モスクワ・フィルハーモニー交響楽団

マリインスキーやボリショイのバレエ公演で、ロシアの楽団は音が大きいとは思っていたけれど、これほどとは(笑)。
オードブル的「ルスランとリュドミラ」序曲は、まだほんの序の口だった。音の大きさより速いねーと(笑)。速く弾く曲なんだろうけど。実は思ったより音が小さくて席がよくなかったのかしらと思ったくらいだった。

清塚信也
ピアノ協奏曲は、『さよなら、ドビュッシー』で好演していた清塚信也が臙脂色のスーツで登場。「やぁやぁ、どうもどうも」という乗りでヤンキーとも吉本新喜劇とも取れるような感じだ。(←要するに横山やすし!)椅子が低かったらしく、長いこと調節している間にも客席に向かって「どもども、ちょっと(スンマセン)」みたいな気遣いをしていて、明らかにこれまで見てきたクラシックの人種と違う(笑)。クラシックと言ったって音楽でしょう、楽しくやりましょうというクラシックに囚われない姿勢を感じた。それは演奏にも現れていて、聴きながら「面白いとしか言いようがない」と思っていた。ジャズっぽいと感じたところがあったし、オーケストラと合ってないというか「オケの人やりにくいんじゃ・・・」と感じたところも2カ所くらいあったが、それで破綻しているわけではない。オケと一体となるところも掛け合うところもちゃんとあり聴き応えがあるのだ。終わったらブラボーの声がいくつもあがった。
アンコールが、これまたビックリで、ジャズが始まったかと思ったらさにあらず。何十曲ものクラシックの名曲のサビの部分を次から次へと違和感なくつないで行き(中にはミッキー・マウスのマーチもあった)、ところどころでお客さんから笑い声がもれ(何せ聞いたことあるばかりの曲)、今さっき聴いたばかりのピアノ協奏曲のフレーズに掛かったときには私も思わず声をあげて笑ってしまった。この日、もらったチラシに「清塚信也ピアノリサイタル【K’z Piano Show 2013】笑得るクラシック」があったが、確かにこの人のコンサートは笑えるに違いない。
休憩時間にSさんを見つけて話しかけたらユニークだと連発していた。アンコールの曲について、ああいう曲があるのかとたずねると彼が自分でアレンジしたのだろう、ジャズが好きなのではとのことだった。協奏曲の本編でもジャズっぽいところがあったというと、独奏の部分は演者の好きに弾いてよいとのことだった。Sさんは前から県民文化ホールのピアノは、新規の際に弾き込んでないから音が悪いと言っていたのだが、この日も「季節が(湿気の多い)今でしょう、あれだけ弾いても音が(鳴らない)。可哀想ですね。」とピアノが可哀想と繰り返していた。

本気を出したラッパ系
プログラム最後の交響曲。なんか、まるごと聞いたことある~。いったいどこで聞いたのだろう。それはともかく、ラッパ系、笛系が凄かった。茹でダコのように真っ赤になっているのが二階席からでもわかる。クラシックって思い出したように主題を繰り返す。1回目では唯々凄いと思ったが、2回目は何だか可笑しくなって笑いかけた。でも、3回目以降は、これだからオーケストラは苦手なのだよ(室内楽が好き)と、ラッパ系の人の血管より自分の頭痛が心配になってきた。しかし、交響曲とはよくしたもので、第2楽章(ゆったり~)、第3楽章(ピチカート、ピチカート(^o^))と雷の後の慈雨(また雨か(笑))みたいな救いがあって助かった。
それにしても管楽器が、これほど前面に出るとオケとしてのバランスはどうなんだろう?そう思っていたら、アンコールはチェロやバイオリンの独奏があったりで弦楽器が気持ちよく、ここでバランスを取ったか(笑)という感じだった。
全体として、バレエにしてもオーケストラにしても私はロシアの垢抜けなさというか、土着的(三枚目的)なところが好きだと改めて思った。


指揮:ユーリ・シーモノフ
ピアノ:清塚信也

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調Op.23
 --ピアノ・アンコール--
名曲サビ・メドレー
 ----休   憩----
チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調Op.36
 ----アンコール----
チャイコフスキー:弦楽カルテット曲 アンダンテ
チャイコフスキー:「白鳥の湖」より ロシア舞曲
チャイコフスキー:「眠れる森の美女」より ワルツ

(2013/06/25 県民文化ホール・オレンジ)

デヴィッド・ボウイ「ネクスト・デイ」

「ボウイの新譜、いいんじゃない。桁外れにっていうわけじゃないけど。近頃のアホみたいなのより、ずっとまし。」というジェームズの偉そうな(笑)ツイートで、はっとして即注文。すっかり発売日を忘れていた年寄り信奉者とちがって、若い信奉者は、ちゃんと発売日にツイートしていた(感心)。

で、普通に良いアルバムだと思う。長くファンであった者にとっては「ボウイも素直になったなあ」と感慨もひとしおだ。
とてもポジティブな印象のアルバムで、音だけ聞いているとボウイのやる気を感じる。ちらほらと歌詞を見ると、かなり死を意識しているようだ。
2004年のリアリティ・ツアーの途中で心臓発作で緊急入院。その後、ほとんど活動をしてなかったため、近年では引退したと思われていた。もちろん私は引退はありえないと思っていたが、心臓を患ったことと年齢からして死は意識しているだろうと思っていた。そういうボウイの内面が素直に反映されているみたいで、良いアルバムになったと思う。

昔、同人誌に「実体掌握不能 変光星写真(ピンぼけ)」と題してボウイの変化について書いたことがあった。簡単にまとめると、感受性が鋭い青年期に不安や恐怖を原動力に名曲を量産してきたボウイも、中年となり精神的に安定してきたにもかかわらず(それならそれでハッピーな曲を作ればいいのに)、本人の切実性や必然性とはかけ離れた曲を作り出したため、その曲が表面的な浅いものに思えるし、彼自身も無理をしているように見えるというようなことだ。
「ネクスト・デイ」を聴いて、それにまた一項を加えたい。老年に差しかかり、「しょぼしょぼ死ぬ気はない」とストレートな意思表明を聴けたように思うと。

公式サイトもどんどんニュースが舞い込んで活動期に入ったといった感じだ。
自分の誕生日に新作の発売を発表したり、芝居がかったことも好きだよねぇ(笑)。
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館で「DAVID BOWIE IS」展をやるそうで(もう始まってるの?)。前売り券42,000枚売れたんだって。
ワールド・ツアーには慎重になるだろうと踏んでいたけど、この調子だともしかして「あり」?
映画ファンとしては、ダンカン・ジョーンズ監督作にぜひ出演を!

ダーティ・ボーイズ

ボウイの新譜「ネクスト・デイ」の2曲目のダーティ・ボーイズが、超簡単なように見えたので訳してみたくなった。

何かタバコ・ロードみたいな
寂しい路上暮らし
君をそこから連れ出して
フィンチリーの市場へ行こう

君には羽根飾り帽子を買ってあげよう
僕はクリケットのバットを盗んで
窓ガラスを叩いていって、騒ぎ立て
イカレたヤツらと夕日に向かって走るんだ

太陽が沈むとき、賽は投げられる
賽が投げられるとき、選択の余地はない
イカレたヤツらと走って行こう

僕らはみんな狂ってる、僕らはみんな君が必要
僕とヤツらは、みんな行ってしまうよ
君はもう見送るだけだとわかったね
だけど僕らは月じゃない、燃えさかる太陽へ向かうんだ

太陽が沈むとき、賽は投げられる
賽が投げられるとき、選択の余地はない
イカレたヤツらと走って行こう

Something like Tobacco Road
Living on a lonely road
I will pull you out of there
We will go to Finchley Fair

I will buy a feather hat
I will steal a cricket bat
Smash some windows, make a noise
We will run with Dirty Boys

When the sun goes down
When the sun goes down and the die is cast
When the die is cast and you have no choice
We will run with Dirty Boys

We all go mad we all want you
Me and the Boys we all go through
You’ve got to learn to hold your tongue
This ain’t the moon this is burnin’ sun

When the sun goes down
When the sun goes down and the die is cast
When the die is cast and you have no choice
We will run with Dirty Boys

・・・・超難しかった(涙)。妄想だから間違っていてもイイか(笑)。
ダーティ・ボーイズって言われると、ミック・ジャガーを先頭にイギー・ポップやブライアン・イーノなどボウイと仲良しのお兄さん方が思い浮かぶ。
夕日に向かって走るなんて一言も書かれていないけど、見えるんだよねぇ。
皆さんはどうですか?

四国フィルハーモニー管弦楽団創立25周年記念演奏会

楽しかった!よくまとまったオーケストラだと思った。アマチュアってすごいなー。トヨタコミュニティコンサートは今回だけでなく、全国のアマチュアオケを応援して演奏会を開いているそうだから、日本にはハイレベルな演奏を聴かせる楽団がたくさんあるということだろうか。昔の田舎歌舞伎も全国の村々でハイレベルな上演をしていたのかもしれない、などと想像が飛んでいった。

ヴァイオリン協奏曲のゲストは五嶋龍とのことで、私はヴァイオリニストで五嶋と言えばみどりちゃんでしょうくらいしか知らなかったのだけど、解説の三枝さんによるとこの人のお陰でホールが満員になったのだとか。帰宅して調べたらみどりちゃんの弟だった。24才で東大卒で天才ヴァイオリニストでイケメンと紹介されたものだから、なぬ、天は二物以上与えたかと構えて聴き始めたが、とてもよかった。楽器がよく鳴るし、音色が多彩だし、何より伸び伸びしている。クセがなく、ゆとりがあるようにも感じて、年季の入ったベテランの若々しい演奏みたいと思った。

ブラームスは30年くらい前にN響の演奏で交響曲を聴いて、同じフレーズをいやというほど繰り返すとは粘着質なヤツ(嫌い)と思っていた。だけど、クララ・シューマンの映画を観て、彼がクララをずーっと好きだった(イケメンだった)ことを知り、粘着質にも種類があるよねとちょっと好感を持ち、この日の協奏曲では、ヴァイオリンて色んな音が出る不思議な楽器だと思っていたけど、色んな音色をいっぺんに聴けるよう作曲したブラームスも偉いと思うようになった。(まだ好きになったわけではない。)

三枝さんが「ベートーヴェンは凄いんですよ」「音楽は芸術だと初めて言った人なんですよ」「とにかく凄い人なんですよ」と言うのでやたらと嬉しくなった。そして、第5番を「運命」というのは日本だけ、大正時代にレコード屋さんが宣伝のため言い始めたと教えてくれた。
第2楽章、第3楽章と「あれ?初めて聴くかも(^_^;」と思ったのはないしょ(笑)。

指揮:澤和樹
ゲスト:五嶋龍(ヴァイオリン)、三浦章宏(コンサートマスター)、広田智之(オーボエ)、三枝成彰(お話)

歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲(ニコライ)
ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77(ブラームス)
交響曲第5番ハ短調「運命」(ベートーヴェン)
アンコール:トリッチ・トラッチ・ポルカ(ヨハン・シュトラウス二世)

(2013/01/27 県民文化ホール・オレンジ)