母のポイントは高く、ベストテン圏内に位置する作品だそうだ。
清丸国秀(藤原竜也)という守るに値しない人物を守らなければならない銘苅(大沢たかお)たちの仕事を、大変な仕事だと言っていた。清丸は死んでも構わないと言うので、清丸が私(お茶屋)であっても死んでも構わないかと聞くと間髪入れず「かまん」と言う。「がーん」とショックをうけながらも、その二重基準のなさは天晴れだと思った。
私はと言えば、これまた結構面白く観た。力のある娯楽作なので、ぐいぐいと最後まで見せられてしまうのだ。しかし、金にあかして孫の仇討ちをさせようとする蜷川(山﨑努)にも賞金のために清丸を殺そうとする人々にも、主権在金の日本の現状を見せつけられているようであり、あまり愉快ではない。それに、護送ものでは既によくできた作品がある。警官(ブルース・ウィリス)が、2、3Km先の裁判所まで証人を護送するのだが、証言されては困るヤツらが証人の命を狙う『16ブロック』。あるいは出来はさほどでもないが、フランス人の麻薬王が、護送を中継していたカメラに向かって「俺を逃がしたヤツに大金を払う」と言ったからさあ大変。コリン・ファレル扮するスワットらが苦労する『S.W.A.T.』。また、犯罪被害者の遺族を描いた作品としては、亡くなった被害者は復讐など望んでいないのではないかという提起をして、遺族の心情をポジティブな方向に向かわせようとした『ラブリーボーン』が私にはまだまだ記憶に新しい。これらの作品を観ていたため、つい比較してしまうのも『藁の楯』には分が悪い。
そしてもっとも残念に思うのは、いくらお金のためとはいえ人殺しはしないだろうという根本的な問題だ。作り手もそういう弱点は重々承知で、傷を負わせるだけでもよいとか、殺人容疑で逮捕されるだけでもよいなどと蜷川に言わせている。更に、清丸を狙った者の動機として、格差社会で貧窮し家族のためにお金が必要だったという風にしている。だけど、いくら貧窮してもやはり人殺しはしないだろう。娯楽映画だから目くじら立てることはないかもしれないが、私としては娯楽映画だからこそ義侠心を発揮し、知恵を絞って誰もが楽しめる作品にしてほしかった。
白岩(松嶋菜々子)/奥村(岸谷五朗)/関谷(伊武雅刀)/神箸(永山絢斗)/由里千賀子(余貴美子)
監督:三池崇史
(2013/05/05 TOHOシネマズ高知8)