マイウェイ 12,000キロの真実

オペラ~。あれよあれよという間に話は転がり、登場人物の感情爆発、おー!そうつながるかぁと閉めもよく、ほどよい満腹感で劇場を後にした。
三つの軍服を着た日本人てフィクションかと思っていたら、事実に着想を得た話だそうで、観てみるとなるほどあり得ると思った。
また、始めは日本の軍国主義をナチスドイツみたいに悪者に仕立てた娯楽映画が出てきたかと思いながら観ていたけれど、最後まで観るとそんなスケールに収まらず、ソ連軍もドイツ軍も兵隊の退路を断って戦わせるのは同じだと描かれているうえ、主役の二人、長谷川辰雄(オダギリジョー)とキム・ジュンシク(チャン・ドンゴン)のヒューマンドラマになっていて、めでたしめでたし。サブキャラもいいし、とにかくオペラ。

長谷川辰雄をオダギリジョーが演じると、本来辰雄は軍国主義的な言動・思考には向いていないのに、周囲の環境によって軍国主義化していたように見える。12,000キロの長旅で軍国主義を脱し、ぼんやりしている姿を見ると、君の本当の姿はこれでしょー!と思わずにいられなかった。

MY WAY
監督:カン・ジェギュ
(2012/01/14 TOHOシネマズ高知8)

琳派が高知にやってきた

展覧会のチラシ。若冲、其一が印象に残った。

やはり目玉の伊藤若冲が素晴らしかった。チラシに使われた「雪中雄鶏図」もよかったし、特に水墨画「鶏図押絵貼屏風」には目を見張った。鶏の鋭い動きや偉そうな感じがよく出ていて、活動写真になっていた。若冲と言えば絢爛な絵のイメージがあったけれど、今回、動く水墨画(風に吹かれる竹もよかった)を描いた人としてもインプットされた。
鈴木其一は、今日初めて名前を覚えた。鴨と家鴨や藤もよかったし、「朴に尾長鳥図」なんか渋くてカッコいい今風の絵だと思った。

いいなと思った絵は、近づいてみるほど良い。細密で繊細。着物の柄や葉脈まで描ききっている。作者不詳の絵も見入ってしまうものがあった。
鎌倉から明治まで、掛け軸、屏風、巻物、工芸品などなど、なんかで系統立てているのだろうけど、そのへんは猫に小判。あんまりよくわからなかった。

数年前に応挙展を観てから、お宝鑑定団に出てくる掛け軸が本物か偽物か、当たる確率が高くなった。今日は「ざっとした絵やなぁ」と思っても、よく観ると「これは真似できない」とわかるものが数々あったので、お宝鑑定団で外していたのも今後は当たるような気がする(?)。クローズアップにしてくれたら、かなり当たると思うけどなあ。そんなわけで、職場でも、「お宝鑑定団で本物・偽物の見分けがつくようになるで~」と、この展覧会をすすめようと思う。

フライトナイト 恐怖の夜

面白かったー!!!思わぬ拾いもの。
ちょっと男前でコリン・ファレル似の安上がりの俳優を使っていると思ったら、ラストで「コリン・ファレル」とクレジットされていた。コリン君は、どんな役を演じても可愛かったのに、今回、不気味なうえに憎たらしく、このヴァンパイアには吸われたくない(血を)と思いながら観ていたので本人だったとは心底驚いた。にじみ出る可愛さを封じ込める役作りができるようになったのか、本当に可愛くないヤツになってしまったのか(謎)。
トニ・コレットの出演も嬉しかった。『シックス・センス』以来、母一人子一人の依頼が増えたのだろうか。ガールフレンドもできて手が離れた息子を見守る陽性のママぶりとともに、女性としてもまだまだイケる感じがよく出ており、隣のヴァンパイアを招き入れはしないかと心配させてくれる。
その息子チャーリーを演じたアントン・イェルチンは、登場したときは冴えなかったのに、飽きのこないお顔で瞳も麗しく、高3の役でその髪の毛は大丈夫かしらとは思ったけれど、額の広さといい中途半端なハスキーヴォイスといい、ひとまずポール・ベタニー系と分類させてもらった。主役を張るだけあって魅力的だった。
ガールフレンドのエイミー役イモージェン・プーツは、もちろん可愛かった。エイミーはチャーリーのことを本当に好きで、まるで『七年目の浮気』のマリリン・モンローみたいなセリフを宣うので、自分をダサくてモテないと思い込んでいる男子の救いの女神となっている。イモージェンちゃんは、こんな役柄の魅力を十分表現できているところが俳優としてイケてると思う。
チャーリーのオタクな親友エド(クリストファー・ミンツ=プラッセ)も、カリスマ魔術師と酒飲みひょうたんの落差も楽しいピーター・ヴィンセント(デヴィッド・テナント)もなかなか良かった。

お話はけっこうな穴がいくつかあったけれど無問題。ところどころ感動した(マジ)。
隣人はヴァンパイアだというエドの忠告を信用しなかったチャーリーが、立場代わって母に自分を信用してくれと言う。母が息子を信じるか否か、私にとってはここが最大の山場だった。
チャーリーとエドの悲しき関係(涙)。
ママよりエイミーの方がチャーリーをよく観てくれてるという関係も面白く、将来、母と妻の板挟みになったときは、迷わず妻を取れよ~と思う。

FRIGHT NIGHT
監督:クレイグ・ギレスピー
(2012/01/11 TOHOシネマズ高知9)