（ToT）（ToT）（ToT）
タイトル「ＪＵＤＹ」が宝石のように静に輝いている。もうそれでわかったけれど、最後までジュディ・ガーランドに対する敬意と愛情が感じられる作品だった。
ステージは生きるよすが、子どもは生き甲斐。子どもと暮らしたいためにステージに立つ。子どものためを思い、いっしょに暮らすことを諦めた後も帰る場所はステージ。怖いけれど観客に受け入れられれば最高の場所。
ゲイカップルとの交流には、ただただ涙だった。あの二人はファンの鑑だ。
まぶしそうな目は、不眠だから。力の入った肩も、猫背気味の歩き方も痛々しい。自尊心も抵抗心も、虐待されて潰された。それでも（調子のよいときは）歌で観客を圧倒する。体現したレネー・セルウィガーが素晴らしい。文句なしの主演女優賞受賞だ。
ジュディが可哀想で可哀想そうで、死なないシャロン・テートを作ったタランティーノに元気溌剌のジュディ・ガーランドを作ってもらいたいと思ったが、「過去の」ではあってもハリウッドに反旗を翻すことになるから、よう作らんか。
ロザリン（ジェシー・バックリー）、えらいね！28歳であの働きぶり。圧巻のパフォーマンスへの興奮も、相手の消耗具合を見て即座に抑えることができる。常に適度な距離感を保ちながらも優しい。ジュディとバンマスとのお別れ会。お皿のケーキを愛しそうに眺めてから一切れを口にするジュディを思い出すと、今また涙が出そうになって、ロザリンにありがとう、なのだ。
『イースター・パレード』でジュディ・ガーランドが大好きになった私は、ケネス・アンガーが著した「ハリウッド・バビロン」に載っていた彼女のデスマスク写真がショックだった。文章は忘れても写真が忘れられず、思い出すたび見たくなかったと思い続けていたが、その記憶を『ジュディ 虹の彼方に』で上書きする。痛々しくても美しい。可哀想でも優しい。生きている者には、そういうものが必要だ。
（2020/09/26 動画配信）
私もDVDで先日観ました。映画館で観たかった！
レネー・ゼルウィガー、良かったです。てっきり吹き替えかと思った歌唱パートを自身で歌っていると知りびっくり。才能ある俳優さんなんですね。
ジュディ・ガーランドもきっとレネーの演技を認め、作品の出来に満足していることでしょう。亡くなってずいぶん経つけど、ハリウッドからの贈り物というか映画界が彼女に負わせてしまった痛みに対する罪滅ぼしに、少しはなったんじゃないでしょうか。
まこと映画館で観たかったですね！
あの圧倒的な歌唱、自宅の小さい画面でも胸に迫ってきました。
ゼルウィガーは『ブリジット・ジョーンズの日記』のオープニングでも歌っていたような。『シカゴ』の記憶がないのですが、観てなかったのかな。
歌だけでなく素晴らしい演技でしたよね。彼氏が帰ってきたと思ってドアにひらひらと駆け寄るところ、ああいう可愛い無意識の仕草がジュディ・ガーランドにあったんじゃないかと思うんですよ。私がジュディに持っているイメージにピッタリで嬉しかったし、無意識の仕草に見えるように演技するの上手いな～と思いました。
＞彼女に負わせてしまった痛みに対する罪滅ぼしに、少しはなったんじゃないでしょうか。
うんうん、そう思うことにしましょう（^o^）。少なくとも私は癒やされました。