雲のむこう、約束の場所

ひじょーに、むずがゆい。しかも、あまっちょろい。私はケール100%の青汁でさえ「たっすい」ので、気の抜けたサイダーのお湯割りをおいしく感じるのは、多分、飢え死にしそうなときではないかと思う。

この作品も『ほしのこえ』と同じで、戦いの中にありながら、戦いとはまるで異なる次元に生きている若者を描いているように感じた。今の朝鮮半島のように南北に引き裂かれた日本が舞台で、北海道と本州が敵対しており戦争が始まろうとしている。この戦争とは異なる次元に生きる夢見る三人が、否応なく戦争に関わることになる。

世界の破滅よりぼくらが大事。それはそうだ。異議なし。ただ、その見せ方が私に合わなかったということだと思う。

電車の中で天井のカーブに反射した幾筋もの光が走るところ、目を見張るほどよかった。作り手は常日ごろから、周りの景色をよく観ているのだと思う。そういう繊細な観察眼が更に活かされ、物語やキャラクターが洗練されてくると、もっと私が観やすい作品になるのではないか。午後の部は、最近の作品が上映されたと思うけれど、どうだったろうか。

監督:新海誠
(高知県立美術館 2012/08/19 高知県立美術館ホール)

ほしのこえ

銀河へ向かって出動して戦うのが女の子で、地球に残って待つのが男の子というのが意外だったので、私の頭も硬いなあ。
戦いよりも個人としての私とあなたが大切な気分。そういう気分が描かれていたような気がする。都会では自殺する若者が増えている、だけど問題は今日の雨、傘がない。そういう気分と四季の風景を重ねて、戦いよりもこっちでしょうと。そんな感じだったなぁ。
監督:新海誠
(高知県立美術館 2012/08/19 高知県立美術館ホール)

トータル・リコール

自分自身を含めて誰を信じてよいのやら。
記憶って本当に当てにならない。
だからと言って記録が正しく真実かというと、そうではないこともあって、主人公はビックリ仰天するわけだ。
アクション映画にするより、サイコサスペンスにしてもらった方がよかったなぁ。
最後、疲れて眠ってしまった。

コリン・ファレル/ケイト・ベッキンセイル/ジェシカ・ビール/ビル・ナイ

TOTAL RECALL
監督:レン・ワイズマン
(2012/08/14 TOHOシネマズ高知6)

桐島、部活やめるってよ

映画部いいな~、やっぱり映画部だなぁ(笑)。
ぎゅうぎゅう詰めの部室(^o^)。全員男子(む~ン)。

金曜日の出来事は、ジグソーパズルみたい。学校って仲の良い者同士がつるむことが多いから、その仲間同士の単位で一つのピースになっていて、ピースごとにカメラを向けた感じだ。映画部、バレー部、バトミントン部、吹奏楽部、帰宅部などに小分けにされた登場人物が、時空間を共にするときがある。それがピースのつなぎ目というわけだ。
学校という閉じられた空間が、更に閉じられた仲間同士の時空間に切り取られバラバラと提示(映写)される。朝礼から下校までの金曜日が終わったとき、(脳内で)パズルが完成して気持ちよかった。それと同時に、これからどうなるの?という強い好奇心も感じた。

土曜、日曜、月曜、そして火曜へと時間が経過するにつれて、個々の登場人物の掘り下げがある。仲間であっても一人一人違う。それぞれの人物が、なかなかに説得力があるというか、身に覚えがあるというか、身に覚えが全くなくてもわかるというか、校内青春物語なのである。バレー部の小泉君の「限界なんだよー!」という魂の叫びや、才能はあっても無目的、何をすればいいのかわからない宏樹の棒立ちぶりなど、特に印象に残った。

そして、雪崩を打って屋上へ駆け上がるクライマックス。吹奏楽部の演奏が盛り上げる(笑)。全体的にクリアーでしっとりと落ち着きのある青味がかった映像なのだが、この屋上のシーンは(前田君がドキュメンタリーを脳内変換したゾンビ映画も)夕映えの赤だ。なんだか切なく美しい。

とりとめのない青春。卒業すれば、実社会青春物語が始まるのだけれど。

映画部:前田(神木隆之介)/武文(前野朋哉)
バトミントン部:かすみ(橋本愛)/実果(清水くるみ)
バレー部:小泉(大賀)
吹奏楽部:部長(大後寿々花)
野球部:宏樹(東出昌大)/キャプテン(高橋周平)
帰宅部:梨紗(山本美月)/沙奈(松岡茉優)

主題歌:高橋優「陽はまた昇る」
監督:吉田大八
(2012/08/11 TOHOシネマズ高知3)