇宙人の連れ去りとか想像しないではないが)滑落、転落でけりがつくと思っている。海でも山でも亡骸を見つけられないことはあり得る。だから、学校の生徒、職員が行方不明だと親は退学させたくなるだろうし、経営が立ちゆかなくなりそうだと校長もノイローゼになるだろう。と考えていくと本作には謎がなくなる。いくらでも想像で謎解きはできるのだ。そうして、ふと気づく。謎を謎のまま受け入れるのは難しいことなのかもしれない。
(2024/08/04 メフィストフェレス)