ホキ美術館名品展

どこにあるかは知らねども、行ってみたいと思っていた美術館。向こうからやって来てくれた(ほくほく)。
しかし、展示作品の2番目から暗雲が立ちこめる。焼き物と果物を描いた絵。もしかしたら剥いた皮も含めて陶器の果実だったのかもしれない(もやもや)。
風景画はやっぱりいいよね~と思いながら進む。しかし、女性のヌードでまたもや暗雲。とても綺麗、綺麗すぎるのでウソっぽい。デジタルの映画になって俳優のアップが見苦しくなった世の中ですぞ。ポーズや小物の配置などの作りすぎが、いつの時代だろうと思ってしまう。そして、ふと、写実の画家全員が本物ソックリに描いたら、そこに個性は表れるのだろうかなどと思う。

で、素晴らしいと思ったのが、五味文彦の作品。どれもいい。カメラ目線の「ひとみ」。右から見ても左から見ても、ずっとこちらを見ている。いるね!こんな人。静物画もパンもレモンも食べれそう。レースがレース。「ホワイト・スクエアー・コンポジション」、面白いねぇ!3個の透明な容器に入ったレモン、キャベツ、白菜。何なのこれって見入ってしまう。衝撃的なのが「ヒゲを愛した女」。さっきの「ひとみ」さん?幾重にも破かれている。さっきのひとみさんは「居た」のだが、今度は紙だからねぇ。でも、すごい存在感だ。「いにしえの王は語る」は森の中で古木に対峙しているような感じだ。

塩谷亮の少年を描いた「光韻」と着物の女性を描いた「相韻」も好きだ。モデルの個性が強い。写実といっても画家の個性はあるのだと実感。
島村信之「ニジイロクワガタ-メタリック-」「オオコノハムシ-擬態-」は、虫嫌いでも「ほしい」と思った。そして、同じ人が描いたとは思えない「籐寝椅子」は、「あるある、こんな時間」と思えた。白いカーテンに昼間の陽射し、寝椅子に横になっている女性。ポーズはとっていると思うが自然に感じられ、全体的に白っぽいのも穏やかな時間を感じさせられた。

人物では他に石黒賢一郎の作品群「綾○○○的な」「ア○○的な」「INJECTION DEVICE(3rd Lot)」「存在の在処」が、人物の個性が感じられてよかった。

展示室が変わって廣戸絵美「階段」が不思議でたまらず長く立ち止まってしまった。鑑賞者の立ち位置は踊り場で、左の階段を見下ろし、右の上り階段とそれに続く上階の廊下(床?)を見ているような絵なのだが、上り階段が急傾斜に見えてしかたがなかったのだ。実際にこんなに急な階段なのか、普段私たちが上っている普通の階段もよく見ると本当はこんなに傾斜しているのか。

大畑稔浩「剣山風景-キレンゲショウマ」のうっそうとした少し湿気がある感じが印象に残っている。同じ作者の「陸に上った舟」の乾いた空気と大違い。空気を描く画家なのかもしれない。

写実主義の画家といえば『マルメロの陽光』のアントニオ・ロペス。2、3年前に長崎で展覧会があって行きたかったが叶わなかった。今回の展覧会の主催が高知県立美術館であれば、美術館ホールで『マルメロの陽光』の上映会があっただろうか。
(2021/04/23 高知県立美術館 主催:RKC、高知放送、高知新聞社)

「ホキ美術館名品展」への4件のフィードバック

  1.  「展示作品の2番目」って、『デルフトの焼物と果実』よね? そーか、暗雲か(笑)。実は僕も、その作品がっていうわけでもないけど、第1展示室に入って行って最初に目に入ってきた作品群に「あれ?」っていう気持ちが湧いたのは覚えてるよん。“究極の超写実絵画”じゃなかったの?って(笑)。けど、少女を人形に見立てたタイトルの『アンティーク・ドール』を観て、そういうことかと頭を切り替えたよ(あは)。

     そしたら、原雅幸の三点に出くわし、おぉ~となった(笑)。で、五味文彦に繋がっていくんよね。仕掛けてあったのかもしれんね。塩谷亮は、もっとええのがあるやろ、出し惜しみやなぁとむしろたまたま既知の作家だっただけに物足りなさが先に立ってしまい、残念。島村信之は、自分の備忘録でも言及してるように、かなり気に入った。

     第2会場最初の『階段』は、それこそ書いておいでの通り、写実とは違うものを表現している感じで、今回の企画ラインに並ぶことに妙に違和感があった。しかも第2会場最初の作品やし、え?なんで?っていう感じ。もしかすると、第1会場とも通じる姑息な(笑)仕掛けやったのかもね。

     今日まとめて読んだ新聞で、『陸に上った舟』は、高新記者が抽出して連載コラムにしていた5作品の最後を飾ってたよ~。 

  2. あ、原雅幸の「マナーハウス」と「ドイル家のメールボックス」を書くこと、忘れた(笑)。
    私はヤマちゃんみたいに“究極の超写実絵画”がわかってないから、頭を切り替えることもなく見ましたが、スパーリアルというと五味文彦と島村信之かなぁ。よくわかってないので単なるイメージですけど。「幻想ロブスター」にも圧倒されましたよ。あまり好きじゃないので感想には書きませんでしたが。
    他は普通の写実っぽい。
    塩谷亮は出し惜しみですか(凄い)。スーパーな感じはしなかったのですが、人物の中身が透けて見えるように感じたのでかなり好きです。人物を画家がどう受けとめているかってことですよね。力を感じます。

    あの5回の記事、記者が書いていたのね~。全部読んだよ~。
    今年の県美の企画展は全部見たいゾよ。アーティストフォーカスも待ち遠しいです。図録も出しているのがいいですよね。

  3.  “究極の超写実絵画”ってのは、“”で括っちゃあるように、チケットに印刷されちょったサブタイトルを転記したまでで、僕が何らかのイメージを確たるものとして持っちゅう言葉じゃないよ。たぶん貴女の書いてる「スーパーリアル」と、僕もそう違わん気がする(笑)。

     ロブスターはなぁ、けっこう粗かったき、圧倒されもせんかったように思う。今年の県美って、あと何やっけな?(たは)。あ、そうや。福富太郎のは、貴女も御存じ、大倉さん推奨やったし、楽しみやね。

     そうそう、冬の定期上映会は、高校の同窓生の撮影監督の特集やから、帰高もしてくるろうし、楽しみにしちゅう。コロナ禍、なんとか収まってくれちょったら、えいけんどなぁ。オフシアター上映は、マスク、マスクと言い立てるんで、もう行く気がせんなっちゅうがよ。黙って観るだけやのに、なんで?しかも密とも違うのにって思うたら、他にも観たい映画は、なんぼでもあるき、さっぱり行かんなった。鬱陶しゅうて。

     展覧会は、歩き回るき、まだ気が紛れるし、時間も映画ほどじゃないし、他の選択肢もないし、仕方ないと我慢しゆうけんど、映画は気が散ってどもならんき、こんなんで観たち、いかんと思うて止めた。

  4. 福富太郎のコレクション展は良さそうでね!
    あとピンホールカメラで撮影したみたいな写真の本城直季と、私は知らないんだけどリーフレットの写真見たら好みのミロコマチコ、好みじゃないけど久々に見てみようの奥谷博、夏の上映会は『悪魔のいけにえ』を予定しているみたいやし、『ウイッカーマン』は再見してみたいし。
    近森眞史撮影監督は同窓生なの?先輩じゃなくて。『キネマの神様』の上映はいつであろう?

    >黙って観るだけやのに、なんで?

    あ~、それはおーてぴあの図書館で注意されて私も思うた。突然のくしゃみとかかなぁ、けど、他に人はいないし、あ、くしゃみの飛沫の接触感染を心配してかとも考えたけど、たいていは上から言われたからっていう思考停止かな。でも、お店の主やイベントの主宰者が集団感染の発生元になったらその後の活動に関わるので神経質になる気持ちはわかる。マスクのできない人がいることはわかってほしいけどね。私も息苦しくなったら除けているものだからして。
    去年のことやけど、スーパーで買い物をしよったら何か他人の視線を感じるがよ~、で、車まで帰ってダッシュボードに忘れていたマスクを見て、それでか~と思った(笑)。素顔に問題があったのかもしれんけど(謎)。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です