30年ほど前に観たときは、「アナちゃん、可愛い~!」とか「監督、映画が好きやね~。」とかそれくらいの感想しかなかったような気がする。今回は、日々淡々と生きることの大切さと、鎮魂の物語だと感じた。遅ればせながら、やはり名作だと思う。
蜂の巣模様の窓ガラスが現しているように私たち人間も蜂みたいなものだということだろう。アナとイザベル姉妹の父がガラスの巣箱で蜜蜂を観察してわかったことは、小さな世界であっても出来事はあるってこと。それでも、死ぬまでは生きるしかないってこと。
姉妹の母親は、この映画の裏主人公みたいだ。内戦後の日常に倦んで昔の恋人(?)に手紙を差し出したりしてみても、娘が行方不明となると(返信か返戻なのかよくわからなかったが)そんな手紙は火にくべる。娘が無事戻ってくると、うたた寝する夫に毛布を掛けてあげる。少しくらい不満はあっても日常の大切さを実感できたのだと思う。過去でも未来でもなく、蜜蜂のように今を生きることが大切なのだ。
今を生きる生き物といえば、人間の子どももそうだ。アナとイザベルの瑞々しいこと。精霊が血痕を残しいなくなったことのショックから熱を出してしまうアナは、内戦で親しい人を亡くした人の象徴のように思える。そして、精霊を信じ、話しかけ、精霊がそばにいるというのは、亡くなった人の魂とともにあるということだろう。鎮魂でもあるし、生き残った人にとっては再生の土台となる考え方だと思う。スペイン内戦の話に限らない。
タイトルバックの子どもの絵が愛しい。全て本編に出てくる事柄だ(^_^)。
お父さんの職業がイマイチわからない。馬車でどこへ行ってたの?養蜂家とは思えないんだけど。執筆家?貴族?資産家であるには違いない。フランコ側に荷担していたから、上着と金時計が残党兵士の亡骸から見つかっても疑われることがなかったんだよね?町山解説を検索するかな・・・。
追記
よい解説があった!
パパは哲学者で、フランコ政権下で追放されて田舎に移り住んでいるのだそうな。
http://tetsu-eiga.at.webry.info/201603/article_4.html
(シネマ・サンライズ 2017/10/26 高知県立美術館ホール)