吉永小百合のスタア映画だった。夫役の阿部寛がなかなかの貫禄で夫婦として違和感がなかったのに感心した。
小百合さんの映画だと思って観に行った母は、堺雅人が出ていたので「儲けた!」と思ったそうな。
その堺雅人は、いつもの(?)優男ではなく猛烈経営者を演じて、これまた違和感なし。
樺太からの引き上げ、飢え、闇米、シベリア抑留、高度経済成長、母子愛の大河浪漫。
樺太からの引き上げの描写は、母から聴いた満州からの引き上げを思い出した。母は引き上げ時に二人の兄を亡くしており、祖母はもぬけの殻のようになっていたと話していた。
引き上げ時の描写で一つだけ惜しいと思ったのは、横死した人から食べ物を拝借する場面で、食べ物をポリ袋に入れていたこと。ここは新聞紙か油紙でないと雰囲気が出ない。
映画中の舞台劇部分は、チャレンジだと思った。ケラリーノ・サンドロヴィッチの演出が面白かった。通常の映画部分は登場人物に感情移入しやすいが、舞台劇で物語進めていく部分は登場人物の人生を客観的に見ることになる。こんな風にされると、単に主人公の人生を見て終わりではなく、演劇でも映画でも口伝でも「この物語」を語り継いでいく必要があると作り手が言っているように感じた。
(2018/03/11 TOHOシネマズ高知2)