カメラが動くは暗くて見にくいは、セリフは聴き取れた方だと思うけど、近頃「ぼーっ」観ているので、この映画をしっかり観たのか自信がない。それでも面白く観て、いろいろ考えさせられた。
太平の世が260年続くと武士も人を斬れなくなる。それで良いではないかと思う。
今にも村人を襲ってきそうな人相の人たち(野武士)に交渉を持ちかける。武器にものを言わせるよりずっといい。
「人を斬りたい、斬りたい、斬りたい」とのたうちまわっていたけれど、本当は「セックスしたい」だったんじゃないだろうか。好きな人が野武士に犯されても、どうすることもできない。野武士を斬りたかったのかもしれないが、好きな人との交情をより望んでいたようにも見える。それなら合意のうえでする方が、人を斬るよりよほどいいと思う。
斬れない杢之進(池松壮亮)は、日中戦争で殺しの練習をさせられた初年兵に重なって見えた。
問題なのは、ゆう(蒼井優)だと思う。弟の市助(前田隆成)が野武士にいたぶられて怪我をしたとき、仕返しを望む。杢之進を好きで彼に死んでほしくないのに、仕返しを促すのだ。
仕返し合戦の果てにどうなるか目に見えている。ゆうは杢之進が動乱に参じることは望まないのに仇討ちは促す。理性ではなく感情で動く民衆の代表のようだ。普段は平和を願っているのに不安や怒りにかられると戦争に同意したりする。
杢之進は追い詰められて人を斬る。武器を持ち合えば殺し合いになる。交渉と妥協が美しいと思うけれど、それがダメならジャンケンでもあみだくじでもいいじゃないか、という心境・・・・。
(2024/03/13 あたご劇場)