県庁おもてなし課

当地では大ヒット(の兆し)。見た人の感想は、おおむね良いらしい。私もそこそこ楽しんだ。
原作は新聞連載で読んだけれど、芯になる話があるわけではなく、ラブコメとしてもイマイチだった。映画の方は、話はほとんど中身がなく(スカスカ)、ラブコメとして役者の魅力で持っているという感じだ。
誰かにお薦めしたくなるほどの作品ではないが、どの役者さんも土佐弁が上手い!それから、独自に作ったと思われる観光ポスターやくろしおくんの張り紙などが随所に映っており、スタッフのそういう仕事ぶりを大いに楽しませていただいた。

この映画を観て高知に行ってみたいと思う人がたくさんいればいいな、とは思わない。それぞれの人が自分の郷土を見つめ直す、そんな映画になっていればいいのに(そういう普遍的な軸を持つ映画だったら)と思ったことだった。

掛水史貴(錦戸亮)/明神多紀(堀北真希)/佐和(関めぐみ)/吉門(高良健吾)/清遠(船越英一郎)

監督:三宅喜重
(2013/05/19 TOHOシネマズ高知7)

「高慢と偏見」BBC

毎年、新緑の季節になると見たくなるBBCのテレビドラマ「高慢と偏見」(1995)。ほらほら~、緑がきれいー!
「高慢と偏見」
いつの頃かDVDを買って繰り返し見ていたんだけど、それは字幕版のみ。吹き替え版が出るのをじっと待っていた。そしたら、えーっ、2011年12月に発売されてたの~!と先日の黄金週間に知って即注文。既に3回見た(笑)。
19世紀のラブロマンスというか、婚活事情というか、ストーリーがわかっていても風景、建物、衣装等が美しく、登場人物も主役から脇役、端役に至るまで適材適所で会話が辛辣だったり愉快だったり何遍見ても面白い。

「高慢と偏見」ミスター・ダーシー
ミスター・ダーシー(コリン・ファース)。登場したては田舎の社交界を見下した感じ。自尊心が高く尊大に見える。そのうえ嘘がつけない正直者で、社交辞令を言わず、気に入らない相手には不機嫌な表情のまま接するので、偉そうに見えることこの上なし。大金持ちだから世間の評判が悪くても困ることは一つもない。もし、ミス・エリザベス・ベネット(ジェニファー・イーリー)に求婚を拒絶され、自らを省みることがなかったら、一生「高慢な人」という評判を背負うことになったかもしれない。

「高慢と偏見」おじぎ
しかし、そんな彼も身分の低い人に対して「おじぎ」ができるようになった!

「高慢と偏見」どうしたのかしら
「あれが、高慢なミスター・ダーシーなの?気さくで感じのいい紳士じゃないの。」
「あんなに変わってしまって私も驚いているの。いったいどうしたのかしら?」
いや~ん、ミス・ベネット。あなたが、こっぴどく振ったから、自己改革したのよ~。改革には痛みを伴うじゃなくて、痛みを克服しようと改革したのよ~。

「高慢と偏見」恋する瞳
恋する男子はキレイさ~、けしてお世辞じゃないよ~

「高慢と偏見」恋する瞳
あわてないで、お嫁サンバ
一人のものになる前に、まだまだイロイロあるのよね~

「高慢と偏見」レディ・キャサリン・デ・バーグとの対決
ミス・ベネットとダーシーの伯母レディ・キャサリン・デ・バーグとの対決。「どこがレディじゃ」というほど、理不尽、かつ、高圧的にミス・ベネットを責める。しかし、リジー(ミス・ベネット)も負けてない。二人の激突・丁々発止は、ミスター・ダーシーの求婚シーンに並ぶ最大の山場だ。レディ・キャサリンみたいに言われると、私など頭の中が真っ白になって一言も言い返せないが、リジーは頭の回転が速いので論理的にも完璧に反論する。怒り心頭に発しているにもかかわらず、抑制がきいて言葉づかいが乱れない(あっぱれ)。

リジーは聡明で機知に富み、活発で生き生きと輝いている。とても賢いのに(美男子という設定で)物腰の柔らかいミスター・ウィッカムにコロリと欺されるし、ミスター・ダーシーにプライドを傷つけられて「なんて嫌な人」と思い込み、彼の率直さや誠実さに気づくまでえらく回り道をしてしまう。そういう弱点を含めて、今まで出会った古今東西の登場人物のうちで最高に魅力的なヒロインだ。

レディ・キャサリンとダーシーを比較すると、よい家柄に生まれ高い身分を誇りに思っていることは同じでも、そういう身分の者のあるべき姿像が伯母と甥とでまったく異なることに気づく。リジーがダーシーを拒絶したとき、ダーシーの胸に一番堪えたのが「あなたがもっとジェントルマンらしく振る舞ってくださっていたら」という非難だ。身分の高い者は教養を身につけ品位を保たなければならない、それでこそジェントルマンという思いがあったのだろう。ジェントルマンらしくなかったという指摘を非常に重く受けとめたということは、それだけ誇り高いということだ。言い換えれば、誇りに思えば思うほどジェントルマン度が高くなるということだと思う。

「高慢と偏見」二度目の求婚
ハッピー・エンディング。
しあわせ(^_^)。

図書館戦争

原作は第2巻までしか読んでないけど、これがめっぽう面白く、読みながら声を出して笑うこともしばしばだった。キャラクターが立っているし、話の展開が痛快だからだと思う。映画の方もそういうポイントを押さえていて、笠原郁(榮倉奈々)と堂上教官(岡田准一)は原作どおりの遣り取りで笑わせてくれる。郁のルームメイト柴崎(栗山千明)と同僚手塚(福士蒼汰)もイメージどおりでイイ感じ。堂上の親友、かつ、同僚で、郁と堂上のラブコメを一番楽しんでいる小牧(田中圭)の存在感が薄いのが残念だが、仁科司令(石坂浩二)が警察の捜査(個人情報の閲覧)を拒否したり、玄田隊長(橋本じゅん)がメディア良化委員会の検閲を拒否するのはもちろん、図書館の敷地外で銃器の使用は認められていないが、その敷地を買い取って図書館にしちゃえば無問題だと銃器使用を許可するところは、無理が通れば道理が引っ込むとわかっていても痛快なんである。困ったもんだ(笑)。

図書館の自由と憲法で保障された表現の自由がリンクしていることが描かれている。その自由に対するお上の圧力と戦うのが図書隊だということで、大義も一応構えられている。また、図書隊は専守攻防に徹すべしを守っている。ジャーナリストは戦争の内実を報道し、無関心で忘れっぽい大衆に警鐘を発することが本分だということも描かれている。フィクションとはいえ戦争をするのだから、作り手もいろいろ考えているみたいだ。
ラブコメとして大いに楽しんだけれど、相手が殺す気で来るときに応戦すれば、殺し合いにならざるを得ないと思ったし、今、感想を書いていると、考えが映画からは随分と離れて、お上との最終決戦は憲法を盾に裁判所で行うしかないが、司法はかなり政府に取り込まれているからなぁと暗澹たる気分になってきた。

監督:佐藤信介
(2013/04/28 TOHOシネマズ高知9)

ふがいない僕は空を見た

生まれて生きるということの大変さを、序章のセックスから描いた作品のようだ。生まれる前から大変なんだから、生まれた以上どんなに大変でも生きてよねと、けっこう理屈っぽく(セリフで)訴えかけてこられたように感じた。

姑から早く孫をとせっつかれるあんず(田畑智子)を見ていると、生まれる前段からえらいこっちゃと思う以上に、経済的に自立できてないと離婚もままならない哀しさを感じた。でも、結局は離婚したみたいで、あんずのその後の人生が好転することを期待したい。
産院を営んでいる母(原田美枝子)を手伝うこともある卓巳(永山絢斗)は、イイ子だ~。関係ないけど、自然分娩の産院に妊婦さんが引きも切らずで驚いた。自然分娩って、そんなに人気があるの?
良太(窪田正孝)とあくつ(小篠恵奈)もイイ子だ~。コンビニの先輩(三浦貴大)に勉強を教えてもらえることになって喜んでいる良太なんかめっちゃ可愛い。あくつも水浸しになった良太の住み家を、いっしょに掃除してくれたりするのだ。この二人が悪意をむき出しにしてビラをまくシーン、弱い者イジメの原理を見た気がした。良太とあくつは、理不尽に貧しく差別されている。誰に怒りをぶつけたらいいのかわかってないし、怒りをぶつけたい相手(例:コンビニの店長)には怒れないし、そういう鬱積した気持ちのはけ口として自分よりイイ思いをしていそうな者をねたんで、その者の弱みにつけ込んでいじめるのだ。自分より強い立場の者に立ち向かっては行かない。

監督:タナダユキ
(シネマ・サンライズ 2013/04/25 高知県立美術館ホール)