草間彌生「永遠の永遠の永遠」


2004年から2007年にかけて制作された「愛はとこしえ」シリーズは、モノクロームの線画だったので自分が教科書の端に描いた落書きを思い出したりした。もちろん、スケールも根の詰め具合も独創性も桁違い。へんてこりんなものが画面に隙間なく描出されている。そういう1枚1枚が更に壁いっぱいに並べられている。ある種の規則性(機械的な規則性じゃなくて有機的な規則性?)が生まれていて、部屋全体を見渡すとなんだか美しく見える。「天井にも床にも並べちゃえば~」などと思っていると、「チューリップに愛をこめて、永遠に祈る」でやられた(^_^;。入り口と出口のある白い部屋の内側が赤い水玉で四方八方おおわれて、これまた全体が赤い水玉の三つのチューリップが茎がねじれて咲いている。なんちゅう圧迫感。長時間いると気が狂いそうなので第一会場は早々に退散した。

つづく第二会場は、2009年に始まった「わが永遠の魂」シリーズがメインの展示で、「チューリップに愛をこめて、永遠に祈る」に匹敵するくらいの圧迫感があった。ネガフィルムのようなめったにない色の組合せを長時間見ていると脳髄が麻痺しそうな感じがした。エネルギーのマグマが四方からのしかかってくるようで、ここも早々に退散し、最後の展示「魂の灯」に並んだ。

並んでいると「注意書きをお読みください」と言われた。注意書きは、白線の内側から出ないように、また、怖くなったり気分が悪くなったりしたら内側からドアをノックするようにというような内容だった。ものすごく身構えてその白い立方体の中に入り、後ろでドアを閉められたと思ったら、宇宙が広がっていた!これぞ、「魂の灯」。これぞ、「永遠の永遠の永遠」。暗いガラス張りの部屋は無限に広く、水玉は電球に変換されて静かに色を変えながら灯りつづける。血行がよくなり体中に酸素が行き渡り、平静にはるか彼方の地平線まで見晴るかすような心持ちがした。こんなとき、芸術は心身の健康によいと心から思う。

売店で商品となった草間彌生グッズを見ると、「わが永遠の魂」に感じた圧迫感もなければ、「魂の灯」のような心洗われるような力もなかった。ユニークであることの面白さや楽しさを感じるだけだ。
『天使の分け前』上映会のとき撮った写真や、うえの写真のとおり、美術館全体を草間ワールドとしているのは良い試みだと思った。何より楽しい。導入部は楽しく、ちょっとかじると消化不良、しかし、最後はすっきりと。なかなか良い展覧会だったと思う。

(2013/12/01 高知県立美術館)

イサム・ノグチ庭園美術館


我が家の昭和一桁生まれは、2010年に二度入院したのを機に行商を引退し、主夫業に専念している。そのかたわら年に何度か日帰り旅行をして、冥土の土産の収集をしているが、イサム・ノグチ庭園美術館はツアーもないし、予約が必要で場所もわかりにくいのでいっしょに行ってきた。
観覧できるところは、小道を挟んで北と南の区画に分かれている。石垣で囲まれた北の区画にはアトリエと屋外展示作品群、同じ区画の少し奥まったところに展示蔵(と作品)があった。南の区画にはイサムが暮らした家屋と庭、数メートル離れたところから彫刻庭園への登り口があった。
庭園美術館というだけあって、北の大きな樹木(私の大好きな柳も)や庭先の竹林などとてもいい感じだ。作品だけでなく、蔵や日本家屋や内装などの全体にセンスがあり、そこにいるだけで楽しくなってくる。一番よかったのは彫刻庭園だ。急な石段を登っていくと芝に覆われた開けた場所に出る。そこには石舞台があり石舞台から向こうを見るとユーカリの巨木がそびえている。木の反対側にはこんもりと丸い丘が築かれていて、ぐるりと周りながら更に登ると視界が一気に開け町が見下ろせ五剣山も望める。日本人ならお弁当を広げ、おにぎりを頬ばりたくなる場所だ。黄緑色の丘には吾亦紅がたくさん咲いていた。頂上にはイサムの作品が鎮座していたが、他の石は自然石なんだそうな。自然に出来たと思えない穴が開いていたりしたが。表面に出ているのは三分の一で他は地面の中という長さ6、7メートルはありそうな石もここまで運んだという。石の配置と丘のこんもりぐあいとロケーション。水の通り道に敷かれた小石。広すぎず狭すぎず、居心地のいい秘密基地のような場所だった。

(2013/11/16 香川県牟礼町)

熊谷守一のカレンダー

斑猫
贈り物は別として、通常只で手に入るカレンダーをわざわざ買うのは無駄遣いという家訓があるため(?)、これまで仲間と買ったヴァル・キルマーのカレンダーを除いて買ったことはなかったんだけど、生涯2度目のカレンダーに手を出してしまいました。
あー、しあわせ~(^_^)。

本日は、そのカレンダーをスキャンして、デスクトップの背景に設定。windows7はデスクトップの背景をスライドにできるので、取り込んだ12枚がランダムに見れるのです。
あー、しあわせ~(^_^)。

猫は最も絵になる動物ですね。
熊谷守一という人を全く知らないのですが、カレンダーの帯には「『仙人』と呼ばれ、自由な精神に生きたクマガイモリカズ-猫、鳩、雨水等、身近な生命、風景を描いた代表作12点掲載!-」とあります。
そのうちネットで検索してみよー。

安部泰輔展 シャガール世界

シャガールの不思議な森 シャガール×安部泰輔

シャガールの良さがイマイチわからなかった。したがって、シャガール収集に反対だったし、常設も常にパス。ところが、今回、展示場の中央にこんもりとぬいぐるみの丘が見えるではないか。シャガールの絵に描かれたものをぬいぐるみにしているらしい。どれどれ~と入ってみて・・・・。
展示されているぬいぐるみは、どの絵のどれだ!?えーっとと探し回って・・・・、見つけたら嬉しい!!!特に気に入ったのは「オルジュヴァルの夜」という絵の右上の青い天使。ぬいぐるみも可愛いし、絵の中の天使の色もいいなぁ。鼓のような手風琴のような何かわからないものを持っているのもいい。山羊がバイオリンを弾いているのもぬいぐるみで気がついた(笑)。「村の祭り」で小さな棺を担いだ二人もぬいぐるみになっている。棺には花輪が載せられている。などなど~。とっても楽しかった。
聞けば、シャガールの展示場は滞在時間が短いそうで、よく絵を見てもらおうとして企画したのだそうな。好企画だ(拍手)!
「花嫁の花束」なんか単に赤い背景としてしか見えてなかったものが、人や変な動物や何か建物らしきものが描かれていることに気がついた。

安部泰輔 シャガール世界

これは、面白い!楽しくてウキウキ!
「皆さんが描いた不思議な生き物の絵をもとに安部さんが小さなぬいぐるみを作ります。」←毎日10名限定ワークショップ
ということで、描かれた絵と立体となったぬいぐるみを見比べて楽しんだ。
フェルトのうえでゴロゴロしてもいいよとチラシに書いてあるとおり、子どもがお昼寝中ー(笑)。お父さんが団扇で風をそよそよと送っていた。
会場では安部さんがミシンを踏んだり、誰かのお母さんにぬいぐるみの作り方をアドバイスしてたり。
会場の入り口には、シャガールの「料理でいっぱいの食卓」をモチーフにした立体作品があって、これを被って撮影OK。私も被って撮影してもらえばよかったよ(笑)。
通常、私たちが裁縫で小物を作るときは糸の始末とか、布端がほつれないようにとか、綺麗に綺麗に作ろうとするけれど、安部さんの作品はそういうのとは違って、その分やはりパワーがあると思う。

TAISUKE ABE official site

グロリア物語

高知県立美術館通信2013年7・8・9月号に登場したコレクション「グロリア」。うえの写真をご覧のとおり、美術館ホールのホワイエを飾る巨大画だ。行った人はわかると思うけど、まるであつらえたように雰囲気も大きさもホールにピッタリの絵なんだけど、実は・・・というのが今号の美術館通信で明かされている(私は別ルートで聞いてたけど)。
実は、あんまり大きいので収蔵庫に入らなかったんだって。記事を書いた奥野さんの文章も面白い。

「グロリア」を最初に見たのは、パリ郊外のとある倉庫であった。それはとてつもなく巨大な平面作品で、サイズ的に当館が収蔵することはありえなかったのだが、その10ヶ月後、あろうことか「グロリア」は、収蔵品だけで構成した開館記念展に出品されていたのである。
(高知県立美術館通信NO.81より 太字はお茶屋)

苦肉の策でホールに掲げることになったらしいが、正に怪我の功名だ。こういう楽しい逸話つきのコレクションは、県民としても愛着がわくものである。

(2013/08/03 高知県立美術館)