絵を見る技術

ちょー面白い。もっと早く知りたかった。
美術史研究家の秋田麻早子著、朝日出版社刊。

これを読んだとしても相変わらず猫に小判は予想される。というのは、第5章までに書かれた「見る技術」を読んでから最終章のまとめに掲載された絵を見ても、後で解説された手本どおりに見てなかったからだ。でも、まえがきで「この方法を通して、本当の自分だけの絵の見方を育ててほしいと願っています。」とあるから安心だし、何より小判を見るときの楽しみは確実に増えた。今までは「綺麗な黄金色~」とか「もっと大きい小判がいい」なんていう見方だったけれど、今後は厚みの見当をつけたり、ギザギザを数えたり刻印を探したりしてみたい。

また、絵を見て自分の感じたことを言語化しやすくなるのは願ったり叶ったり。
巻末には「自分の美意識を説明してみよう!」というページがある。好きな絵(映画のポスターでも何でもOK)を3枚選んで、この本で学んだ見方を元に3枚に共通する事項を言語化してみようというわけだ。
それで展覧会で買った図録を眺めて、特に気に入ったものを3枚選び、当該ページに倣ってコメントしてみる。
今回、熊谷守一の図録やアンリ・ルソーの画集ははずしたので、気が向いたときに是非やってみたい。


とりあえず私はこの3枚が好きです。
この3枚に共通した要素は、視線誘導が反時計回りなことと赤が効いていることです。
私は反時計回りに絵を見るクセがあるようです。また、赤を効かせた絵にグッときます。
(画像のリンクに私なりの分析をしてみました。「こんな見方をしたよー」というのがありましたら、リンク先にコメントをいただければ嬉しいです。)


1 フォーカルポイント(主役)と明暗スキーム
2 視線誘導
3 リニアスキーム(構造線と補助線)とバランス
4 色(明暗、彩度、色相)
5 配置


配置について
名画のリーディングライン(主役へと視線を誘う線)や構造線など重要な線やモノ(塊)の配置には秩序がある。秩序があるから安定した絵に見える。秩序の基準となるのが画面を様々に分割する次の1から5までの「マスター・パターン」。分割が目的ではなく、重要な線やモノがどのような秩序で配置されているか意識し、絵の構造(構図)をつかむこと大事。
名画はどこをトリミングしても様になると聞いたことがあるが、構造が秩序だっているからなのだろう。

1 十字線と対角線
2 等分割(1/2、1/3、1/4など。分割してできる四角の対角線で囲まれた菱形なども活用。)
3 正方形(ラバットメント・パターン:長方形の短辺で四隅を起点に二つの正方形を作り、各正方形の対角線の交点を結んで水平線を引く。)
4 直交
5 黄金比

生誕100年 石元泰博写真展


面白かった。
東寺の曼荼羅の写真だけが大きくカラーで、他は皆小さめ。小さめだと写真集とイメージが違わないからいいかもしれない。それに美術館としては比較的管理がしやすいかも。
雑誌の表紙や食品を写した仕事や、面白がって撮ったり作ったりした動画、著名人のポートレート、ニュー・バウハウスのこと、カメラの機材や妻の滋さんのこと。あまり疲れなかったのでよい展覧会だと思う。

石元作品は、雑踏の中で撮っても音がない。だからなのか、元々音がなさそうな桂離宮などよりもシカゴや東京の人や街の方が私には面白く感じられる。動くものの一瞬を切り取った感じの作品が面白い。その前後の動きが想像できるからだろう。それと東京など昔の風物を見るのは単純に面白い。
寄贈を受けた頃だったと思うが、落ち葉や雪の中の足跡や波などの作品「刻」の展覧会があって、私はその前後の動きを想像したのだろう、素晴らしいと思ったのだが、写真をやっている人の言うことには、あのような写真は五万とあるとのことだった。そうか、五万とあるのか、でも、初めて見たから素晴らしく見えたんだよねぇ。
今回の展覧会で「街で見たもの」として撮られているものは、もちろん石元が面白いと思って撮ったものだろう。「もの」自体としては赤瀬川源平などが発見したトマソンなどの方が愉快で面白い。ただし、石元作品には「もの」+「静寂」があって、写真の中の空気が浄化されたように見える。建築物を撮ったものもそんな感じ。カラーになると空気が見えないので、中東のタイルなんか綺麗だけど、やっぱりモノクロ作品がいいかな。(雑誌に載った食品はカラーだけど奇妙で面白かった。)

東京タワーの作り始めみたいな写真があったけれど、あれは何だろう?本物の作り始めだとすると、大きなタワーの足の部分が一枚の写真に収まっているのが不思議だ。タワーから離れて撮れば収まるだろうけど、近くから撮ったように見えた。そういう撮影方法があるのだろうか。
(2021/03/09)

対話

バカじゃないの
バカじゃない
さいってい
バカでも最低でもない

お天気に暑さ寒さ
あら素敵なお召しもの
新型コロナ
やだね、やだね
政府の対応
満点や
ったらいいのにね
Qアノンって誰やのん
あなたもわたしもバカやのん

話をしよう
話しましょう
嫌いでも腹が立っても
話すうちには少しずつ
ちょっとは賢くなるでしょう
いいところも見つかるかもしれないし
子どものために
ずっと先の子どものために

第11回高知国際版画トリエンナーレ展

いや~、素晴らしい!版画って美しく象徴性に富んで隅々まで面白いなあ!
このトリエンナーレ展へ行ったのは、これで3、4回目くらいか。毎回行けばよかった。
写真OKとのことだったので、好きなのと気になったのを撮ったけど、撮り忘れがあって残念。「Friend」(作者:Watanari Magate(タイ) シルクスクリーン 63×100)という作品なんだけど、石の質感が素晴らしい。木陰にある石のようで湿気も感じる。仏教寺院の柱の礎石とたむろする鳥たちを描いたものかと思ったら、涅槃のブッダを背後から描いていて、その台座とブッダの上に鳥が留まっているのだった。鳥の大きさからするとブッダは小さいはず・・・・。

デジタルプリントがいくつもあって、私の年賀状もデジタルプリント(版画)だったのかと思った。そうすると簡単に版画が作れるじゃん。一方で、「Ground-Flock」(優秀賞)は繊細でシャープで透明感があって、いったいどういうプリンター、インク、紙の組合せであんなに美しい作品が出来上がるのか、デジタルプリントも技術の高さは相当なものだ。
(簡単に版画が作れるといえば、プリントごっこ。年賀状は日本人の多くを版画家にしていたのかもしれない。ガリ切りで作る謄写版印刷もなつかしい。その頃の印刷用紙はわら半紙。本当に藁で作った紙だったとは、今回いの町紙の博物館の常設展示で知った。以前にも見ていたはずだけど(^_^;。)

版画展のたびに技法が気になる。作品一覧のパンフレットに版画の技法をまとめてくれているのがありがたかった。それでもイマイチわからないので検索したら、よいページがあった。
動画で見る 版画のつくりかた(町田市立国際版画美術館)


その他(撮影したもの以外で)、感想をメモったものの中から。
「PARENTAL CONTROL」作者:Kacper Bozek(ポーランド) エッチング、メゾチント、ドライポイント 61×100
怖い。監視の目が性器。恐竜のような大きなもの。ペット?仲間にも監視さる。
「Aesthetics of Culture No.2」作者:Teppong Hongsrimuang(タイ)木版 100×99
スケール感。タイ、歴史、プラウド。
「CHANG’AN-XI’AN」作者:Wei Hua Zhou(中国)木口木版 51×100
すごい!中国四千年。「ナニワ金融道」の青木雄二。マイケル・ジャクソン!
「SYMMETRY」作者:Wieslaw Haradaj(ポーランド)リノカット 68×98
アダムとイブ。怖い。
「遠雷 Lotus・地・水・SORA」作者:平木美鶴(日本)木版 92×56
既存、既知。ほっとする。
「ひとり 20.1」作者:鈴木知子(日本)紙版 81.5×55
色がきれい。毛(髪の毛、睫毛)で寂しさ。温かみ。
「ガラスのカーネーション」作者:霧生まどか(日本)リトグラフ 75×60
バラに見える。
「THE ROOT IS PRECEDED」作者:Francisco Robles(メキシコ)エッチング、アクアチント、ドライポイント 83×70
メキシコ~!
「A SINGLE SWALLOW CANNOT MAKE A SUMMER」作者:Alan Altamirano(メキシコ)エッチング、アクアチント 98.5×48.5
フリーダ・カーロ!メキシコ!
「Object-Life in Capitalism」作者:Rattana Sudjarit(タイ)アクアチント 60×80
夜明け前?夜、働いてるの?
「SNOW PRINT:NO.2018.2」作者:阪本幸円(日本)デジタルプリント 60×88 
雪の感じがよく出ている。・・・デジタルプリント?
「饒舌な女主人」作者:吉村順一(日本)エッチング、ビュラン 60×90
インパクト。
(2020/12/15 いの町紙の博物館)