昨年のカンヌ国際映画祭で総スカンというか大ブーイングというか酷評を受けた作品で、ガス・ヴァン・サント監督と相性のよい私でも耐えられるかどうか心配していたが杞憂に終わった。
富士の樹海(青木ヶ原)が舞台で、冒頭では森が海のように映し出される。風に揺れる木々の音だろう、波のように聞こえ、雲海とはちがうなぁと思った。
くれい響さんに『永遠の僕たち』(加瀬亮が特攻隊員の幽霊役で出演)の姉妹編と言われたとおり、主人公が死者からの「生きてね」「そばにいるよ」というメッセージを受けとめる物語だ。
亡くなった妻ジョーン(ナオミ・ワッツ)と後追い自殺をしようとする夫アーサー(マシュー・マコノヒー)をつなぐ存在としてあらわれるのがるナカムラタクミ(渡辺謙)で、ナカムラタクミはアーサーにいろいろな信号を送る。中でも最大の信号がキイロとフユだったわけだが、キイロではなくミドリにすればよかったのに。日本人女性の名前としては、キイロよりミドリの方がなじみよい。英語にしたときにグリーン・ウィンターよりイエロー・ウィンターの方が据わりがいいからキイロになったのだろうか。
生前のジョーンとアーサーの描写がとてもよかった。夫婦の関係が何によってどんな風に壊れるか(愛しあっているのに)、険悪な感じがひりひり伝わってきてつらかった。また病魔が二人の関係を修復した形になって、術後の二人の睦まじさが実によき眺めだった。(美男美女でいいねぇ。)紅茶と洗濯物のエピソードもかなり好き。(この映画でマコノヒーを初めて好きと思った。)
残念ながらジョーンが見ていた『巴里のアメリカ人』を私は見てないが、ナカムラタクミが歌っていた「天国への階段」は『巴里のアメリカ人』の中の歌だろう。樹海の階段とラストシーンの水辺から家に続く階段が、どちらも生きるための階段だと思えてくる。
(2016/05/03 TOHOシネマズ高知2)
良かったですよね。
多分東洋的な観念で観る方が、理解出来る作品なのだと思います。
夫の手を取り綺麗に拭く妻、
仕事に疲れてうたた寝している妻に、そっとコートをかける夫。
二人は充分に愛し合っているのですよね。
あの不毛な口論も、愛すればこそだったんでしょうね。
やっとやり直せる機会を得たのに、あの別れは残酷すぎますが、
最後まで観て、人は何度でもやり直せる、再生出来ると言うメッセージも込められていたかと思います。
ミドリに触発されて、アカネはどぉ?とか思いました(笑)。
僕もキイロはなぁ、と思ったもので。
>ケイケイさん
おお!ガス・ヴァン・サントが鬼門のケイケイさんにお墨付きをいただいたわ(^o^)。
なんか西洋人にも通じる作品じゃないかと思ったんですが、西洋じゃもっと具体的な事象じゃないといけないのかなぁ?『ヒアアフター』とか『ラブリーボーン』とかみたいに。よくわかりませんが。
>最後まで観て、人は何度でもやり直せる、再生出来ると言うメッセージも込められていたかと思います。
そうですね。「天国への階段」は再生への階段だったのね。
>ヤマちゃん
レッド・ウィンター、かっちょいいね(笑)。アオイはどうだ!?とも思ったけど、色じゃなくて花になるから反則かな。
yellow winter、green winter、red winterで画像を検索すると綺麗ですよ~。
レッドじゃなくて、スカーレットをイメージしたんだけど、どぉ?(笑) それだと、どっちも名前っぽくなるし。
「あおい」は、上級編やね。
やっぱ最初のミドリがベストっぽい(拍手)。
確かにスカーレット・ウィンターっていそうですね。
>やっぱ最初のミドリがベストっぽい(拍手)。
それじゃ、ミドリってことで、ガス・ヴァン・サントに言っときます(笑)。
いちおう、パープル・ウィンターの画像も検索してみたんだけど(笑)。
お茶屋さん、こんにちは。
これ当地でも公開されたんですけどね、アメリカでの公開未定という情報に接し、恐れをなして観に行きませんでした。お茶屋さんの感想を読んだら面白そう。行けばよかったかな。
winter・色の画像検索、良いですね。やってみるとほんとにきれいで。他の季節でも試してみたけど、やっぱり冬が一番です。blackだと死を連想させる画像が多いのにredだと静謐さの中に生命の息吹を感じさせる画像が多いとか、内包する意味の多様さに惹かれます。
恐れをなしたこと、よくわかります。私も戦々恐々でしたもん(^_^;。
特におもしろかったのは夫婦のシーンなんですが、樹海のシーンも結構いろんなことが起こって退屈しませんでした。ヴァン・サント監督の繊細さがよく出ていましたよ。
>他の季節でも試してみたけど、やっぱり冬が一番です。
いま、冬blackを見てみました。ちょっと怖い感じですね。でも、カッコイイとも言える。他の季節でも見てみますね。
お茶屋さん、こんにちは。
先の拙サイトの更新で、こちらの頁をいつもの直リンクに拝借したので、報告とお礼に参上しました。僕は不評ということを知らなかったので、普通に臨んで普通に興味深く観たのでしたが、こちらでの色と名前の話は愉しゅうございました。
『巴里のアメリカ人』は、なかなか凄い映画だと僕は思っています。観たのはわりと最近なんですが、二年で二回観に行きました。僕にしては、実に珍しいことであります。
眺めのいい映画はいいですよね~。どうもありがとうございました。
ヤマちゃん、コメントとリンク、ありがとうございます。
仲睦まじいのは、まこと良き眺めです(^_^)。
『巴里のアメリカ人』、そうと聴いて、今レンタル候補に入れました。
ありがとうございました。