浄瑠璃のリズムとメロディ万歳!イイ浄瑠璃を聴くと(例え悲劇でも)病も癒される。これ本当。おこんじょうるり、歌ってみたい。
演出:岡本忠成
(小夏の映画会 2015/02/14 龍馬の生まれたまち記念館)
カテゴリー: 映画の感想
やっさもっさ
話が面白い。淡島千景がきれい。戦後8年の風景と活力と。色んなものが詰め合わされた中、一本貫かれる混血児とその母への応援歌。見事なパッケージに感動させられた。
1953年のコメディ。本当に色んなものが入っている。戦後、強くなったのは靴下と女性と言われていたらしいが、そのことが目に見えてわかる。バリバリのサラリーマンだった夫(小沢栄(栄太郎))は、戦後は虚脱状態でヒモのような生活をしており、妻に隠れてパンパンのラブレターの代筆なんかしている。妻(淡島千景)は、慈善家(東山千栄子)に混血児を預かる施設の切り盛りを任せられており、資金集めなんかもテキパキこなす。この夫婦関係のゆくえを主軸に、戦後の復興・開発にからむ詐欺やら、田舎から出てきた若人(佐田啓二、桂木洋子)が慣れない都会で懸命に働く様子や、朝鮮戦争で負傷し亡くなる米兵などが描かれており、当時は楽しい娯楽映画というだけの作品だったかもしれないが、今や日本の動くアルバムとなっている。しかも、米兵と日本女性の間に生まれた子どもたちが、少なからず孤児となる事情や親と暮らせても虐めや差別を受ける問題を、母子の側に立って描き、見事な応援歌となっていた。
監督:渋谷実
(小夏の映画会 2015/02/14 龍馬の生まれたまち記念館)
ザ・テノール真実の物語
予想外の展開だった〜。てっきり回復して終わりかと思っていたから、あのパンチは効いた〜。ラストの復帰コンサートでは泣いちゃいました。失って二度と取り戻せない元の声。喪失感と、それでも寄って立ってくれる人がいるありがたさ。
クレジットでは、その後の様子も字幕で付言されており、生きていてこその回復力に「そうこなくちゃ」と思った。
監督:キム・サンマン
(2015/02/07 あたご劇場)
KANO 1931海の向こうの甲子園
なんと、先月は野球映画が同時に3本も上映されていた。『アゲイン 28年目の甲子園』(中井貴一が出ているので見たかった)、『バンクーバーの朝日』(実話ベースで石井裕也監督なので見たかった)。普段なら全部見ているのにと悔しい思いをしつつ、『セデック・バレ』のウェイ・ダーション監督がプロデューサーにまわった本作を選んだ。『セデック・バレ』は日本統治下で差別に耐えかねた台湾原住民が武装蜂起した霧社事件を描いた作品だが、その取材中に嘉義農林学校の三民族混合チームが甲子園に出場したことを知り、「えい話や~」と思って映画化を決意したそうだ。
CG(?)映像がぎこちなく、演出もややぬるめな感じながら、実に爽やかで3時間があっという間だった。こういう映画でも見ない限り、当時の高校球児に思いを馳せることもなく、ましてや植民地の球児を知るよしもない。大連などの外地から甲子園へ集結していたのに「へぇ~」と思った。
へなちょこ野球部員の元に訳あり鬼監督が来て猛特訓の末の快進撃。和人、漢人、蛮人という呼称を含む差別がある一方、三民族それぞれの特長を生かした強さと球児らしいチームプレイが感動を呼び、甲子園の観客は「天下の嘉農」と大声援をおくる。青春映画の王道に感涙だった。
あわせて、日本人技術者よって堰やかんがい水路が作られた植民地時代の光の部分が描かれていた。それだけではなく、甲子園で嘉義農林と対戦した札幌商業の元選手(現軍人)が、戦況悪しき1944年の時点から当時を回想する視点も盛り込まれている。この暗い1944年があるおかげで、日本の敗戦や『非情城市』へつづく台湾の激動期を意識させられる。大きな歴史の流れに三民族混合の青春をうまく乗っけたと思う。
監督:マー・ジーシアン
(シネマ・スクウェア2015年2月号)