プロメテウス

むむむ、さすがリドリー・スコット監督だ。映像が何から何まですごい。冒頭のハイランドだか、イグアスの滝だかよくわからないが、スケールの大きい景色につかみはオッケー。(宇宙人ぽい人が何かよくわからないものを飲んでDNAから崩壊していく場面では、あることを連想してぞっとした。)
ところが、宇宙船プロメテウスが問題の星に到着したあたりから話が怪しくなる。そもそも時代も場所も異なる壁画に描かれた同じ星図を発見しただけで、その星に行けば人類の起源の謎が解けるという推論がどうして成り立つのかわからなかった。でもまあ、気にせず観ていたわけだが、話が進むにつれて筋がとおらなくなっていく。映画が終わっても冒頭の宇宙人がDNAから崩壊していったのは、なぜなのかわからない。なかなかにぶっ壊れた作品だ。しかも、登場人物があまり魅力的でない。人類滅んでよし(^_^;。
感心するのは、話は壊れ、人物にも同調できないのに、まったく退屈しなかったということだ。それだけ映像にパワーがあるのだろう。
ショパンの音楽が使われていて、宇宙にクラッシックは『2001年宇宙の旅』っぽいな~と(笑)。ローレンスの登場は嬉しかった。

エリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)/デヴィッド(マイケル・ファスベンダー)/メレディス・ヴィッカーズ(シャーリーズ・セロン)/チャーリー・ホロウェイ(ローガン・マーシャル=グリーン)

PROMETHEUS
監督:リドリー・スコット
(2012/08/25 TOHOシネマズ高知5 2D鑑賞)

ピナ・バウシュ 夢の教室

私はへそ曲がりなのだろうか。ほぼ1年の訓練で若者が踊りを完成させていく過程にはあまり感動しなかった。確かにおしまいの方が踊りは上手くなっている。最初から上手な人もいて、その人といっしょに踊っていた人の不足が目立ったりしていたが、最後には遜色ないか上手な人を上回るくらい魅力的な踊りになっていて驚いた。若者たちが本心を語ってくれる場面があったし、本番が迫っているのにまだまだ不十分な点があり大丈夫かいねと思わされる場面もあった。最後はスタンディングオベイションのなか、ピナ・バウシュが出演者に一輪ずつバラを渡していく達成感~な場面なのだが、それもこれも淡々と描かれているので淡々と観てしまう。
そんなわけで私が素晴らしいと思ったのは、コンタクトホーフというダンスと、それを創造したピナ・バウシュだった。

コンタクトホーフには喜怒哀楽がつまっている。個人と個人、あるいは個人と集団、はたまた集団と集団の関係性が描かれている。プロのダンサーの洗練された踊りは見応えがあるだろうとは思うけれど、洗練された動きよりも感情を開放して演じることの方がより大切な作品のような気がする。だから、老人が演じても若者が演じても、それぞれの世代のコンタクトホーフが出来上がり、観客は感動することができるのだろう。
そんなわけで、若者たちのコンタクトホーフを「とおし」で見せてもらえなかったのが残念だった。

TANZTRAUME
監督:アン・リンセル
(こうちコミュニティシネマ 2012/08/22 高知県立美術館ホール)

[追記]
2003年の高知公演の感想です。読み返すと、なかなかよう書けてます。よかったらどうぞ。
 ↓
ピナ・バウシュとヴッパタール舞踊団

ライゲイトの地主

ホームズが過労のためリヨンで倒れ、その知らせの電報から24時間のうちにワトソンは病床に駆けつけた。「ヨーロッパが彼の名声で沸き返り、部屋は祝電の山で文字通りくるぶしまで埋まりそうだというのに暗い抑鬱状態に落ちこんでいた。」いや~、ホームズ、働いてるわ~。

ふたりは一旦ベイカー街に帰ったけれど、すぐにサリー州のライゲイトへ療養しに行くことになった。もちろん、医者であるワトソンの勧めだ。ところが、事件がホームズを呼ぶのかホームズが事件を呼ぶのか、ワトソンのにらみ(願い)も利かず、ホームズは殺人事件の捜査に乗り出すことになる。地元の警察にも頼られるし、本人も嫌いじゃないからして(笑)。

それで療養に来ているのをいいことに仮病をよそおったり、ガッシャーンとテーブルをひっくり返してワトソンのせいにしたり(仮病に騙されたワトソンもそのへんは心得ていて自分でテーブルをもとにもどしたり)で、事件はスッキリ解決。「ワトソン君、田舎での静養は大成功だったよ。ぼくは明日には、大いに元気になってベイカー街へ戻れるだろう」という落ち(笑)。
冒頭の抑鬱状態は、大きな事件を解決して「次」がなかったからという気がする(^_^;。これでは、ヒマすぎるとき、コカインをやりたくなるのも無理はないか。
(題名は「ライゲートの大地主」という訳が威勢がよくてよかったなぁ。)

マスグレイヴ家の儀式

ある冬の晩のこと、ワトソンがホームズに書類の山をどうにかして、もう少し住みやすくしてはどうかと提案したら、ホームズはブリキの箱を引きずり出して「この中にはどっさり事件がある。どんな事件があるか君が知ったら、ここへしまい込むんじゃなく、引っぱり出してくれと頼むだろうな。」と言う。ワトソン、釣られる・・・(笑)。
で、ホームズが若かりし頃の事件を話して聞かせる。マスグレイヴ家の儀式で唱えられる問答文から、宝のありかを探り当てたという話。

私にとっては宝探しゲームは、けっこうどうでもよくて、それよりこの短編の書き出しからして笑えるのが気に入っている。

私の友人シャーロック・ホームズの性格で、しばしば私をあきれさせる異常な点は、思考方法においては全人類中もっとも緻密で体系的であるのに、その上衣服はいささか地味にお上品ぶる癖があるにもかかわらず、個人的習慣となると同宿人の気を狂わせかねぬほど、だらしがないということだ。(東京図書、シャーロック・ホームズ全集第2巻P140)

その後、だらしのなさの描写がつづいていくのだが、ワトソンは自分もアフガニスタンで荒っぽい仕事をしていたので、だらしのなさに掛けては相当なものだがと比較したうえで恐れ入っているのでよけい可笑しい。

ロンドンのシャーロック・ホームズ博物館では、ふたりの部屋が再現されていて写真でしか見たことがないけれど、いごこちがよさそうだった。BBC「シャーロック」の部屋もいごこちがよさそう。だらしのなさに掛けては私もいい線行っているので、そう感じるのかもしれない。