007 スカイフォール

ちょー面白かった!
役者がいい。撮影がいい。ロケーションがいい。美術がいい。音楽もいい。お洋服もおっしゃれ~。
話は大きく出たのが小さくしぼんでいくけれど、そこを役者が補って余りある面白さ。悪役シルヴァ(ハビエル・バルデム)の存在感は圧倒的で、気持ち悪いしゾッとするほど怖かった。それに・・・『慰めの報酬』から思っていたことだけど、M(ジュディ・デンチ)といっしょにいるときのジェイムズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)が微妙に可愛いのがツボ!ツボツボツ・・・(エコー)。
クレイグ=ボンドになってからシリアスすぎると言われているらしいけど、今回は笑った(2、3回)!いやいや、ボンドが同僚イヴ(ナオミ・ハリス)やQ(ベン・ウィショー)と絡む場面を合わせると、もっと笑っていたかも。
お色気ねらいの007ファンは、ボンドガールの出番が少ないというかもしれないけれど、私はクレイグ=ボンドの色気で十分だしねぇ(^_^)。
そして、アクションも何がどう動いているか、ちゃんとわかった!そのうえ、手に汗握った!見事な50周年記念作だ。
(以下、ネタバレ全開です。)

メインタイトルが表示されるまでのあいだに、自動車、バイク、列車とアクション総ざらい。ボンドがショベルカーを操作するおまけ付きで、とことん乗り物を出す(笑)。もちろん、あとでお船も地下鉄もヘリコプターも出てくる。この地下鉄のど派手な出し方には、『ダイ・ハード4.0』でジョン・マクレーンをジェット機と格闘させた荒唐無稽さを彷彿させられて可笑しかった。

イスタンブールの空をバイクで飛んだと思ったら、上海の高層ビルディングではネオンを背景にシルエットでの格闘(モジリアニ絵画のおまけ付き。Qとの初対面はターナー絵画のおまけ付きだった!)。マカオの軍艦島の廃墟までが美しく、目のご馳走を「どうぞどうぞ」という感じで巨像が倒れている。秋色から冬枯れのスコットランドへと北上し、たどり着いたJBのかつての実家の門柱には堂々たる鹿(?)のオブジェが立っておわす。果ては、夜、後ろではお城がぼうぼう燃えている、炎の明かりが届かなくなった前方、闇のむこうに懐中電灯の白い小さな光が動いている。美しい~!
目のご馳走は最後まで。ビッグベンをこんな風に眺められるのかと新鮮だった。

お話は、Mに切って捨てられた部下シルヴァとボンドが、片や恨みはらさでかとMの命を狙い、片や守ろうとする。きゃー、Mをめぐってシルヴァとボンドの三角関係よ~(^o^)と本筋でも十分楽しんだが、裏筋として英国に諜報部(映画界に007シリーズ)は必要かというのがあって、これもマロリー(レイフ・ファインズ)がMに引退を迫ったり、Mが聴聞会に引っぱり出されたりして面白かった。冷戦後に諜報機関は必要なのか、情報公開もできないような古い組織はいらんのじゃないの?というわけだ。

脇筋としては、セヴリン(ベレニス・マーロウ)にボンドが「隠してもおびえている女はすぐわかる」と言ったとき、亡くなった恋人ヴェスパー(エヴァ・グリーン)のことを思い出しているのがわかったのがよかった。だって、セヴリンたら、ヴェスパーそっくりのメイクなんだもん(笑)。
また、ボンドってスコットランド人だったのかー!とか、キンケイド(アルバート・フィニー)がお屋敷の番人で、けっこうイイとこのぼんぼんだったのが没落したのねとか、どうして孤児になったんだろうとか、心理テストで故郷(スカイフォール)につまずくとは、よっぽどのことがあったのだろうとか、いろいろ面白かった。『カジノ・ロワイアル』では孤児らしいということがわかっただけだったけど、少しずつ彼の過去が明らかになっていくのかもしれない。今後もますます楽しみだ。

SKYFALL
監督:サム・メンデス
(2012/12/01 TOHOシネマズ高知6 字幕版)

007 スカイフォール(2回目)の感想

赤い季節

新井浩文と風吹ジュンが親子の役をやるというので観た。新井浩文がカッコイイのでビックリした。ちょっと目がハートになりかけたけど、踏みとどまった。というか、あまりにも演出と脚本がひどいので、ハートになりかかったのを邪魔された感じだ。なんでキリスト教???カメラを動かしたり、カットを刻んで人物をスキップさせたり、その場面に必要???カッコつけたカッコイイ映画を作りたかったのかもしれない。いやしかし、泉谷しげるの先輩が永瀬正敏なんだから、もしかしてコメディー?永瀬正敏は10年前に死んだ先輩ってことにはなってるんだけど(^_^;。キャスティングはともかく、俳優に救われていると思う。ツヨシ(新居延遼明)の無気力そうな身体と、虚無的に目の据わった感じもよかった。

監督:能野哲彦
(2012/11/10 TOHOシネマズ高知1)

北のカナリアたち

泣いた~(ToT)。えい話や~。
炭坑のカナリアみたいな話かと思ったら歌の方だった。
歌を忘れたカナリアを捨てるのは可哀想という話だった。
子どもたちが歌がうまくて!何曲か合唱してくれたんだけど、もっと聴きたかった!

この映画を観た後、吉永小百合の相手役(夫でも恋人でも)に適した男優がいるだろうかと暫く考えた。なかなか思いつかないので、いっそ、夫に死に別れた独り者をやってはどうだろう。お掃除おばちゃんか、レジうちと弁当屋の掛け持ちパートタイマーか。そして、理不尽な上司に仲間と直談判するのだ。とにかく体当たりが似合う。というか体当たりしか似合わない(?)。一目惚れした男性に猛アタックするのもいいかな。その男性は逃げまくるので、サユリストは信じられない思いで映画鑑賞(笑)。さて、その男性、誰がイイでしょう???

はる(吉永小百合)/夫(柴田恭兵)/信人(森山未來)/真奈美(満島ひかり)/直樹(勝地涼)/結花(宮崎あおい)/七重(小池栄子)/勇(松田龍平)/警官(仲村トオル)/はるの父(里見浩太朗)

監督:坂本順治
(2012/11/04 TOHOシネマズ高知6)

私が、生きる肌

エンドクレジットの背景でDNAのらせんがうごめいている。豚の遺伝子が気になるところ(笑)。

いや~、面白かった!スペインって本当にオンリーワンの変な芸術家が続々と出てくるなあ。こんな話、アルモドバル監督以外の誰が思いつくでしょう。男と女、女と女、男と男、女だった男と女、男だった女と男・・・・、えー、順列組合せが苦手なのでこの辺でやめるけど、そこのところが柔軟だと話も無限大に広がるような気がする。
それにアルモドバル監督は、イイ趣味している。俳優の趣味がイイ。マリリア(マリサ・パレデス)、ビセンテの母(スシ・サンチェス)と母親タイプの俳優に淀川長治さんは泣いて喜びそう(?)。話も母ものだし。その他、性悪セカ(ロベルト・アラモ)を含め適材適所で感心するばかり。

いろいろ感じるところはあったけれど二つだけ。
ロベル(アントニオ・バンデラス)、その娘ノルマ(ブランカ・スアレス)、その一時のお相手ビセンテ(ジャン・コルネット)の三者は可哀想の三つ巴。誰が一番可哀相か考えだすと夜も寝られない。

もう一つは、ベラ(エレナ・アナヤ)の選択について。彼女がテレビのリモコンでチャンネルを切り替えると、チータが獲物を捕らえたシーン、魅力的な男前が映ったシーン、ヨガのシーンが出てくる。手術によって別人となったベラは、今後どう生きるかを三つの選択肢から選ぶ。食うか食われるかの戦いをいどむか、女性として男性を愛して生きるか、外見が変わっても自分自身であることを守っていくか。心身ともに強くしなやかに保つヨガを選んで本当によかった。だからこそ自分を見失わず、母親に再会できた。
ベラも可哀想といえば可哀相なんだけど、アルモドバル作品ではちっとも悲観する必要がないのがいいと思う。男の子を泣かして、女の子と仲良くすればいいじゃん(?)。気になるのは豚の遺伝子だけだ。

[追記]
もう一人の主人公ロベルについても、やっぱり書きたくなった。
私は、外見は他人のためにあると常々思っていた。誰が誰かを認識するためには外見が一番の判断材料であって、自分は自分であることがわかっているから、自分のためには(おしゃれやエチケットのためをのぞいて)自分自身を見る必要性はあまりないのではないかと。
ところが、この映画を観て、自分が自分であることを認識するには自分の外見を見ない方がよいくらいなものかもしれないと思うようになり、これって裏を返せば、自分を認識するのに外見に左右されるってことだよねぇと思い至った。簡単に言えば、ある朝、鏡を見ると他人の顔だった・・・・ってことになったら、「私は誰?」状態に陥るぞと(笑)。たかが上っ面のことなのに、本人でさえ外見で混乱してしまう。(ベラが自分を保てたのは奇跡のようなものか?ヨガって凄いな(?)。)

ロベルは、ベラの中身が誰かわかっていながら亡き妻似のベラに惹かれてしまい、彼女が自分を愛するようになると期待する。ベラへの仕打ちを思えば、よくそんな期待ができるものだと加害者側の罪の意識の薄さを感じたものだったが、そんな問題ではなかったようだ。大嫌いな人にそっくりな人をなかなか好きになれないように、大好きな人にそっくりな敵を好きになってしまう。見た目に左右されるな、中身が大事とは言うけれど、上っ面の縛りはきつい。

LA PIEL QUE HABITO
THE SKIN I LIVE IN
監督:ペドロ・アルモドバル
(2012/11/03 あたご劇場)