長い。90分を切っていたら、まだ観られたかもしれない。黒沢清監督は、作品の平均点が高いと思っていたが、勘違いだったろうか。何作品か観ていると思うんだけど。ホラーもので有名な監督らしく、浩市(佐藤健)が、淳美(綾瀬はるか)の借りていた倉庫で捜し物をするシーンなんか、演出の卓抜ぶりに(なぜ、そんなところで怖がらせるのか意図不明ではあったが)震え上がった。しかし、冴えているのはそこだけだったような気がする。突然現れる死体のイメージや濡れそぼった少年や人形のような不気味な人物など、怖がらせようと思えばいくらでも怖くなりそうな素材を散りばめているのに、この恐がりの私が笑ってしまいそうになったのだから、実はお笑い映画なのかもしれない。私はホラーもお笑いも期待していなかった。予告編で、綾瀬はるかが描きそうもない絵を描いていたので、「ミスキャストだ」と指摘するつもりで観たのだというのは嘘だが、黒沢清がSF?SFでなくても自殺の理由をさぐる深層心理ものサスペンス?くらいな軽い期待をしていたのは本当だ。そして、ガッカリなストーリーと陳腐なセリフと手の甲に書いた丸印はいったい何だったのだ的な捨てエピソードと青々しい演技に、久々に座席にいる苦痛を味わった。主演の二人の美しさと、首長竜の滑稽さが(なぜか)救いだった。
監督:黒沢清
(2013/06/01 TOHOシネマズ高知9)