おみおくりの作法

原題は「静物画」だそうな。どおりで静止映像が印象的だった。加えて、STILLとLIFEのそれぞれの言葉の意味もあり、味わい深い作品だった。
最後はもちろん(ToT)。

あのラストシーンで作り手は、ジョン・メイ(エディ・マーサン)のしてきた非効率な「おみおくり」でいいのだ、世の中は効率が全てではない、もっと大切なことがあると言っていると感じた。

無縁仏、行き倒れのお弔いは、法律に基づいてシステム化される前はどんなだっただろう?四国霊場の遍路道にお地蔵さんが安置されているところがあったりする。昔の巡礼は帰る家もなく行き倒れる人も多かったと聞くので、地元の人たちが弔ったのかな。

ジョン・メイのような人に何かいいことがありますように(-人-)。

次の感想にも感動しました(T^T)。
白木庵さんのブログ:キノ2『おみおくりの作法』
くつしたさんのブログ:映画感想*観ているうちが花なのよやめたらそれまでよ『おみおくりの作法』

STILL LIFE
監督:ウベルト・パゾリーニ
(2015/04/29 あたご劇場)

ジヌよさらば かむろば村へ

あんまり中身はないけど、面白かった。俳優がいいのだと思う。松たか子と阿部サダヲの『夢売るふたり』以来の2回目夫婦とか、ミニスカセーラーの二階堂ふみに「はぁはぁ」する松田龍平とか(笑)。

お金恐怖症の男性が田舎に移住する話は、若者がお金によらない幸せを求めて田舎を指向し始めた昨今の流行だ。テレビ番組でも田舎でビンボー暮らしみたいなのがあるし。大方がそういう気分になる潮流というのがどこかで作られているわけだけど、この作品も時流に乗った小舟の体だ。

「思いどおりにはならねども、どうにかなる」というのは「ケ・セラ・セラ」「レット・イット・ビー」と同様の人生応援詞だけど、それほどの深い意味を持たせず、ひとときのお楽しみに徹した作品だった。

監督:松尾スズキ/ロケ地:福島県
(2015/04/19 TOHOシネマズ高知2)

めぐり逢わせのお弁当

インド映画には珍しく渋い(若しくは演出がつたないのかもしれない)。初老のやもめの侘びしさや、夫に無視される悲しさが、お弁当を介した手紙のやり取りで恋する気持ちに変わっていく。サージャン(イルファン・カーン)が逢瀬に際してるんるん気分で鏡を覗き、自分の老いの匂いに気づいては年甲斐もないと急激に気持ちがしぼんでいく哀しさよ(涙)。彼は隠居生活の地を目指しながら、なぜ、引き返してきたのか(相席になった男性ほどには老いてないぞとでも思ったのだろうか)、心境の変化がわかりにくかったし、イラ(ニムラト・カウル)の方も夫の浮気がわかったとはいえ、サージャンを求めるほどの心の渇きが伝わってこなかった(相手がどんな人がわからないから妄想がふくらんだのだろうか?)。メインの二人の気持ちをわざとぼかしているのか、描き方が舌足らずなのか、どちらかよくわからないが、とにかく二人のめぐりあわせは今一つ釈然としなかった。と言っても詰まらない作品ではなく、脇役の孤児だったというがんばり屋さんの奮闘が微笑ましく応援したくなったし、インドの通勤電車やオフィスの模様、弁当配達、弁当の中身、街角クリケットなど見所満載だった。特に通勤電車は、怖いくらいにほとんど男性(笑)。まな板と包丁を取り出して電車内で調理もできる(^_^;。日本人はビックリだ。

DABBA/THE LUNCHBOX
監督:リテーシュ・バトラ
(2015/04/18 あたご劇場)

ソロモンの偽証 後篇・裁判

数ヶ月前、世界の若者へのアンケート結果として、日本の若者は他の国に比べて規範意識が強いというのを聴いて、それって悲しむべきことだと思っていた。規範意識が強い若者と聴いて私が思い浮かべるのは、ヒトラーユーゲントや紅衛兵なので(^_^;。←バイヤスヤバイが、若者ってアバンギャルドで、アウトローで、アホじゃないとね!と思っている私からするとそういう感じを持ってしまう。若者が3Aでいられる社会の寛容さがなくなっているからなぁ。・・・・というのは映画とは関係ない話だった;;;;。

『ソロモンの偽証』の少年少女は、『前篇・事件』ではかなり軋んでいたけれど、『後篇・裁判』では青く真っ直ぐだった。この真剣さが、ヒトラーユーゲントや紅衛兵のようにならなかったのは、罪の追求ではなく自発的な謎の追究だったからだろうか?藤野さん(藤野涼子)と神原くん(板垣瑞生)を中心にパワーがあった。虐めていた大出くん(清水尋也)、虐められていた三好さん(石井杏奈)、松子ちゃん(富田望生)、自殺した柏木くん(望月歩)もパワーがあった。(三好さんはお母さんの前では泣けなかったけれど、藤野さんの前では泣けた!裁判中、暴れ出した大出くんも羽交い締めだ!みんな、パワー、あるやん!)

あの裁判からイジメがなくなったと現校長(余貴美子)のセリフでサラリと流された感じだったけれど、この多様なパワーのぶつかり合いが、いじめをなくす有効策の一つだと作り手が言っているような気がする。裁判という秩序を保ったなかでの本音のぶつけ合い(大人たちは見守りサポートする)は、ある種の理想が描かれていたような気がする。希望とか祈りのようにも感じる。

裁判所の裁判では裁かれない罪悪感とか、親たちの表情とかもよかった。成島出監督作品にハズレはなかったが、ついに傑作をものしたと思う。

監督:成島出
(2015/04/12 TOHOシネマズ高知4)