パール Pearl

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介護生活をしているとパールとそのお母さんの気持ちがわかる。
変わり『オズの魔法使い』。

オープニングで4、50年代のハリウッド風じゃーんと嬉しくなって笑いが止まらなかったけれど、フォークを振りかぶってぇ~;;;;、最初から~(゚Д゚)。見るからに作り物のアヒルでホッとしたものの、ワニが近寄ってくるだけで「うげげげげ」となるくらいだから、その後もちょっと恐かったが、観て良かった。

お母さんは、もう少しパールを自由にさせてあげたらよかったのにと思うけれど、家事だけでなく夫の介護にお金の心配、それにその頃のアメリカの敵国であるドイツ系であることから肩身の狭さもあり、そのうえ変に誇り高くせっかくの人の好意を施しのように感じてしまう性格もありで、もう全然心に余裕がなかったんだろうなぁ。
パールもお母さんの言いつけどおり家畜の世話を引き受けて、お父さんの世話もし、スペイン風邪(インフルエンザ)もあって外出も極力控えという、お金も時間も自由に使えず母の言葉が重しになって行動制限もあるとなれば、家を出たくなるのはやむなし。男性といっしょでなければ、家を出られないというのもこの頃の女性の不自由さだ。結婚した相手と家を出るという穏便な手が詰まったとなれば、別の男性とというのも自由を渇望するゆえだ。一番の夢は銀幕の向こう側の人になることだったけれど夢破れて、今手元にあるものでやっていこうという心境に至ったのを見て、虹の彼方よりやっぱりお家が一番という『オズの魔法使い』を思い出してしまった。
お父さんは、一番不自由していて気の毒だった。女性も障害者も少しずつ自由になってきたと思うが、まだまだ全然だからこういう映画が響いてくるのかな。
シリアルキラーとしてのパールの快感は、自分の意思で思いどおりに出来る開放感なのではないだろうか。若干、自己中心的なのはパール母子の共通点だと思うが、自己中心的な度が過ぎれば、仮に銀幕の向こう側の人になれたとしても、やっぱり思いどおりにならないことはあるわけで、シリアルキラー化するかも;;;;。
ともあれ、パールを演じたミア・ゴスはスゴかった。義理の妹を前にした長回しのアップ、素晴らしい吸引力だった。ラストカット-戦地から帰還した夫を迎えての笑顔の凄みが、哀れを誘って目に焼き付いた。
(2023/07/15 TOHOシネマズ高知3)

1秒先の彼

『一秒先の彼』の感想を毛筆で書いた画像
オリジナルの台湾映画も見てみたい。
設定に無理があるような気がするし、後半が重いと感じたけれど楽しかった~(^.^)。

前半は皇一(岡田将生)がおかしくて可愛らしくてなかなかのコメディになっていた。後半は長宗我部麗華を演じた清原果耶がミスキャストだったように思う。伊藤沙莉とかだと1秒遅れの彼女でも軽妙だったのではないだろうか。また、麗華とバスの運転士(荒川良々)と一の父(加藤雅也)以外は時が止まっているなら、皆が一日失っているのだから一だけが「僕の日曜日はいずこに!?」と言っているのは不合理な設定だと思う。それでも、後半の時が止まった情景がシュールでどれだけ見ても飽きなかったし、一の母役の羽野晶紀もグッジョブだし、妹とその彼氏のカップルはサイコーだし、笑福亭笑瓶のDJと写真館店主の二役もよかったし、『リンダリンダリンダ』『天然コケッコー』の山下敦弘監督とは相性がいいみたい。
なお、一の父が口の端からソーメンが出ているのに気づかないのはわざとらしいと感じる人がいるかもしれないが、年をとると感覚が鈍くなるのでなかなかにリアルなシーンだと私は思った。
(2023/07/07 TOHOシネマズ高知8)

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』の感想を毛筆で書いた画像
インディ・ジョーンズと地下鉄の馬

あらゆる陸海空の乗り物が出てきて見ている間は十分楽しめる。ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じた「007」のどの作品だったか油圧ショベルまで出てきて大受けだったが、今作はやはり馬でしょう(*^。^*)。なんかどっかで見たことがある場面がいくつかあったが、過去のシリーズ作品へのオマージュだそうだ。後に残らぬ面白さが信条ともいえるシリーズだが、これで最後だとのことで、後に残ったのはインディの困り顔というか、ハリソン・フォードの弱り切った顔だ。表情に強さがなくなっており、なんとも言えない感慨がわいてくる。インディアナ・ジョーンズにハン・ソロと二つも当たり役があり、『逃亡者』のドクター・キンブルなども印象が強い。齢80、ハリソン・フォードは何て幸運な俳優だろうと思う。
(2023/07/04 TOHOシネマズ高知8)

怪物

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本編に十五分ほど遅刻するも感動。校長先生と五年生の切ない遠吠えに涙。

カンヌ国際映画祭でクィア・パルム賞を受賞したことで核心のネタは割れていたけれど、同映画祭のコンペ部門で脚本賞も受賞した作品でもあって、物語にぐいぐいと引き込まれた。
学校でのいじめと先生による体罰、あるいは一部の未熟な先生の問題や学校組織としての対応のまずさなどを織り込んだ「今」の映画だ。また、母親:麦野早織(安藤さくら)、担任教師:保利(永山瑛太)、子ども:湊(黒川想矢)の各視点で順番に描いていくことによって真相が明らかになるという手法は昔からあるもので、一方向からの限られた情報では判断を誤るとわかっていても(それを忘れて)「思い込み」で動くのが人だと改めて思わされた。

我が子を心配して来校した麦野早織に対する対応で、もう~、教師失格じゃないのと思われた校長先生(田中裕子)だったが、彼女が湊に教えたことは、つらい時を乗り越えるのにものすごく大事なことで、人生の先輩としてありがたい人物だった。それなら教師も上等だと思い直した。そして、この二人の遠吠えが、崖っぷちの保利元担任に届いて身投げを踏みとどまるのは、やはりこれがいかに大事かということだと思う。(オーケストラで一番好きな楽器はホルン♥なのだが、あのやさしく温もりのある音色が遠吠えになることにも驚きだった。演奏は滅茶苦茶むずかしいそうだ。)

あと、好きな場面は、一足のスニーカーを片足ずつ履いて二人がケンケンして行くところ。麦野母が片方だけのスニーカーを見つけていじめを想起したものを、鮮やかに「なかよし」に変換してくれた。素晴らしい。星川くん(柊木陽太)、ほんまいい子だった(^_^)。
(2023/06/05 TOHOシネマズ高知6)