面白かった。
男性は「女性は偉い」と言う。その男性たちは下駄を履かせてもらったうえに人の足を踏みつけていることに気づかずに言っているのだと思う。そして、男性は武士は食わねど高楊枝的に武士であることを強要されている不自由さにも気づいていないのではないか。例えば、女性は感情的だというのは、そういう感情表現を許されていない男性の不自由さと表裏一体だろう。更に、多くの女性もそれらのことに気づいていないのではないか。・・・・と長い間思っていた。現在も女性の置かれている立場は米騒動のあった百年前とあまり変わらないけれど、近年、女性自身が変わってきて「やっとここまで来たか」と感じている者としては、この映画も喜ばしいものである。登場人物のセリフに肯けるところが多く「わかってるね!」という感じだったので、脚本とかに女性が絡んでいるんじゃないかなと思ったらプロデューサーと脚本などが女性のようだ。
も一つよかったことは、社会的に何かを変えようと思ったら一人では困難であり、仲間と繋がらなくてはいけないということと、繋がろうとすると仲間割れをするように仕向けられるということが描かれていたことだ。仲間割れを脱するには話し合い(腹を割ること)が必要なことも描かれていた。なにやらタイムリーな映画のような気がする。
(2021/04/24 あたご劇場)
ホキ美術館名品展
どこにあるかは知らねども、行ってみたいと思っていた美術館。向こうからやって来てくれた(ほくほく)。
しかし、展示作品の2番目から暗雲が立ちこめる。焼き物と果物を描いた絵。もしかしたら剥いた皮も含めて陶器の果実だったのかもしれない(もやもや)。
風景画はやっぱりいいよね~と思いながら進む。しかし、女性のヌードでまたもや暗雲。とても綺麗、綺麗すぎるのでウソっぽい。デジタルの映画になって俳優のアップが見苦しくなった世の中ですぞ。ポーズや小物の配置などの作りすぎが、いつの時代だろうと思ってしまう。そして、ふと、写実の画家全員が本物ソックリに描いたら、そこに個性は表れるのだろうかなどと思う。
で、素晴らしいと思ったのが、五味文彦の作品。どれもいい。カメラ目線の「ひとみ」。右から見ても左から見ても、ずっとこちらを見ている。いるね!こんな人。静物画もパンもレモンも食べれそう。レースがレース。「ホワイト・スクエアー・コンポジション」、面白いねぇ!3個の透明な容器に入ったレモン、キャベツ、白菜。何なのこれって見入ってしまう。衝撃的なのが「ヒゲを愛した女」。さっきの「ひとみ」さん?幾重にも破かれている。さっきのひとみさんは「居た」のだが、今度は紙だからねぇ。でも、すごい存在感だ。「いにしえの王は語る」は森の中で古木に対峙しているような感じだ。
塩谷亮の少年を描いた「光韻」と着物の女性を描いた「相韻」も好きだ。モデルの個性が強い。写実といっても画家の個性はあるのだと実感。
島村信之「ニジイロクワガタ-メタリック-」「オオコノハムシ-擬態-」は、虫嫌いでも「ほしい」と思った。そして、同じ人が描いたとは思えない「籐寝椅子」は、「あるある、こんな時間」と思えた。白いカーテンに昼間の陽射し、寝椅子に横になっている女性。ポーズはとっていると思うが自然に感じられ、全体的に白っぽいのも穏やかな時間を感じさせられた。
人物では他に石黒賢一郎の作品群「綾○○○的な」「ア○○的な」「INJECTION DEVICE(3rd Lot)」「存在の在処」が、人物の個性が感じられてよかった。
展示室が変わって廣戸絵美「階段」が不思議でたまらず長く立ち止まってしまった。鑑賞者の立ち位置は踊り場で、左の階段を見下ろし、右の上り階段とそれに続く上階の廊下(床?)を見ているような絵なのだが、上り階段が急傾斜に見えてしかたがなかったのだ。実際にこんなに急な階段なのか、普段私たちが上っている普通の階段もよく見ると本当はこんなに傾斜しているのか。
大畑稔浩「剣山風景-キレンゲショウマ」のうっそうとした少し湿気がある感じが印象に残っている。同じ作者の「陸に上った舟」の乾いた空気と大違い。空気を描く画家なのかもしれない。
写実主義の画家といえば『マルメロの陽光』のアントニオ・ロペス。2、3年前に長崎で展覧会があって行きたかったが叶わなかった。今回の展覧会の主催が高知県立美術館であれば、美術館ホールで『マルメロの陽光』の上映会があっただろうか。
(2021/04/23 高知県立美術館 主催:RKC、高知放送、高知新聞社)
燃ゆる女の肖像
恋愛映画によっては、登場人物の気持ちがサッパリわからないことがあり、この素晴らしい日本語タイトルの作品もそうだった(残念)。途中までは面白かったけれど。他の人の感想を読んだ方が面白いなぁ。
(2021/04/07 あたご劇場)
絵を見る技術
ちょー面白い。もっと早く知りたかった。
美術史研究家の秋田麻早子著、朝日出版社刊。
これを読んだとしても相変わらず猫に小判は予想される。というのは、第5章までに書かれた「見る技術」を読んでから最終章のまとめに掲載された絵を見ても、後で解説された手本どおりに見てなかったからだ。でも、まえがきで「この方法を通して、本当の自分だけの絵の見方を育ててほしいと願っています。」とあるから安心だし、何より小判を見るときの楽しみは確実に増えた。今までは「綺麗な黄金色~」とか「もっと大きい小判がいい」なんていう見方だったけれど、今後は厚みの見当をつけたり、ギザギザを数えたり刻印を探したりしてみたい。
また、絵を見て自分の感じたことを言語化しやすくなるのは願ったり叶ったり。
巻末には「自分の美意識を説明してみよう!」というページがある。好きな絵(映画のポスターでも何でもOK)を3枚選んで、この本で学んだ見方を元に3枚に共通する事項を言語化してみようというわけだ。
それで展覧会で買った図録を眺めて、特に気に入ったものを3枚選び、当該ページに倣ってコメントしてみる。
今回、熊谷守一の図録やアンリ・ルソーの画集ははずしたので、気が向いたときに是非やってみたい。
とりあえず私はこの3枚が好きです。
この3枚に共通した要素は、視線誘導が反時計回りなことと赤が効いていることです。
私は反時計回りに絵を見るクセがあるようです。また、赤を効かせた絵にグッときます。
(画像のリンクに私なりの分析をしてみました。「こんな見方をしたよー」というのがありましたら、リンク先にコメントをいただければ嬉しいです。)
1 フォーカルポイント(主役)と明暗スキーム
2 視線誘導
3 リニアスキーム(構造線と補助線)とバランス
4 色(明暗、彩度、色相)
5 配置
配置について
名画のリーディングライン(主役へと視線を誘う線)や構造線など重要な線やモノ(塊)の配置には秩序がある。秩序があるから安定した絵に見える。秩序の基準となるのが画面を様々に分割する次の1から5までの「マスター・パターン」。分割が目的ではなく、重要な線やモノがどのような秩序で配置されているか意識し、絵の構造(構図)をつかむこと大事。
名画はどこをトリミングしても様になると聞いたことがあるが、構造が秩序だっているからなのだろう。
1 十字線と対角線
2 等分割(1/2、1/3、1/4など。分割してできる四角の対角線で囲まれた菱形なども活用。)
3 正方形(ラバットメント・パターン:長方形の短辺で四隅を起点に二つの正方形を作り、各正方形の対角線の交点を結んで水平線を引く。)
4 直交
5 黄金比