ペンタゴン・ペーパーズ

「ベトナム戦争を分析した最高機密文書」=「それまでのアメリカ政府が国民にウソをついてきた証拠」
「スピルバーグ監督の演出力とメリル・ストリープの名演に唸らされる社会派サスペンス」=「今の日本のジャーナリズムの惨状が浮き彫りになる」
男性社会の中、しなやかに凛と立ち上がる女性の映画でもあった。
マスコミの偉い人は政府の偉い人と友だちというパターンは多いのか。一線を引かざるを得ない関係性に気づいたキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)とベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)。まあ、気づいてよかった。
(2018/04/07 TOHOシネマズ高知9)

15時17分、パリ行き

レスキューに自信がないので、事故や事件の現場に居合わせることがないよう常々祈ってきた身には、この作品の主人公がまぶしい。世のため人のため役に立ちたいと子どもの頃から神様に祈っていたとは凄い。それが英雄的な行為で達成されたのはめぐりあわせというもので、凄いことには違いないが心がけに比べたらおまけのように感じる。
主人公は他に二人いて、彼らはズッコケ三人組(?)として子どもの頃から仲良しで、進路が異なってもずっと友だちだった。テロリストと乗り合わせてしまった特急列車での連係プレーは、三人が歩んできたこれまでと無関係ではないという風に描かれており、思えば「めぐりあわせ」がテーマのような作品だった。

最も印象に残っているのは、撃たれた人の傷口に指を突っ込んで止血している場面。最も忘れたい場面だ(^_^;。軍隊で落ちこぼれていたけれど、訓練していたことが活かされた。普通の人の英雄的行為。祈りが通じてよかったねと思ったが、世の中が平穏無事で人のために役だつことが親切心くらいで済むにこしたことはないとも思った。
(2018/03/07 TOHOシネマズ高知3)

エル

(^_^;、これって笑っていいんですよね?なんかちょっと可笑しかった。ただし、暴力シーンはやっぱり苦手。
『スリー・ビルボード』は先が読めないとよく耳にしたが、『エル』の裏切りもなかなかのもの。毒入り(笑)。
とにかくミシェル(イザベル・ユペール)がチャーミング。自由。子どもがそのまま大きくなった感じ。でも、バリバリの経営者であり、別れた夫の彼女に嫉妬する元妻であり、近所の人夫と何する何であった(笑)。息子を愛する母でもあるが、いわゆる母性愛はほとんどなくて、むしろ息子の父性愛が~~(^o^)。そうそうやっかいな両親を持つ娘でもあった。女ってこんなもんと言うのではなく、ミシェルはミシェル、一人の人間として燦然と輝くのであった(笑)。
(2018/03/17 あたご劇場)

北の桜守

吉永小百合のスタア映画だった。夫役の阿部寛がなかなかの貫禄で夫婦として違和感がなかったのに感心した。
小百合さんの映画だと思って観に行った母は、堺雅人が出ていたので「儲けた!」と思ったそうな。
その堺雅人は、いつもの(?)優男ではなく猛烈経営者を演じて、これまた違和感なし。
樺太からの引き上げ、飢え、闇米、シベリア抑留、高度経済成長、母子愛の大河浪漫。

樺太からの引き上げの描写は、母から聴いた満州からの引き上げを思い出した。母は引き上げ時に二人の兄を亡くしており、祖母はもぬけの殻のようになっていたと話していた。
引き上げ時の描写で一つだけ惜しいと思ったのは、横死した人から食べ物を拝借する場面で、食べ物をポリ袋に入れていたこと。ここは新聞紙か油紙でないと雰囲気が出ない。

映画中の舞台劇部分は、チャレンジだと思った。ケラリーノ・サンドロヴィッチの演出が面白かった。通常の映画部分は登場人物に感情移入しやすいが、舞台劇で物語進めていく部分は登場人物の人生を客観的に見ることになる。こんな風にされると、単に主人公の人生を見て終わりではなく、演劇でも映画でも口伝でも「この物語」を語り継いでいく必要があると作り手が言っているように感じた。
(2018/03/11 TOHOシネマズ高知2)