海炭市叙景

エアコンの壊れた真夏の劇場で観たとしても、底冷えがするだろう。海炭市は冬、産業も商売も、人生も冬。風景も人々の営みもやるせない。雪が溶けた春先で終わるけれど、この映画は冬景色の冷たさがいいのだ。
劇場にこのような空気を作れる映画は滅多にない。すべての登場人物の気持ちにシンクロできたし。いい映画だった。(人物同士の関係に普遍性があり、今の時代の一地方でなくとも充分成り立つ景色だと思うけれど、金の切れ目が命の切れ目につながってしまう日本の今が映されていたような気がした。)