2013年マイ・ベストテン

外国映画80本、日本映画45本のうち、「好き」を基準に選んで観た順に並べた。選んでみるとインドがらみが3本入っている。あたご劇場で4連発上映があって、シャー・ルク・カーンの追っかけも始めたことだし、昨年はわたしにとってインド・イヤーとなった。良かったもの順にあげると、『命ある限り』『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』『きっとうまくいく』『タイガー 伝説のスパイ』『闇の帝王DON ベルリン強奪作戦』となる。『マッキー』は今年に入って観たので対象とならないが、入れるなら『タイガー』の後かな。かるかん率85.6%。がんばった(笑)。

ベストテン

泣く泣く落とした作品

その他

  • 娯楽映画は弱きを助け強きをくじくものであってほしいと私は思っているので、どんなに面白くても作り手の思い遣りを感じられない藁の楯は娯楽作品として失格だと思う。殺人又は傷害罪を覚悟のうえで賞金を目当てに清丸(藤原竜也)を狙うのは、生活に窮している家族思いの貧者だとしたところが(これで観客も納得がいくだろうとしたところが)、弱い者イジメに思えてしかたない。
  • うえのような考えなものだから、天使の分け前は上質の娯楽作品に思えた。
  • 映画史に残ると思った汽車ぽっぽや武闘シーンのグランド・マスターは酔いがさめた感じ(笑)。真夏の方程式、少年H、許されざる者そして父になる地獄でなぜ悪いかぐや姫の物語と日本映画も豊作だった。月からのお迎えの場面の音楽、好っき~!

ローン・サバイバー

アメリカ海軍特殊部隊万歳、戦友万歳の転落イタタ敗走アクションであり、困っている人を助けるのに敵味方の区別なく命まで懸けるという善意を驚異として描き称えた映画だった。ただ、私としては、それよりも戦争の様変わりと一つの疑問の方が大きかった。

戦場が印象に残っている映画と言えば、『バリー・リンドン』や『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』などの対面タイプ、あるいは『最前線物語』『プライベート・ライアン』などの前進陣取りタイプ、ヴェトナム戦争ものや、その応用編みたいな市街地のゲリラ戦『ブラックホーク・ダウン』などがある。湾岸戦争やイラク戦争を舞台とした『ジャー・ヘッド』『グリーン・ゾーン』『ハート・ロッカー』は、基地がテントやなんかではなく割合きちんとした建物でテレビなどもあり、家族とスカイプで通信したり、お酒まで飲んでいたりするので、出張先のホテルから戦場まで出かけていって一仕事してまたホテルに帰るというふうに見える。『ローン・サバイバー』も個室が与えられていて、イラク戦争もののようにお出掛け一仕事タイプだと思った。これが戦争も様変わりしたと思った要因だけれど、考えてみれば陣取りもゲリラ戦も暗殺も今もあるだろうから、戦争の様変わりというよりも戦争のあり様にお出掛けタイプが加わったということかもしれない。

それにしてもお終いにデヴィッド・ボウイの「ヒーローズ」が歌われたのには驚いた。「ヒーローズ」は、ベルリンの壁がまだあった頃、壁を隔てた恋人たちの会いたくても会えない絶望的状況に思いを馳せたボウイが、「たった1日だけど会えるよ。そのとき、僕は王で君は女王。1日だけのヒーローだ。(ものすごい意訳;;;)」と叶わぬ夢として作った歌なのだ。そう思っている私としては、ネイビーシールズを(その犠牲も含め)英雄として描いた映画に、なぜ提供したのか大いに疑問なのである。

(シネマ・スクウェア 2014年4月号)

実話三題

吸いついて離れないカメラワーク。切れっ切れ、ガンガン、猛スピードでぶっ飛ばすスコセッシ演出。欲望に直球ど真ん中、悪徳の権化の証券マンを爆発的な熱量とカラリと明るい茶目っ気で演じたディカプリオ、天晴れ。他の誰にもこうは演じられないだろう。アカデミー賞を獲らせてあげたかった。好き嫌いは分かれるかもしれないが、金儲けの狂気を描いた『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は、毒持ちコメディの傑作だと思う。

コメディと言えば『アメリカン・ハッスル』にも笑った。FBIが詐欺師カップルを利用して、おとり贈賄で汚職政治家を一網打尽にするはずが・・・・というひねりの利いたお話が面白く、ダメ男ダメ女の登場人物が愛しくなるほど魅力的だった(カリーヘアのFBIを除く)。しかも必殺デ・ニーロのカメオ出演。やられた(笑)。愛する人と真っ当に生きることが幸せだというラストも良い。

うえの2本は実話ベースで、『ラッシュ プライドと友情』も実話ベースだ。F1レースの爆音は映画館ならではの迫力だし、優勝を争うライバル同士のジェームズ・ハントとニキ・ラウダの描き分けが面白い。「派手」対「地味」あるいは「放縦」対「堅実」とも言える正反対の二人なのだ。観たのはちょうどソチ・オリンピックの頃で、キム・ヨナちゃんが「浅田が泣きそうなとき、自分も込み上げてくるものがある」とインタビューに応えていたという記事を読んで、ライバル同士の友情というものに思いを馳せた。

(シネマスクウェア 2014年3月号)

標的の村

上映会の前後に高知新聞が「沖縄のSOS受けとめて」「沖縄の苦しみ思い涙」という見出しで記事にしていたし、近年の自主上映会にしては大入りの400人を動員したらしいので、ご存じの方も多いと思う。米軍のヘリコプター離着陸施設(ヘリパッド)の建設に反対し、座り込みを続けていた高江地区の住民が通行妨害で国から告訴されたことと、オスプレイの配備に反対する県民が、米軍基地の出入口を封鎖したことをメインに据え、沖縄の人たちの主張がないがしろにされ、いかに手も足も出ない状況に追い詰められているかを描いたドキュメンタリーだ。

上映後、「DVDがあったら買うて、知り合いに配りたい。」という声を耳にした。それだけ人を動かす力のある作品だ。初めて知ったことを他の人にも知らせてあげたくなるのだろう。私もベトナム村を知って衝撃を受けた。ベトナム戦争中だったアメリカ軍は、風土が似ているという理由で高江にゲリラ訓練用のベトナム村を作り、当地の人たちを徴用してベトナム人役をやらせたというのだ。作品名は、このことと、日本に復帰後の現在でも軍事訓練における目標とされるのではないかという高江の人たちの感じている恐れから付けられたものだと思う。

それにしても、ヘリパッド建設の請負業者や米軍基地前の警察官と対峙する一触即発の(高知なら流血沙汰になっていたかもしれない)とき、沖縄の人たちはあくまでも話し合おうとする。忍耐強いからというだけではなく、暴力は無益だと知っているからだろうし、自分の言葉を持っているからだと思う。普段から自分の頭で考えているから言葉にできるのだろう。

私は最近、知らないでいること、無関心でいることは、罪深いと思うようになった。沖縄の人たちを苦しめているのは、日本政府であり、それをめったに報じないマスコミであり、知ろうとしない私たちだ。『標的の村』は、そんなことも考えさせてくれる作品だった。

(シネマスクウェア 2014年2月号)