図書館戦争

原作は第2巻までしか読んでないけど、これがめっぽう面白く、読みながら声を出して笑うこともしばしばだった。キャラクターが立っているし、話の展開が痛快だからだと思う。映画の方もそういうポイントを押さえていて、笠原郁(榮倉奈々)と堂上教官(岡田准一)は原作どおりの遣り取りで笑わせてくれる。郁のルームメイト柴崎(栗山千明)と同僚手塚(福士蒼汰)もイメージどおりでイイ感じ。堂上の親友、かつ、同僚で、郁と堂上のラブコメを一番楽しんでいる小牧(田中圭)の存在感が薄いのが残念だが、仁科司令(石坂浩二)が警察の捜査(個人情報の閲覧)を拒否したり、玄田隊長(橋本じゅん)がメディア良化委員会の検閲を拒否するのはもちろん、図書館の敷地外で銃器の使用は認められていないが、その敷地を買い取って図書館にしちゃえば無問題だと銃器使用を許可するところは、無理が通れば道理が引っ込むとわかっていても痛快なんである。困ったもんだ(笑)。

図書館の自由と憲法で保障された表現の自由がリンクしていることが描かれている。その自由に対するお上の圧力と戦うのが図書隊だということで、大義も一応構えられている。また、図書隊は専守攻防に徹すべしを守っている。ジャーナリストは戦争の内実を報道し、無関心で忘れっぽい大衆に警鐘を発することが本分だということも描かれている。フィクションとはいえ戦争をするのだから、作り手もいろいろ考えているみたいだ。
ラブコメとして大いに楽しんだけれど、相手が殺す気で来るときに応戦すれば、殺し合いにならざるを得ないと思ったし、今、感想を書いていると、考えが映画からは随分と離れて、お上との最終決戦は憲法を盾に裁判所で行うしかないが、司法はかなり政府に取り込まれているからなぁと暗澹たる気分になってきた。

監督:佐藤信介
(2013/04/28 TOHOシネマズ高知9)

ふがいない僕は空を見た

生まれて生きるということの大変さを、序章のセックスから描いた作品のようだ。生まれる前から大変なんだから、生まれた以上どんなに大変でも生きてよねと、けっこう理屈っぽく(セリフで)訴えかけてこられたように感じた。

姑から早く孫をとせっつかれるあんず(田畑智子)を見ていると、生まれる前段からえらいこっちゃと思う以上に、経済的に自立できてないと離婚もままならない哀しさを感じた。でも、結局は離婚したみたいで、あんずのその後の人生が好転することを期待したい。
産院を営んでいる母(原田美枝子)を手伝うこともある卓巳(永山絢斗)は、イイ子だ~。関係ないけど、自然分娩の産院に妊婦さんが引きも切らずで驚いた。自然分娩って、そんなに人気があるの?
良太(窪田正孝)とあくつ(小篠恵奈)もイイ子だ~。コンビニの先輩(三浦貴大)に勉強を教えてもらえることになって喜んでいる良太なんかめっちゃ可愛い。あくつも水浸しになった良太の住み家を、いっしょに掃除してくれたりするのだ。この二人が悪意をむき出しにしてビラをまくシーン、弱い者イジメの原理を見た気がした。良太とあくつは、理不尽に貧しく差別されている。誰に怒りをぶつけたらいいのかわかってないし、怒りをぶつけたい相手(例:コンビニの店長)には怒れないし、そういう鬱積した気持ちのはけ口として自分よりイイ思いをしていそうな者をねたんで、その者の弱みにつけ込んでいじめるのだ。自分より強い立場の者に立ち向かっては行かない。

監督:タナダユキ
(シネマ・サンライズ 2013/04/25 高知県立美術館ホール)

希望の国

悪くはないんだけど中途半端で力のない映画ができてしまった。いつものようにもっと叫んでしゃべり倒しても良かったのに。ただし、福島のあとの長島の原発事故という設定は、何遍でも欺され学習しない日本人、再稼働を許してしまった日本人という真実を突いていると思う。

よかったところ。
半径20キロメートルで線引きして圏内なら避難させるが圏外ならさせないことのバカバカしさは、笑えるくらいによく描けていたと思う。

長島県の人々に寄り添う気持ちは伝わってきた。
ミツル(清水優)は、両親が行方不明のヨーコ(梶原ひかり)を思い遣り、津波で流されて瓦礫の原となった街をあてもなくさまよう。ヨーコの気持ちの整理ができるまでミツルはとことん付き合う。
妊娠中のいずみ(神楽坂恵)が内部被爆予防のため自家製防護服を着て歩く。夫の洋一(村上淳)は職場で笑われてもいずみの側に立つ。
そして洋一の父、小野泰彦(夏八木勲)は、避難指示が出ても認知症の妻智恵子(大谷直子)と自宅に残る。泰彦を見ていると、死に場所くらい自分で選択してもいいではないかという気にさせられた。

監督:園子温
(小夏の映画会 2013/04/20 あたご劇場)

リンカーン

“now,now,now!”
「にゃう、にゃう、にゃうかぁ」という感じで食指があまり動かなかったけれど、観てよかった。
驚いたのは、監督の前説(笑)。
更に驚いたのはジェームズ・スペイダーの変貌ぶり。出演しているとは気がつかず、おしまいのタイトルクレジットでその名を発見して「えーーーー!?誰、誰?誰を演じてたのーーー?」と思ったら、ロビイストのビルボだった。若い頃は、金持ちでちょっとイケメンのイヤミな男か、繊細神経質男に配役されることが多かったように思う。今の容姿だとタイプキャストされることはなく、いろんな役を任せてもらえるのではないか。別にファンではないけれど、これからも良い仕事ができそうでよかったねぇという感じだ。

それにしても清廉潔白では政治家はやってられないと印象づけられた。リンカーン(ダニエル・デイ=ルイス)は、誠実で話も面白く人気の大統領だ。奴隷制廃止を実現するという大義を持っており、常に何手か先を読んでいる。申し分ない大統領だが、奴隷制廃止の憲法修正案を下院で可決させるため、南部からやってきた使節団との和平交渉を先延ばしにした。その間、戦死者は増えただろう。また、共和党だけでは3分の2議席ないので、民主党の議員を次期ポストという餌で釣ろうと買収工作をした。
急進派のスティーブンス下院議員(トミー・リー・ジョーンズ)は、奴隷制廃止は黒人に市民権を与えるための一歩と思われると修正案への賛成票が減ってしまうので、黒人にも市民権をという本音を隠した。
政治家とは小の虫を殺し大の虫を生かしたり、本音を隠したり嘘にならないようにごまかしたり、いろいろ工作・駆け引きをするものだ。

夫として父としてのリンカーンも面白く見た。息子ロバート(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)が志願するというので、リンカーン夫人(サリー・フィールド)は、なぜ、止めぬと夫にカンカン。戦争をさっさと終わらせるように、憲法修正案をさっさと可決させろとプレッシャーをかける。ファースト・レディの政治への影響力は、こうして発揮されるのかと感心した。

それにしても、南北戦争は奴隷制廃止という大義だけではなく、南北の利害の対立があったはずなのに、それにはまったく触れてない。また、奴隷制が廃止されてから人種差別がひどくなったということもいっさい無視。これだけの上映時間を費やして、それだけかという気がしないではない。

スワード補佐官(デヴィッド・ストラザーン)

LINCOLN
監督:スティーヴン・スピルバーグ
(2013/04/20 TOHOシネマズ高知4)