鑑定士と顔のない依頼人

面白い!なるほど、2回見たくなるなぁ。これは本当に予備知識なしで観た方がいい。私は予告編だけの情報で、「妖しそう・・・」と変な(?)期待をして観に行った。そうしたら・・・・。

機械仕掛け、時計仕掛け、仕掛けがいっぱい。その仕掛けを通り抜けた後、観客が発見できるものは、嘘と誠のブレンドの面白さと孤独の深さだ。

鑑定士ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ライト)は功成り名を遂げた人物だが、自己中心的なため他人との交わりは淡泊に過ぎ、孤独で寂しい人だ。それが最初の5分で見事に描かれている。
孤児というハンディキャップを乗り越え才覚一つで生きてきたのは偉かったけれど、競売仕切人の立場を利用して、売れない絵師ビリー(ドナルド・サザーランド)の協力のもと、お気に入りの肖像画を長年不正に手に入れており、決して誉められた人物ではない。彼の孤独は、隠し部屋で魅惑の女性に取り囲まれるときに癒される。いやいや~、なかなかイイ趣味。憧れますわ~、どんな絵にしようかな・・・・(危険)。

しかし、ヴァージル、可哀想だった。ああいう人の心をもてあそぶようなことをしてはいけない。恨みのあるビリーはともかくロバート(ジム・スタージェス)もクレアも可愛い顔して、あまりと言えばあまりの仕打ち。それでも私はどちらかというとハッピーエンディングだと思っている。贋作の中にも真実がある(贋作者は自分のサインを残す)のだから、クレアの「何があろうと愛している」というのは、彼女のヴァージルに対するサインであって、実際、プラハに「ナイト・アンド・デイ」という店もあったと考えるヴァージルには希望がある。だけど、詐欺というのは全部が嘘ではなく、誠をほどよくブレンドするから本当らしく見えるものなのだ。「ナイト・アンド・デイ」が実在してもクレアの気持ちはやはり嘘だったのかも。そうだとしても、百の肖像画よりも一つの体験と思って良い思い出を脳内リピートして前向きに生きていけばと思う。けっこう、他人事・・・(^_^;。

ヴァージルはどこまでも自己中心的で、それは最初から最後まで変化なし。こっぴどい目にあって入院中(?)、元秘書が心配してたずねてきてくれたのに、その思い遣りに気づくことさえできないのだ。そんな人が、クレア(シルヴィア・フークス)のためを思って、彼女が広場恐怖症を克服できるようにしていたのが、愛やな~と思ったのだけど、同時に機械仕掛人形(オートマタ)のことを所有者であるはずのクレアに一向に話さないのが不思議でならず(カタログにも入れてなさそうだった)。肖像画の不正入手とこのへんの悪どさで、ヴァージルへの仕打ちとバランスを取っているように感じた。

機械仕掛人形の悪趣味さと悪意には些かゲンナリ。クレアの屋敷が映画の撮影にも使われていると作品中で言われる、嘘と誠のブレンドはやはり面白い。

三角絞めでつかまえての「鑑定士と顔のない依頼人」
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監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
(2014/05/10 あたご劇場)

「鑑定士と顔のない依頼人」への2件のフィードバック

  1. お茶屋さん、こんにちは。

    一昨日付けの拙サイトの更新で、こちらの頁をいつもの直リンクに
    拝借したので、報告とお礼に参上しました。

    なかなかに揺らめいた感想が、
    本作の揺らめきとそのままシンクロしているようで、
    うんうん、わかるわかると非常に興味深かったです(笑)。
    紹介先の感想共々とても刺激的でした。
    どうもありがとうございました。

  2. ヤマちゃん、リンクとコメント、サンキューです。
    面白いけど好きになれない作品ですねぇ。だから、リンク先の「三角絞めでつかまえて」である意味、溜飲が下がったというか(笑)。
    このあとヤマちゃんの日誌も再読しに行きますわ。確か、悪趣味って書かれてましたよね~。

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