お金を掛けたデルトロ節。『デビルズ・バックボーン』の昔からホルマリン漬けが好きだなあ。(クライマックスはうへぇと思いながらも全体的に)面白く見た。上映時間の長さを感じさせられたわけではないけれど、この話なら2時間弱にしてほしかった。また、不満があるわけではないけれど、スタンをブラッドリー・クーパーより翳りのある俳優が演じたら「哀しみ」がプラスされたかも。だけど、それはピート(デヴィッド・ストラザーン)と被ってしまうから、やはりこのままでいいのだろう。ピートとジーナ(トニ・コレット)のカップル、いいなぁ(^_^)。
人の心を操る楽しさ(全能感と金儲け)と恐ろしさを描いていて、どんな因果があろうともそれは悪いことだとハッキリきっぱりの健全な娯楽作。やっぱり、ギレルモ・デル・トロ監督作品は良い。
エズラ(リチャード・ジェンキンス)、恐かった。こういう業を背負った人には近づかないに限る。リチャード・ジェンキンスは素晴らしい役者だ。今更ながら気がついた。
(2022/03/28 TOHOシネマズ高知3)
カテゴリー: 映画の感想
シラノ
予告編を見たとき、シラノ・ド・ベルジュラックの容姿の問題が鼻ではなく身長になっていて、シラノ役を小人さんの俳優が演じると知り、よき翻案だと思ったうえに、ミュージカルでもあるとのことで期待して観に行った。そして、ガッカリした。
キャッチーな楽曲があまりないのは残念だったけれど、俳優も話も悪いというほどでもなく(特に男性陣はよかった)、剣戟シーンなんかもあって楽しくなりそうなのに、いったい何がいけないのか面白くなかった。
監督のジョー・ライトは何本か観ているけど、相性がよくないのかもしれない。
(2022/03/02 TOHOシネマズ高知9)
ナイル殺人事件
愛についての傑作エンタメ。なかなか見応えがあった(嬉)。
Scott Free Productions Animation, Logo, introでおなじみの黒コートの人が鳥になって飛んでいくと、オープニングは黒い鳥。この繋がりからして「待ってた甲斐があった(ToT)」と感動した。その鳥はどこにいるかというと、第一次世界大戦の戦場なのだ。まさか戦場から始まるとは思いもよらず、またしても感動。そして、ポアロがなぜ髭を生やしているか明かされる。エピローグも髭がらみで、愛ゆえの切ない人間模様が髭に始まり髭に終わる。殺人事件のごちゃごちゃした真相解明が苦手な私にはありがたい「物語」となっていた。
実は事件のごちゃごちゃにも付いていけるように1978年版を予習していたのだが、新型コロナの影響で公開が延期になってしまい、予習したことは霧の彼方。何とか付いて行けたのか行けなかったのか(?)はともかく、犯人さえ忘れていたので「へぇーほぉ~」と楽しめた。
アネット・ベニングに似ていると思っていた人はアネット・ベニングで、どうしてモテるかわからなかったサイモンはアーミー・ハマー美丈夫だったので驚いた。ガル・ガドット(ガルガ・ドットの方が覚えやすい)はゴージャスだし、役者さんのおかげでその他の登場人物もしっかり見分けがついてよかった。残念なのは明暗のコントラストが強めの(っていうの?色味が濃い)画質で、私はもう少しやさしい色合いがよかったと思う。
検索したらケネス・ブラナー監督作は観てないのがけっこうあって落ち穂拾いが楽しみだ。ってまずは公開中の『ベルファスト』を観なくちゃ(^o^)。
(2022/02/26 TOHOシネマズ高知6)
ウエスト・サイド・ストーリー
なに!?スピルバーグが「ウエスト・サイド・ストーリー」をリメイク!?今頃、ナゼ?オリジナルをどんなにアレンジするんだろう、こりゃ、観てみたい!
と思って勇んで行った。始まった。めっちゃ、キレッキレッ!踊りがというより演出が。もちろん歌も踊りもいい。プエルトリコ系移民とヨーロッパ系移民が縄張り争いしたって、君ら全員そこから追い出される似たような境遇でしょう、なぜ、気づかない、なぜ、争うの?悲劇まで起こして虚しいじゃん、という内容も素晴らしい!「ロミオとジュリエット」のシェイクスピアの時代から「ウエスト・サイド・ストーリー」の時代を経て今の今まで続く、人類皆きょうだいのはずの、皆地球人のはずの悲劇を思うと、マジで涙が出てくるラストシーン。(いっしょに倉庫のシャッターを押し上げた者同士が、殺し殺されるとは(ToT)。)
トニー(アンセル・エルゴート)とマリア(レイチェル・ゼグラー)の二人は予告編ではわからなかったけれど、なかなか魅力的だった。プエルトリコ系移民シャーク団のリーダーのベルナルド(デヴィッド・アルヴァレス)の安定感や、対するヨーロッパ系移民ジェット団のリーダーのリフ(マイク・フェイスト)のあぶなっかしい感じもよかった。アニータ(アリアナ・デボーズ)やバレンティーナ(リタ・モレノ)の複雑な胸の内もグー。しかし、オリジナルをどんなにアレンジしたのかは謎。なぜなら、気がついたのだ。私はオリジナルを観てないのに観た気になっていたのかもしれないと。もしくは、観てはいるが観てないと同じくらい忘れていると(汗)。これじゃ、比較できるわけない。それでもジェット団で仲間と認めてもらえないあの人はLGBTQが意識されているとか、アニータのレイプシーンでヨーロッパ系女子が「やめて」と必至に止めようとするところは今現在ならではだと思う。
スピルバーグは本当に大監督になったものだ。
このような悲劇は早く過去のものとなってほしい。
(2022/02/21 TOHOシネマズ高知4)