アメイジング・スパイダーマン

面白かった。一つ一つのエピソードが消化不良な感じはするけど、力を持つ者には責任があるというポイントは外してなかったと思うし、お馬鹿なというか若気の至りのピーター・パーカー(アンドリュー・ガーフィールド)が成長していく物語として楽しめた。また、スパイダーマンに市民が協力するところがあって、人々を一方的に助けにくる超人的ヒーローとはひと味違う展開が好ましく思えた。更に、父ちゃんのリチャード・パーカー(キャンベル・スコット)は殺されたのかどうなのか、黒幕っぽいオズボーンはどういう形で登場するのか、謎が残されていて次回作も観たくなる。

ピーターのベン伯父さん(マーティン・シーン)、メイ伯母さん(サリー・フィールド)が豪華キャスト!ガールフレンドのグウェン・ステイシー(エマ・ストーン)は、頭よさそうだし勇気もあるし、悲鳴をあげるだけのヒロインではなさそうだ。グウェンの父ちゃん、キャプテン・ステイシー(デニス・リアリー)は、アンドロイドとして生き返ってほしいような端正な容姿だった。ラダ博士(イルファン・カーン)は、生きているのか死んだのかよくわからなかったけれど、次回にも登場してほしい印象に残るお顔。
そして、なんと言っても今作は、カート・コナーズ博士(リス・エヴァンス)の魅力全開!
生々しい、妖しい・・・(^o^)。器の小ささが堪らない(いや~ん)。
そうそう、ピーターをいじめる坊主頭の男の子、タイプ、タイプ~。p(^_^)q ピーターより可愛いので困った(笑)。

THE AMAZING SPIDER-MAN
監督:マーク・ウェブ
(2012/06/30 TOHOシネマズ高知7)

ウィンターズ・ボーン

ハードボイルドや~~!
麻薬密造小屋の焼け跡場面あたりで、「ウィンターズ・ボーンって、父親の骨を拾う話なのか!」とビックリ。
しかし、まあ、いまさらながらに映画は世相の鏡だ。
『8Mile』(2003年)でホワイト・トラッシュという言葉を覚えたが、昔、日本人が憧れたアメリカは今いずこ。ミズーリの田舎だから、リー(ジェニファー・ローレンス)たちは、まだ家屋敷があるのかもしれないが、17歳の少女が病気の母と幼い弟妹を養うなんて出来るのか?軍隊に入ろうとするのも無理はない。(面接官の合理的な説得にもアメリカを感じた。)イギリス映画だと、すぐに福祉局の職員が飛んでくるケースだと思うけど、アメリカ映画はワイルドだ。自分たちで生きるしかない。狩りもするけど、お隣さんから、たまにある差し入れが命の綱だ。
こういう厳しい貧しさを背景にし、物語を語るに徹したこの作品はエンタメらしからぬエンターテイメントだ。感傷を排した語り口を堪能した。

リーの父親に対して、初めは「保釈中に子どもを残して逃げるなんて、なんちゅう親や」と思っていた。ところが、物語が進むにつれて、リーたちにとっては良い父親だったとわかってくる。
誰かが父親の保釈金を出した。その目的は、掟破りの口を封じるため。だから、父親は家に帰れず、逃げ隠れしていたのだ。
父親が捕まる前は、いい暮らしだったと思う。子どもたちには遊具があるし、馬も飼っていたし、洋服もけっこうある。リーが弟妹に狩りを教える様子から、きっとリーもこうして父親に教わったんだろうと想像する。アルバムをめくると幸せそうな父母の写真があるし、父とティアドロップ伯父(ジョン・ホークス)の子どもの頃の写真も可愛い。生業が麻薬密造でも普通の家族の絆があったのだ。だから、リーは父が弾いていたバンジョーを売れない。奥に仕舞ったバンジョーの前でリーが佇むシーンがあるが、売る気などさらさらなくて、父のことを思っていたのかもしれない。

田舎の女の子リーが、君はローレン・バコールかフェイ・ダナウェイかというくらいにクールでカッチョイイ。でも、彼女が母の髪を梳くときの穏やかな表情をはじめ、答えるはずもない母に「どうしたらいいの」と涙を見せたり、ティアドロップ伯父に脅されて本気で怖がったり、死にに行くも同然の伯父を見送る表情など、なかなか見応えがあった。『あの日、欲望の大地で』『X-MEN』と観るにつけ、ジェニファー・ローレンスは大器だなぁ。
また、ハードボイルドにカントリーソングとはこれ如何に。カントリーソングって日本人にとっての演歌みたいなものじゃないのかなぁ?アメリカ人が観ると異化作用でもあるのだろうか。

WINTER’S BONE
監督:デブラ・グラニック
(シネマ・サンライズ 高知県立美術館ホール 2012/06/28)

サラの鍵

ジャーナリストは、パンドラの箱を開ける人というと美しすぎるかな。臭いもののフタを取る人というのでもいい。単に好奇心からだけではなく、災厄や臭気を被る覚悟で真実を世間にさらし、後の教訓にしたりして、よりよい社会にしようとする仕事と言えばカッコイイ。雑誌記者のジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)もとっかかりは、風化しそうな事件を取材して・・・・というものだった。ところが、取材していくうちに社会のためというよりも自分自身が知らずに済ませられなくなっていく。それは好奇心というよりも、希望を探す旅のような気がする。あまりにも酷いサラ・スタルジンスキ(メリュジーヌ・マヤンス)の人生に取材という形で出会って、どこかに希望があるのではないか、生きているならサラに会って確かめたいという気持ちがジュリアを動かしていたのではないだろうか。だけど、希望はなかった。サラの人生は弟の亡骸を見たときに終わっていた。

それでも旅は続く。ジュリアは生前のサラの様子を聞いてみたかったのだろうか、サラの息子ウィリアム(エイダン・クイン)に会うが、息子は母がユダヤ人だったことを知らない。それどころか、真実を話そうとするジュリアを拒絶する。(ウィリアムが真実なんて知りたくもないと言ってのける前に、ジュリアの夫ベルトラン(フレデリック・ピエロ)が、寝た子を起こすようなことをするなと言ったり、義父が本当のことは母には知らせないでほしいと言ったりしていたので、この作品の作り手は、真実を知ることの代償と、代償を払っても知るべきことがあることを描きたかったのだと思う。)

ジュリアと会ったとき、ウィリアムが母の真実を受けとめていたら、ジュリアは自分の娘に別の名前をつけていたかもしれない。あのときのウィリアムにとっては無理もない反応だが、ジュリアにとっては本当のサラの存在が消されたような感じがしたのではないだろうか。サラは存在していたという思いと、幸せになってほしいという思いをこめて、彼女は自分の娘にサラと名付けたように思う。

ELLE S’APPELAIT SARAH
監督:ジル・パケ=ブランネール
(市民映画会 2012/06/23 かるぽーと)

ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~

「ゲーテ!」という原題がピッタリの若さ炸裂ムービー。二百年以上も昔の若者が、進路と恋愛で悩んでいる。後の文豪もごく普通の若者だったのだなぁ、という作りになっていた。
ゲーテは、何度も小説を投稿するのだけれど、いずれもボツ。しかし、ついにシャルロッテとの恋愛を小説にした「若きウェルテルの悩み」がベストセラーに。身から出た作品は、やはり強い。これで、進路は決まったし、失恋からも立ち直れた。とっても根アカな若者であった。

ヨハン・ゲーテ(アレクサンダー・フェーリング)
シャルロッテ・ブッフ(ミリアム・シュタイン)
アルベルト・ケストナー(モーリッツ・ブライブトロイ)

GOETHE!
監督:フィリップ・シュテルツェル
(市民映画会 2012/06/23 かるぽーと)