ある冬の晩のこと、ワトソンがホームズに書類の山をどうにかして、もう少し住みやすくしてはどうかと提案したら、ホームズはブリキの箱を引きずり出して「この中にはどっさり事件がある。どんな事件があるか君が知ったら、ここへしまい込むんじゃなく、引っぱり出してくれと頼むだろうな。」と言う。ワトソン、釣られる・・・(笑)。
で、ホームズが若かりし頃の事件を話して聞かせる。マスグレイヴ家の儀式で唱えられる問答文から、宝のありかを探り当てたという話。
私にとっては宝探しゲームは、けっこうどうでもよくて、それよりこの短編の書き出しからして笑えるのが気に入っている。
私の友人シャーロック・ホームズの性格で、しばしば私をあきれさせる異常な点は、思考方法においては全人類中もっとも緻密で体系的であるのに、その上衣服はいささか地味にお上品ぶる癖があるにもかかわらず、個人的習慣となると同宿人の気を狂わせかねぬほど、だらしがないということだ。(東京図書、シャーロック・ホームズ全集第2巻P140)
その後、だらしのなさの描写がつづいていくのだが、ワトソンは自分もアフガニスタンで荒っぽい仕事をしていたので、だらしのなさに掛けては相当なものだがと比較したうえで恐れ入っているのでよけい可笑しい。
ロンドンのシャーロック・ホームズ博物館では、ふたりの部屋が再現されていて写真でしか見たことがないけれど、いごこちがよさそうだった。BBC「シャーロック」の部屋もいごこちがよさそう。だらしのなさに掛けては私もいい線行っているので、そう感じるのかもしれない。