シェイクスピアの庭

最後に「これ、全部本当の話」と赤の大きな文字でバーンとクレジットされたとき、つい「うっそ~ん」とツッコミを入れてしまった。本当なら本当らしく、他のクレジットと同じ色と大きさの文字にすればいいのに、「ホンマやでー!」という気合いがケンちゃん(ケネス・ブラナー監督)らしい。と思っていたら、タイトル「ALL IS TRUE」だった(驚)。

グローブ座炎上を機に引退してストラットフォードアポンエイボンで庭仕事をしながら妻と暮らすはずの余生が紆余曲折ありで面白かった。
いちばん見応えがあったのは、サウサンプトン伯(イアン・マッケラン)とシェークスピア(ケネス・ブラナー)のやり取り(腹芸)。サウサンプトン伯がめっちゃカッコイイ!!!シェークスピアが萌えるのも無理はない。

夫が20年も単身赴任の妻のアン(アン・ハサウェイじゃないの?演じていたのはジュディ・デンチ。)も、跡継ぎを生むのを期待された二人の娘(次女は文学の才能があるのに認めてもらえないし)もつらいと思ったけれど、家族を養い財産を築いたことを自負し、跡継ぎを待望するシェイクスピアも普通の男性すぎてつらい。
引退したとは言っても詩人なら生涯書かずにいられなかったはず。俳優なら演じられずにいられなかったろうし、演出家なら村芝居でもなんでも催したくなったろうと思うが、何も残ってないとしたら庭仕事に嵌まったのかもしれない。
(2020/11/16 シネマサンライズ 高知県立美術館ホール)

隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの五原則

初めて建築家の頭の中を覗いたので、いろいろ刺激があって面白かった。(建築の依頼主のインタビュー映像では、人となりの一端も窺える。)
隈さんが設計するうえで大切にしている建築概念の「孔」「粒子」「ななめ」「やわらかい」「時間」ごとに代表作品の模型が展示されていた。解説も隈さん自身がされており、建物ごとの解説はまあ何となくわかったような気がするが、建築概念は難しかった。

実際に行ったことがあるのは県内の梼原町総合庁舎(役場)と同町の雲の上のホテル・レストラン。
ホテルは夏に泊まったかな。西日が入って暑かったような。冬にも泊まったかな。廊下とか寒かったような。遠い昔のことで記憶のねつ造かもしれない。デザイン的にはシンプルとは言い難い、余計なものがある感じ。(雲の上のプールは大好きなんだけど隈さんではないみたい。)
総合庁舎の方は木が迫ってくるような重苦しさだった。屋内は木の匂いもあって若干重い感じだったと思う。建ったばかりだからかもしれない。
どちらの建物も遠くから見たら風景とマッチしてよいかもしれないが、ごちゃごちゃした感じであまりよい印象を持ってなかった。
けれど、「小松マテーレファブリックラボラトリーfa-bo」の模型を見て少し考えが変わった。
fa-boは、実物を間近で見たら太いワイヤーが並んでいて結構ごつくて、ごちゃごちゃと余計なものに感じられるかもしれないと思った。でも、耐震補強という機能を果たしながら、遠目に見れば柔らかいベールで覆われた建物に見えるのなら、それはそれでいいかもと。要するに、梼原町役場と雲の上のホテル・レストランのごちゃごちゃも装飾だけではなく何か機能性があるのなら、面白いと思えるなぁということだ。

ネコの視点で建築物・工作物をどう作るか考えるのは、隈さんの建築概念よりわかりやすかった。
隈さんの考えとは異なるかもしれないけれど、私なりに受けとめたのは(覚えている範囲で)次のとおり。
(1)電信柱でも擁壁でもその「素材」によってネコが能力を発揮できる。ツルツルしたものよりガザガザしたモノの方が、ネコの爪のとっかかりになりやすい。
(2)ネコには「隠れ場所」が必要。身を潜めてあたりをうかがうところがあれば、脅威にさらされることがなく、情報を遮断されることもない。
(3)ネコは「狭いところ」が好き。狭いところはデススペースではない。ものは考えよう。空間は生かしよう。
(4)ネコは、飛び降り、飛び跳ねる。平面上の移動だけでなく、「縦移動」も考慮すべし。
(5)時間は長いスパンで考えると経年劣化だけど、短いスパンで考えると「動線」だ。ネコの行動範囲を把握すべし。
ネコを主人公にした動画は、一つの動きにつき視点を変えて作成されていた。建築家って普段から動きを立体的に捉えているのか~と感心した。

TOYAMAキラリのVRは、ドローンで撮影されたものだろうか、カメラ移動があって楽しかった。

行ってみたいところ
シドニーのThe Exchange。富山市のTOYAMAキラリ。中国杭州の中国美術学院民芸博物館。長岡市のアオーレ長岡。熊本市の浜田醤油。梼原町は行こうと思っている。
アオーレ長岡(2012年竣工)の「中土間」は、人が集う場所としてとてもよいと思った。市役所、体育館、シアター、福祉カフェの複合施設が中土間でつながっている感じ?中土間は通り道でもあるようだ。長岡市はお金持ちだな~とも思った。中土間に佇んでみたい気がした。
浜田醤油の床は醤油色で正解だと思う。蔵の中にカフェもあるようだ。お醤油の匂いはするのかな?

アオーレ長岡-視察のご案内
浜田醤油株式会社
梼原町×隈研吾建築物
隈研吾展
隈研吾建築都市設計事務所
(2020/11/16 高知県立美術館)

竹﨑和征-雨が降って晴れた日 Takezaki Kazuyuki”A Sunny Day After Rain”

「当地の現代アーティストを県民に紹介したい!」という県美の学芸員の叫びが結実した企画のようで、栄えある第1回にふさわしく多数の県民が好きになるんじゃないだろうか。風のように軽く、水のように透きとおった感じが心地よく、お茶屋美術館に収蔵したい作品(やっぱり基準は好きなもの、自宅に合うもの)がいくつもあった。ちょっと温かみも感じるので熊谷守一の猫を土コーナーに、竹﨑さんのどぜうを水コーナーにして・・・・。無造作に見えて細かいところがキチッとしている。竹﨑さん、細かいキチッとした人やろう!?
大方が観た風景を頭で混ぜて描いた作品とのことで、緑が多いことにホッとする。風景を描いているのに砂漠色ばかりだったら悲しい。
それから、水平線ぽいものやテトラポットっぽいもの防波堤ぽいものを感じたため、海を感じた作品がいくつかあったけれど、ぜんぜん違ったみたい(^_^;。
作品「十市」はどこかで観たと思って帰宅してから、県民文化ホールの緞帳だと気がついた。無関係なのにスンマソン。
解説も一生懸命(何回も)読んだけど、ぜんぜん頭に入らず。出ようとしたところ写真撮影可に気づいて、解説を撮影し帰宅してから読めてよかった。作品数は62点。ゆっくり観て1時間くらい。ちょうどのポッチリ。この調子で2回目も楽しみ。

あつめてのこす 高知県立美術館のコレクション←観てないのに書いた感想。県美の学芸員の叫びを引用している。
(2020/11/13 高知県立美術館)