ル・アーヴルの靴みがき

エンドクレジットをみながら、なんか、しみじみしてしまった。この感慨は、長年カウリスマキ作品を観てきたご褒美のような気がした。
これまで彼の作品は、自殺、失業、失敗、記憶喪失など人生の不運に対照させる形で、人々のささやかな幸せを描いてきた。幸せというのは、仕事の後のひとっ風呂であったり、一輪の花だったり、困った人を助けたりすることだった。そして、何より愛する人が傍にいるということだった。不運に見舞われ、お金がなければないほど、その幸せは引き立った。禍福はあざなえる縄のごとしとは言うけれど、必ずしも交互に来るものではない。これまで不運続きの人々を描いてきた彼が、今回は珍しく幸運の重なりを描いている。でも、そこでも何が幸せかにブレはない。「生きてくれて、ありがとう」、セリフにないそんな言葉も聞こえてくる。いや、幸せは増えたのかもしれない。気の置けないご近所さんも幸せの一つだ。それと、もう一つ。これまでよく描かれたためしがない役人の類だったけれど、今回はすごくいい役回りをもらっている。カウリスマキ、酒を酌み交わせる役人の友だちでも出来たかな?

マルセル・マルクス(アンドレ・ウィルム)/アルレッティ(カティ・オウティネン)/モネ警視(ジャン=ピエール・ダルッサン)/イドリッサ(ブロンダン・ミゲル)

LE HAVRE
監督:アキ・カウリスマキ
(こうちコミュニティシネマ 2012/07/28 喫茶メフィストフェレス)

「ル・アーヴルの靴みがき」への2件のフィードバック

  1. お茶屋さん、こんにちは。

    昨日付の拙サイトの更新でこちらの感想を
    いつもの直リンクに拝借したので、報告とお礼に参上しました。

    相変わらずのカウリスマキ節を見て取っていた僕に対し、
     >これまで不運続きの人々を描いてきた彼が、
     >今回は珍しく幸運の重なりを描いている
    との違いを受け取り、「この感慨は、長年カウリスマキ作品を観てきたご褒美のような気がした」との記述にやや羨望。僕も長年観てきてるのになぁ。
    僕のほうは、長年観てきたことでヒネテしまってるとこがあるなと
    少~しだけ反省させられました(笑)。

    どうもありがとうございました。

  2. ヤマちゃん、こちらもリンクとコメント、ありがとうございます。
    カウリスマキ節に変わりはないですよね。
    テンポとか外しとか、ささやかな幸せとか。
    間借り人の日誌を拝読しましたが、公平な見方ではないかと。私としては、ちと、ひいき目ですわ(笑)。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です