予告編のケン・ローチの顔の感じがよかった(よい人そうに見えた)ので、敬愛する監督だし、まあ、観てみた。
BBC時代から『わたしは、ダニエル・ブレイク』までの公私を、作品の映像や関係者(本人を含む)のインタビューを交えて描くのに、かなりの頻度でダニエル・ブレイクの撮影風景が差し挟まれる。何だかわかりにくい構成。でもまあ、ケン・ローチ監督の人となりや趣味や、BBCの後の不遇時代に心ならずもCMを撮っていたこともわかった。若い頃、保守党に投票したことがあることを「ワタクシとしたことが!」という雰囲気で悔しそうに話すのが可笑しかった。交通事故で子どもを亡くしたと話すときの表情に『ラビット・ホール』を思い出した。
舞台の演出もやっていて(若いときは演者でもあった)、ナチスに協力したユダヤ人の話(実話に基づく)を公演会期中に批判され、及び腰の劇場支配人の判断で中止された。支配人はインタビューに応じて「わたしの過ちは二つ。一つはこの劇を上演したこと。もう一つは中止の判断をしたこと」。その後すぐケン・ローチのインタビューのカットが挟まれ、今もってその支配人に怒っている(笑)。その演劇の出演者ガブリエル・バーンがこのドキュメンタリーの白眉。「ケン・ローチの頑固さや筋を通すところは、見ていて爽快だ。・・・でも、敵には回したくない。」もう、間の取り方がうまい!話が上手やね。思わず声に出して笑ってしまった。
(2020/05/15 動画配信)
RBG 最強の85才
ルース・ベイダー・ギンズバーグ。アメリカ合衆国最高裁判所の判事9名の内の一人。85歳(当時)で現役とのことで、なぜだかポップカルチャーでも取り上げられ大人気だそうな。
上野千鶴子、田嶋陽子のような人なのか、はたまたジャンヌ・モローかジェーン・フォンダか。そういうイメージで観始めたわけではないけれど、やはり弁が立つ人だろうな~という先入観があったのだろう。その淑やかさと内気さに驚いた。また、けっして怒らない(怒りを表出させない)というのは、爪の垢をもらって煎じて飲みたいくらいのものだ。議論する言葉を持っているということだし、説得力も増すし、後味の悪い思いもしなくてすむ。母の淑女であれという教えを守り、譲るところは譲り半歩でも前に進む、ゆっくり着実な生き方が出来る心のゆとりが彼女の強みだ。
このドキュメンタリーは、RBGさんの両親から始まって学業の優秀なことや法律家となってからの功績など、一通り描かれている。色々と感じることは多かったが、うえに書いた性質というか生き方の他に書きたいのは二つのことだ。
一つは夫のマーティンさん。女性が活躍することが今よりももっと困難だった時代に彼女が活躍できたのは、本人の努力はもちろんだが夫のマーティンさんのお陰でもある。彼女が月ならマーティンさんは太陽のような人であったらしい。有能な女性に対する恐怖心がないから(それは彼に自信があるから)、控えめな彼女を前へと押し出していった。彼と出会ったのは砂浜で砂金を見つけるような幸運だ。女性の頭を押さえつけたり足をひっぱたりしないだけで充分なのだが、充分以上の男性を見るのは爽快だ。
もう一つはアメリカの見える民主制度。RBGさんはリベラル派クリントン大統領の指名で最高裁判事に任命された(上院の承認が必要らしい)。任期がないので辞任か死亡で欠員ができる。合衆国最高裁の判事は、だれが保守派かリベラル派かわかっており、現在はリベラル派が少数になっているそう(トランプ大統領が次々と保守派を任命していったそうな?)。こんな風に各裁判官の立ち位置が見えるのは、アメリカのジャーナリズムが生きているからだと思う。
(2020/05/13 動画配信)
ヒューケラ
2020
2018年に庭に植えたヒューケラは生育も悪く、花も咲かない。なんかモヤモヤしていたところ、園芸屋さんで可愛いヒューケラを発見。即、購入。底面給水の鉢に植え替えた。
一昨年のヒューケラは、植えたところがよろしくなかったのだと思う。日陰がよいと思ったのだが、暗すぎなんだろう。やっぱり植物は基本的に日光が好きなんだな。どうしよう。もう少し大きくなったら剪定して挿し木しようか。でも、なかなか大きくならないし。ヒューケラって葉っぱを楽しむものかもしれないけれど、やっぱり花が咲くと何倍も楽しいから。(2020/05/13)
なぜだか枯れてしまった。水のやり過ぎで根腐れだろうか。夏の暑さ負けだろうか。その頃から調子が悪くなり、伸びてきた雪の下のランナーが根を下ろしている。(2020/秋)
2018
4月に購入し、庭に植えた。(2018/05/04)
ドボン映画ベスト1
ドボンと落ちてなかなか抜け出せない。そういう体質ではないが、若いときに観た『ディア・ハンター』などは衝撃的で次の映画を観る気になれなかった。『旅芸人の記録』は、初めて観たときは全然わからなかったのだが、惹きつけられるものがあり4回くらい観た(入場料を払ったのは2回かな)。『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』は、ただただ楽しく、とあるシーンを観たくて(どのシーンか忘れてしまったが)何回も通った。『プリティー・イン・ピンク』は、ダッキーが歌うシーン(二つある)を観たくて通った(その際、同時上映の『トップ・ガン』はパス。後にヴァル・キルマー好きになったが、『トップ・ガン』ではノーマーク(^_^;)。名画座で上映されるたびに観たのは『タクシードライバー』『スケアクロウ』『エデンの東』『冒険者たち』。一度しか観ていないが、記憶だけで全シーン(のつもり)を順番に書き留めておくことが出来た『暗殺のオペラ』。原作まで手を伸ばしたのは、『戦慄の絆』『ある貴婦人の肖像』(そこからヘンリー・ジェイムズにドボン。)『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』『華麗なるギャツビー(ディカプリオ版)』など。サントラ、DVDまで買ったのも色々あるなぁ。総じて浅い沼にしか落ちていない。
比較的深い沼に嵌まったのがこれ。『大いなる遺産(1998)』だ。
監督のアルフォンソ・キュアロンは緑色が好きとのことで、初期の作品はよく緑を使っていたみたい。『大いなる遺産』ものっけから緑が印象的ですぐに引き込まれた。とにかく映像が美しい!音楽もジャンルはバラバラなのに不思議と統一感がある。イーサン・ホークとグィネス・パルトローはどちらも好きな俳優だし、ロバート・デ・ニーロにアン・バンクロフトも出演!イーサン・ホーク演じる主人公フィンが描いた絵として出てくるフランチェスコ・クレメンテによる作品群もイイ!(パンフレットによると、クレメンテさんは『グッド・ウィル・ハンティング』で主人公ウィルの催眠療法士に扮していたそうだ。)お話は原作がディケンズだからして悪いはずがないと言いたいところだが、当時ニフティの映画フォーラムでは中身がないスカスカの脚本と叩かれていた。しかし、この映画が大好きになっていた私は4回は観たし、CDもスコアとコンピレーションの両方を買って聴いていたし、原作も読んだ。もちろん、同監督の『天国の口、終わりの楽園』『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』も追いかけた。ハリー・ポッターの二作目をキュアロンが監督しなかったら一作目で観るのを止めており、皆勤も果たせなかったと思う。未見の『リトル・プリンセス』、見たいな~。『ローマ』も。
そうそう、若作りは返って老けて見えることを教えてくれたのもこの映画だ。子ども時代(子役が演じる)から二十代の長きに渡る話で、成人前の十代を演じたイーサン・ホークはグィネス・パルトローよりマシだったが、グィネスは若作りの服が致命的に似合ってなかった。似合っていれば大人びた十代で行けたかもしれないのに。似合う服を身につけるって大切なんだと思った。
そういえば、クリス・クーパーをこの映画で好きになって、その後『アメリカン・ビューティー』を始め、よく見かけていたが、最近、どうしているんだろう。ラストシーン、海辺の家にフィンが帰ってきたのを(気まずい別れをしたのに)、よう来た、早う入れという感じでおしりをポンとたたくおじさん。よい役だった。
こんなのまで書いていた。→『大いなる遺産』場面再録