スパイの妻

フィクションなんだけれど史実をブレンドして上手く時代背景を作っていると思う。
見所は、優作(高橋一生)、カッコイイー!聡子(蒼井優)、いろっぽい可愛いー!啖呵も可愛いのじゃ(^_^)。夫を愛するあまり他の者を犠牲にすることをいとわないのでゾッとしたけど。二人の住まい(神戸らしく洋館)や洋服も見所。昭和初期らしい町の雰囲気など丁寧な作り込み。

残念なのは話や細部の詰めが甘いこと。機密文書を妻の目の前で金庫にしまう?深読みさせられた。また、空襲シーンから浜辺への場面展開はちょっと拍子抜け。
お互い愛しあっており、相手の命を救うため騙し合うという展開を詰めた方が、娯楽映画としてスッキリしたと思う。皆が狂っていると正常な者が狂っていることになると厭戦的なセリフを聡子に言わせることによって、娯楽の比重を軽くした感じ。
『ムーラン・ルージュ』を観たときはボヘミア~ンっていいなぁと思ったものだったが、『スパイの妻』ではコスモポリタ~ンもカッコいいなと思った。
(2020/10/21 TOHOシネマズ高知3)

淪落の人

感動ー。
淪落って落ちぶれることだって。
エヴリン(クリセル・コンサンジ)の向上心、働きぶり。
チョンウィン(アンソニー・ウォン)の親切、妄想(切ない)。
ファイ(サム・リー)の恩返し。
フィリピンのメイドたちのたくましさ。
好交流。肉親じゃなくても。
泣きながら元気になれる。
(2020/10/12 ゴトゴトシネマ メフィストフェレス2階シアター)

星の子

とても好きな作品だ。(もう一度見に行こうか迷っている。)
思春期真っ只中のちひろ(芦田愛菜)が、宗教を盲信している両親(原田知世、永瀬正敏)から離れることができるかどうかというお話。伯父さん(大友康平)は両親の目を覚まさせようとするし、姉(蒔田彩珠)は早々と家を出て独立。それでも、ちひろに疑心が生じることはなかったが、一目惚れしたイケメン先生(岡田将生)に両親を不審者と間違われ、ようやくちひろも両親と信心に疑問を持つ。

脚本も撮影も美術もとてもいい。演出も手堅い。無理無駄ムラがない。
ちひろが小学生の頃は新築の家に住んでいたが、中学三年生となった今は古い平屋になっている。飲んでいると風邪も引かないという命の水を買うのに、大分お金をつぎ込んだのだと思う。ちひろの成長ぶりが独白ではなく、回想シーンからわかるようになっている。家出した姉が一旦帰宅したとき、無邪気だったちひろはその時の姉の気持ちがわからなかったが、回想している今のちひろは少しわかるようになっているというふうに。

結局、「信じる者は救われん」。周りでやきもきしている伯父さんや、信じるに値しないと気づき、いっしょに住めなくなった姉は別の幸せを見つけなければならない。私は伯父さんと同じで、怪しい宗教に凝り固まると幸せにはなれないと思っていた。でも、ちひろは両親といっしょにいて幸せなのだ。肩を寄せ合って同じ方を見ている親子の様子に、こういう幸せもアリなのかと思わされた。父が寒さでくしゃみをしても(例え風邪を引いたことがあっても)、「風邪を引いたことがない」と言い切れる思考停止ぶりでも当人が幸せならいいではないか。ただし、かなり閉じられた世界での幸せだと思う。
教団の集会にいっしょに参加した同級生(赤澤巴菜乃)の彼氏は同じ方を見ていけるのだろうか。彼氏と同じ方へ向かうため、彼女の方が教団を脱するかもしれない。(教団の幹部を演じた黒木華と高良健吾が嵌まってた(^m^)。)

姉と異なりちひろが幸運(?)だったのは、幼なじみの親友(新音)が寛容で伯父さんや私みたいな偏見を持っていなかったことだ。命の水の怪しさも両親の奇異な行動も揶揄されることなく、世間とは異なるということを淡々と教えてくれて、イケメン先生にこっぴどい仕打ちを受けたときもカッコよく慰めてくれる。この親友の彼氏(田村飛呂人)もサイコーで、ちひろの涙のシーンで私は爆笑してしまった。この二人のような人間になりたいものだ。二人はちひろの窓だと思う。閉じられた世界に居続けるのは、やっぱり弊害があると思うので。宗教だけに限らないけど。

セリフのうえで美少年エドワード・ファーロングが登場したので、なつかしくなって検索したら、眼差しは相変わらず不健康そうだけど予想を上回る変貌ぶりだった。それでも元祖隈王子は不動なり。
(2020/10/14 TOHOシネマズ高知7)

浅田家!

楽しいファミリー映画だ。
浅田家のインテリア、つかず離れずの家族の距離感、イイネ。
母(風吹ジュン)も父(平田満)も兄(妻夫木聡)も弟政志(二宮和也)も、それぞれに(^o^)。私は消防士さんになりたかった父ちゃんファン。
弟の彼女(黒木華)、弟にはもったいない(笑)。しっかりした人が、そうでない人とカップルになった方が上手くいくのね。

そして、やはり、写真は記録媒体であり記憶媒体であると意識させられた。
政志が東日本大震災後の東北に行って写真を撮れず洗っているとき、一方で被災者にカメラを向けている人が複数いた。多分、報道人だと思うが、これは写真の記録機能を活用しているのだと思う。家族写真を撮ってきた政志は記録よりも記憶の方により重きを置いている。芸術写真はどういうものなんだろう。記録か記憶か、その両方か、はたまた別のものか。木村伊兵衛賞、初めて聞いた。

政志の家族写真を写真集として出版した赤々舎の社長(池谷のぶえ)のキャラが最高だったので、検索してみた。
齋藤陽道の写真集も出していた。

赤々舎
“天才写真家”を次々と発掘 業界に風穴空ける女性創業者の「目利き力」 (1/7)
(2020/10/08 TOHOシネマズ高知7)