金閣寺との心中物語。世の中、みな汚い。心のよりどころであり、たった一つ残された美しいものである金閣寺を、美しいままで残すには美しいままで葬るしかない。自分が死にたくなったから金閣寺も燃やしたのか。金閣寺を葬るしかないと思い至ったから自分も死ぬ決意をしたのか。
私は、悪の華、戸刈(仲代達矢)のような人物は苦手で、どっちかというと純粋無垢な溝口(市川雷蔵)の方がいい。だって美しい~。綺麗な目だった~。雷さまは溝口その人になりきっていて、ほんまもんの役者やなぁ!少年少女諸君、汚れた大人になったらいかんよ~。でもまあ、半世紀くらい生きつづけると「老師(中村雁治郎)のような世俗にまみれた大人でも、『自分は住職の資格はなくなったかもしれぬ』と悩ましき反省の弁をのたまうのだから、人間としては上等の部類ではないか」と思うようになるでしょう。
それにしても三島由紀夫の描く純粋さってイマイチ私の好みではない。排他的なあまり刃ちっくなのだ。山岸凉子の「パニュキス」という作品が私は大好きなのだが、純粋さというのは確かに排他的なところがあって、主人公のネリーも子どもの頃は排他的だった。その純粋さは利己的だけど無邪気なもので、夢想ちっくなのが三島作品と異なる。ネリーは純粋性を保ちながら大人になる。ちょっと読み返したくなったな。
驟閣寺(しゅうかくじ)は金閣寺。
監督:市川崑
(小夏の映画会 2013/12/15 龍馬の生まれたまち記念館)