デ・キリコ展

やっぱり、実物を観に行ってよかった。絵画の中の物だけでなく空間が立体的に見えて面白かった。

デ・キリコ展で観た絵の画像
「運命の春」

左の画像「運命の春」は、天井を見ると角のところは部屋の隅だと思えるが、床の方を見ると壁が切れている。画像ではわかりにくいけれど、実物を見ると壁が切れているだけではなく奥(の部屋か何か)へと続いているように見える。他にも「球体とビスケットのある形而上的室内」など奥行きとか浮遊感のある絵や、反対に狭く窮屈な感じのする絵もあった。

上の画像は、左から「形而上的なミューズたち」(図録表紙)、「弟の肖像」、「神秘的な水浴」。
図録は読むのを楽しみにしていたが、作品ごとの解説の文章が硬く内容も難しく、なんべん読み直しても全く頭に入ってこず、買ったのを後悔しているところ。(追記:後の方の長文の二つの記事の方はもっとわかりやすそうだ。)

「弟の肖像」は妹賞。私も好きだ。「死の島」などのアルノルト・ベックリンの影響を受けているという。同じくベックリンの影響下の「山上への行列」も二人のお気に入り。自画像を観て妹は「自分が好きな人」と言っていた。そういえば昔、老年期の全裸の自画像を見て私も同じことを思ったような気がする。自画像は粘りのあるタッチとくすんだ色合いが目立つなぁ(笑)。

「神秘的な水浴」は姉賞。一番笑わせてもらった。サインの下には「1939」と記されているけれど、プレートでもカタログでも「1965頃」となっている(謎)。

憂愁の形而上絵画を期待していたが、その上をいく笑える絵がいっぱいで(古典的な絵でさえ可笑しい)大満足だった。彫刻や舞台衣装なども展示されていて、あれもこれも少しずつではあるものの、90歳で亡くなるまで生涯現役の芸術家の仕事を一通り案内してもらえた感じがした。
(2024/10/25 神戸市立博物館)

2024 わたしの今年の漢字

わたしの今年の漢字を毛筆で書いた画像
「2024年の漢字 高 スーパーの買い物、夏の気温、母の行き先」

今年の漢字は「金」だそうで。夏につづいて秋までもあまりの高気温、また、食費、日用品も目に見えて高くなったので、わたしの漢字とかぶるのではないかと予想していましたが外れました。

昨年末に母が退院。2月には一家全員、2度目の新型コロナに罹患。週2回、輸血に通っていた母も5月に亡くなりました。6月にうん十年ぶりで再会したお友だちの影響でフェイスブックを始め、へぼ俳句を発表しています。号は茶風(チャップリンの「ちゃっぷ」)です。10月、妹とデ・キリコ展へ行ったついでに老人ホームの伯母に会ったところ(会えたら会おうということで誰にも言ってなかったため)、伯母から話を聴いた従弟が「呆けた????」と叔父叔母に相談して大騒ぎになっていたらしいです(^Q^)。

年内は『アングリースクワッド』と『ドクターX』と河田小龍展(歴史民俗記念館)へ行きたいな~。高知県立美術館の小龍展は素晴らしいので、まだの方は是非!書道教室でも宣伝しました。

容堂印譜

冊子「へそまがり大名の自画像 容堂印譜」高知県立高知城歴史博物館の表紙画像

5年前から買っときゃよかったと気になっていた冊子を手に入れた。幕末の土佐藩主、山内容堂の雅印124顆(未完印3顆を含む)の原寸大の印影と印面及び外観の写真に印文の読みと短い解説がついている。側款の拓影はないが款文は掲載されている。

尾本師子学芸員による巻頭の一文「へそまがり大名山内容堂の雅印についての一考察」も面白くためになる。藩主の子は江戸で育つが、容堂は分家の子だったので土佐生まれ土佐育ち。容堂を絡めて幕末のごちゃごちゃも簡潔にまとめてくれてあり助かる。文人、容堂の解説にあたっても、和漢の古典に通じた教養があり、漢詩・漢文・中国風の山水画・人物画をモノするのが文人であり、当時の支配階級などに(武士や町人まで文人に憧れる人も)大勢いたとことがわかった。そして、容堂が依頼して作った印の印文などから、酒飲みのへそまがりという人物像が浮かび上がるので冊子の副題は「~の自画像」というわけなのだ。幕末の殿様は「いごっそう」だったのね。

うえの画像の右上の印影は「厳璋之章」。厳は字として使用しており、「厳しい」でも「厳か」でもなく、現海南省北東部にある樹木の名であり、この木は水に浸すと酒を生じるらしい。璋は名前として使用しており、玉器の圭を縦半分にした玉器で才智不完全を意味するとのこと。章は印のこと。

そのすぐ下の印影「酔中真味」は、酔いの中にこそ人生の真の味わいがあるという意味。更にその下の「美禄」は漢書中の「酒は天下の美禄なり」から。一番上の縦長の印「酒非丹醸不可酔水非鴨河不可飲」は、「酒丹醸(伊丹)にあらざれば酔うべからず、水鴨河(鴨川)にあらざれば飲むべからず」で土佐藩の篆刻家、壬生水石の刻。

表紙画像の中で一番大きな印影「学書者紙費学医者人費」は、「書を学ばば紙のかかり、医を学ばば人のかかり」と読み下し、書の上達のためには紙を沢山使わなければならず、医術の上達のためには患者を大勢死なせなければならないという意味で、北宋時代の文人、蘇軾(蘇東坡)の「墨宝堂記」からとった容堂お気に入りの詩句とのこと。5年前は書道に入門する前なので蘇軾なんて知らないから、買うのが今になってよかったかも。

安政の大獄で蟄居中は「武陵罪人」なんてのを使用したり、ドラマで見る蟄居とは違って余裕?

印材は鶏血石、水晶、銅、竹の根などで、鈕(判子のつまみ)が獅子などの動物や羅漢だったり、薄意(表面の彫刻)は全面に蓮の葉や花が施されていたりで財力を感じる。また、金襴の仕覆や箱が付属しているものが多く、仕覆の底面や箱に白絹を貼って印の材質、鈕の形、印文、刻者名の書き入れがあるという。

昔から判子やスタンプが好きだった。三個のスタンプが毎月送られてくる通販を契約したこともあったし、年賀状などのハガキの落款用に喜々として既製品を買ったり、書道を始めてからは落款印、他にもほしい~と思う。だけど、判子って立体立体しているからなぁ。(文鎮の類いの文房具が部屋のあっちこっちに転がっているのに(^_^;。)立体でも帳面ならまだいいかと思う。御朱印や県内の博物館などのスタンプを集めるのは楽しそうだ。ただし、定規を当てても直線が引けない粗忽者が、きれいに判子を捺せるかどうか。かすれた印影のスタンプ帳を見るのはゴメンだ。

「一捺入魂」と毛筆で書いた画像

イッタラ展へ行ったら

イッタラ展の半券の画像

カイ・フランクのデザインスケッチの葉書画像(トリミングしている)

カイ・フランクのデザインがすっきりしていてよかった。竜安寺の石庭とか好きなんだそうな。うえの画像はいずれもカイ・フランクのデザイン。

あまり期待してなかったが、説明書きを読みながら見ていくとけっこう面白かった。特にガラス製品の作り方!吹きガラスはテレビなどでよく見ていてわかりやすい。それ以外の鋳型に材料を流し込んで作るのは、木製と金属製の型があって昔は木型だったそうな。木型を使うと溶けたガラスが高温のため型が焦げて、その焦げ目がガラスの模様になっているのが面白い。(50年くらい前、我が家にもそんなグラスがあったような気がするが、イッタラ製を真似たものだろう。)焦げると次には使えないわけだから、今では金属製の型を使うことが多いのは無理もない。けれど、両方の型のものが展示されていたアルヴァ・アアルトがデザインした花瓶は、木型で作られたものの方が歪みがあって味がある。美術館の売店で販売していたのは金属製の型のものだろうが、売り切れていてホッとした。ちょっとほしい気がしていたが、花瓶が1万円超えとなると私には不相応だ。ただ、製作の過程を知ると手作りのうえ行程も多いし、人件費も日本より高いだろうから納得できる。地名(フィンランドのイッタラ村)を社名にしているのも好感がもてた。製品のリサイクルにも取り組んでいるし、コンペティションで国籍を問わずデザイナーを発掘してきたことも良いことだと思った。良いものは作り続ける姿勢もとてもよいと思った。
(2024/05/29 高知県立美術館)