インド映画には珍しく渋い(若しくは演出がつたないのかもしれない)。初老のやもめの侘びしさや、夫に無視される悲しさが、お弁当を介した手紙のやり取りで恋する気持ちに変わっていく。サージャン(イルファン・カーン)が逢瀬に際してるんるん気分で鏡を覗き、自分の老いの匂いに気づいては年甲斐もないと急激に気持ちがしぼんでいく哀しさよ(涙)。彼は隠居生活の地を目指しながら、なぜ、引き返してきたのか(相席になった男性ほどには老いてないぞとでも思ったのだろうか)、心境の変化がわかりにくかったし、イラ(ニムラト・カウル)の方も夫の浮気がわかったとはいえ、サージャンを求めるほどの心の渇きが伝わってこなかった(相手がどんな人がわからないから妄想がふくらんだのだろうか?)。メインの二人の気持ちをわざとぼかしているのか、描き方が舌足らずなのか、どちらかよくわからないが、とにかく二人のめぐりあわせは今一つ釈然としなかった。と言っても詰まらない作品ではなく、脇役の孤児だったというがんばり屋さんの奮闘が微笑ましく応援したくなったし、インドの通勤電車やオフィスの模様、弁当配達、弁当の中身、街角クリケットなど見所満載だった。特に通勤電車は、怖いくらいにほとんど男性(笑)。まな板と包丁を取り出して電車内で調理もできる(^_^;。日本人はビックリだ。
DABBA/THE LUNCHBOX
監督:リテーシュ・バトラ
(2015/04/18 あたご劇場)