人形の家[Noism01]

イプセンの劇とはあまり関係がなかった。歌舞伎、文楽、カルメン、中島みゆき、モーリス・ベジャール。私がわかったのはそれくらいだが、既存の表現を活用して、更に身体表現を広げていこうとする試みのようだった。とても面白いダンス公演だった。
歌舞伎の人形振りは大好きだ。この「人形の家」では、一人から数人の黒衣がついて人形(人間)を動かすので、黒衣のリフトによって文楽の人形のような宙に浮く動きもできる。その点、歌舞伎を超えている。
人形の動き自体も面白いが、物語らしきものが想像できるので、前に観たNoism04(2004)の観念的なダンスよりエンターテイメント化されて観やすいし、楽しい。
例えば・・・・・
セーラー服人形に赤ワンピース人間が片思い。でも、セーラー服人形は、ヒゲ男をカルメンのごとく誘惑する。これを見た赤ワンピースは、「今はこーんなに悲しくて、涙も涸れー果てて」と歌い始める。受けた(^Q^)。
カルメンでも扇の使い方とか可笑しかったし、声をあげて笑いそうになったけれど、会場があまりに静かなので抑えた(苦)。
第二幕では、黒衣がなにやら恐ろしいものになっている。人形は人間になったのか、動きが人形らしくなくなっている。そうこうしているうちに、もしかして、「春の祭典」!?。もしかしなくても春祭!。録音テープでもすごい音楽だ。しかも踊りはベジャールだ!裸でおどるのもいっしょ。黒衣改め覆面の恐ろしいものに囲まれて、人間になった人形が踊っている。ぴょんぴょん跳ねているのはニジンスキーの春祭っぽいような(?)。人間になった人形が血を流しているのに気づいてビックリ仰天。激しい踊りなので怪我でもしたのかと思った(^_^;。
血が出たので、ああ、やっぱり人間になったのねーと思い、ベジャール春祭の真ん中で踊るのは生け贄だったことは、アフタートークで言われるまで忘れきっていた。
ダンサーのおしまいの挨拶は、中島みゆきの「夜明け間際の吉野家では、化粧のはげかけたシティーガールと、ベイビーフェイスの狼たち~」のBGMでしめやかに(笑)。もう、可笑しくてたまらなかったが、誰も笑わないのでこらえた(苦)。
人形振りは誰でも踊れてダンサーの個性が出しにくいのではないかと思いながら見始めたが、見ているとセーラー服人形が最も人形らしい動きで目を惹かれた。だけど、人形を踊るダンサー全員が人形の動きを極めたらどうだろう?そんなことも思った。
金森譲はNoismでは踊らないそうだが、「シアン」という井関佐和子とのユニットで9月に高松で踊るそうだ。

アルゼンチンタンゴ 伝説のマエストロたち

日本人がみんな盆踊りを踊れるように、アルゼンチン人もみんなタンゴを踊れるのだろうか?そんなことを考えながら観た。もっと、タンゴを聴かせてくれよー、もっと、踊りを見せてくれよー、とも思った。みんな、長生きだなーとも。
知らないマエストロばかりだし、その人たちがぽつぽつと思い出を語るのをバラバラと観ても、印象に残るものは少ない。ヨーロッパには真似できない魂のタンゴ。そんな言葉だけが印象に残った。

山猫[イタリア語・完全復元版]

国宝の螺鈿とか蒔絵みたいな。衣装や調度品から役者の顔まで、バロックか何だかわらからないけれど、そういう絵画から抜け出たような。スクリーンのどこを切り取っても画面の密度が高いのに驚かされる。風景は乾いていて陽射しも強く、遠く霞んだ感じも美しい。一方、長旅で土埃にまみれたまま、教会での歓迎式典に鎮座する公爵家一行の姿や、映画の三分の一を占める舞踏会での便器部屋なども記憶にとどめておきたい。古い映画だから(1963年制)音質はよろしくなけれど、これは目のご馳走。これこそ大画面で観るべき作品だと思う。
サリーナ公爵(バート・ランカスター)は、貴族社会の終焉を感じ、時代の変遷に応じた対策を講じる意識はあるが、彼こそ貴族の伝統そのもの。威厳といい風格といい、甥のタンクレディ(アラン・ドロン)が逆立ちをしても追いつかない。だけど、生き残るのは万事にそつなく機を見て変容できるタンクレディであって、動じない公爵ではないのだ。
マズルカを踊るのをやめた公爵と、軽く切れのいい身のこなしのタンクレディ。沈殿したような(ヘソも見せてくれない(笑))公爵夫人(リナ・モレリ)と、野性味あふれたアンジェリカ(クラウディア・カルディナーレ)。
まばゆいばかりのカップルを眺める公爵が何を思うか容易に想像がつくけれど、資産家でもなし、死にかけてもいない私には貴族の終焉と老境を重ね合わせたこの映画にそれほどの感慨はなかった。あ、いや、ジュリアーノ・ジェンマが歌っていたのにビックリだった!本当に歌ってるのかなぁ?
[追記]
1982年の感想では「貴族が最後の火花を散らせている、その代表バート・ランカスター。新しい時代に順応していく若者代表アラン・ドロン」と書いている。「おもしろい、おもしろくないと言う前に、わからなかった」で始まり「わからなかった。残念。」で終わる4、5行の感想だ。絢爛豪華の舞踏会や、壁に掛かった絵画にも関心がなかったのか?
同じ頃観た『若者のすべて』では、アルマン・ルーランの肖像があったことを記憶しているので、ゴッホだけしか知らなかったのだろう。それにしてもアルマン・ルーランは、アラン・ドロンに似てるよね。

白夜行

堀北真希、高良健吾、ブラ~ボゥ!
この二人と、ゆったりとした時間の流れに身を浸し、堪能した。こういう時間の流れは映画ならではだ。ときどきメロドラマ風の音楽が正気に返らせてくれたけれど。
船越英一郎も意外に良かった。彼に泣かされた。
昭和55年から平成10年までの時代を感じさせてくれる映像の質感と美術、衣装などもよかった。
とにかく亮司が可哀想すぎる(ベリーグッド)。笹垣刑事の呼びかけが(ToT)。
雪穂、幸せとは言えんね~。
監督は『狼少女』の深川栄洋だったんだ。パンフレットでわかった。(堀北高良の写真集を買うつもりでパンフレットを買おうかと思ったら、なかなか活字が多い文庫本サイズのパンフだった。)
私は百恵友和映画を1本も観てないんだけど(『伊豆の踊子』はTVで観た)、真希健吾で百恵友和映画をやってほしいなぁ。