成瀬巳喜男(2本)

成瀬巳喜男監督の作品は、ずいぶん前に『女の中にいる他人』(夫から不倫相手の女性を誤って殺したと告白を受けた妻は、家庭を守るために事件を隠蔽しようとする。←チラシより)を見たことがありますが、大変緊密な映画でした。
本日観た2本も、さらりとした肌ざわりなのに、たっぷりとした濃密な時間をすごしたなあ、という感じです。それから2本とも女優に特別な照明を当てて美しく撮っているのがよかったです。映画を見に行くっていうのは、私の場合、第一に美しいものを見に行くってことなので。
しかし、なんですなー。浮気な男ばっかりですなー。成瀬巳喜男作品は。
■山の音
父娘以上恋人未満。
嫁と舅の微妙な関係のみならず、姑のキャラクターなど、すごく面白かったです。
原節子、華がありますね。鼻血を止血するところは、美しかったです。いろっぽい。舅(山村聰)も「はっ」としたのでは?
夫(上原謙)は、浮気しており、これは家族の間の周知の事実。上原謙、いやな役だねー。妻と夜の相性がイマイチなのを相手のせいにして。自分が子どもなんでしょ(プン)。
人間関係の微妙さを、ちょっとした表情で見せるのが映画らしくていいですねー。
嫁と舅がお互いを思い遣る姿が微妙にいいんですよー。
舅にとっては理想の嫁で、自分の妻だったらと思ったはずだし、嫁の方でも舅が夫だったらと思ったはず。いずれも恋愛感情とまでは行かなくても。
「富士に登らず老いた」という内容の川柳(理想の女性を嫁にできなかった)や、能面の使い方(仰向くと嬉しそうな顔に、うつむくと悲しい顔になる。原節子に似ている!)もうまかったです。
■浮雲
恋愛地獄。
私には理解できない世界でしたー。『アデルの恋』も真っ青。冷たくされると、なお追いたくなるのね〜。
男の方は、ある意味、誠実なんです。俺なんかやめとけって。
まさに、やめておいた方がよい男。すぐ女に手を出すし、生活力はないし。だけど、翳りがあって、ふと優しい。森雅之だから、惚れるのも無理ないか。殺傷沙汰まであるのよ。男と同棲している妻(岡田茉莉子)を、追ってきた夫(加東大介)が殺したのです。
これは恐ろしい映画だと思ったのは、終盤、女(高峰秀子)が病床から男とお手伝いさんの話しているのを見て、また浮気を心配しているところ。愛していても信用の置けない男って・・・・。病気のときも気が休まらないって・・・・。ただし、この場面、男はお手伝いさんに、女の容態を逐一医者に知らせてくれと頼んでいるところだったのです。
しかし、なんですなあ、この行動力。恋愛パワー。「萌え〜」なんて、あちらさんには理解出来ないかもしれませんね。

「成瀬巳喜男(2本)」への2件のフィードバック

  1.  やっぱり「翳りがあって、ふと優しい」ってのがコツなんですな(苦笑)。翳りか~、道楽者には、なかなか及ばぬものだなー(とほ)。
     「ある意味、誠実」ってのは、とっても大事なポイントでしたねー。

  2. 翳りに自信のない人は、明るさを極めましょう!
    めざせ、朝青龍!
    (隠微にモテるより、健全な人気者がいいじゃないですか?)

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