登場人物のほぼ全員のキャラクターが極端すぎると思うが、面白く観た。
タイトルの空白が何を指しているのか意味がわからないが、父と子がそれぞれに描いた青い空に白い雲の絵が「空に白で空白?」と思ったりした。
一貫して伝えることの難しさ、伝わることの意外さを描いていると思う。あまりにも皆独りよがりで相手の反応など伺わないものだから、登場人物同士の意思疎通ができた瞬間、ものすごく(?)感動する。たとえば、港にマスコミが押しかけてきたとき添田(古田新太)を守ろうとして雇われ人の若者がマスコミを蹴散らすが、添田は彼の後ろ姿を見て自分のために盾になっているとわかる。人の気持ちを慮ることがなかった添田に伝わるのか(へぇ~)。または、元妻(田畑智子)が怒って去ろうとすると本心を伝えて謝る。元妻の方にも添田の気持ちは伝わって何やら感動の場面になる。添田とスーパーアオヤギの店長(松坂桃李)、あるいは店長と従業員(寺島しのぶ)、従業員とボランティア仲間など、いずれも気持ちは伝わらない。添田の娘を最初に撥ねた女性とその母親(片岡礼子)の謝罪の気持ちも添田には伝わらない。添田が受けとめないと言った方がイイか。要するに発信する方も受信する方も皆自分勝手なのだ。マスコミの視聴者(読者)への伝え方が恣意的なのは、不適正で最も罪深いことは言うまでもない。受信する方はよっぽど気をつけなければならない。
意思疎通というのは相手があってのことで、添田のように娘を亡くしたら、もう、自分(の中の娘)と対話するしかなくなる。生きているときも娘との意思疎通はできてなかったし、これからもそうだ。ずーっと空白が続く。添田の本当の喪の仕事が始まったところで映画は終わる。
(2021/12/27 あたご劇場)