イマイチ生きている感に乏しい自己の存在についての、これでいいのかしらんという霞のような悩みを、喪の仕事と後輩の出産と遣り甲斐のある仕事を通して抜け出すお話だと思う。
・・・・バブル期の若者になら何割か共感してもらえそうな感じの作品だと思うけれど、就職氷河期を経て非正規雇用が増えていく中、新型コロナまで加わった今、高級マンションで花を飾り赤ワインを飲み、屈折した売れっ子タレントと関係を持ち、小さいといいながら5人以上働いている出版社に勤めている主人公小早川直実(多部未華子)に共感できる若者はどれくらいいるだろう。直実がマンション地下のゴミ分別所で管理人(柄本明)と話すところは、彼女がそこまでふわふわしている訳じゃないってことだろうと思うけど。
とても映画的というか、マンションと出版社など人物も含めて映るものの対比が効いていたり、退屈はしなかった(編集長、おっしゃれ~)。特に涙が素晴らしい。両親の事故死にも涙できなかった直実が夜の浜辺で見せる涙はアップじゃないのだ。それなのに涙がキラキラ、美しいのだ。少し逆光気味に撮っているのか、物語と映像がピタリと嵌まって狙いどおりだと思う。
あと、多部未華子ちゃんのサービスショット!ストレッチしている後ろ姿から顔のアップになって、前髪からおでこが少し覗いている。可愛い~!未華子ちゃんのおでこ、サイコー!わかってるね!>青山真治監督
(2021/03/29 あたご劇場)