私はへそ曲がりなのだろうか。ほぼ1年の訓練で若者が踊りを完成させていく過程にはあまり感動しなかった。確かにおしまいの方が踊りは上手くなっている。最初から上手な人もいて、その人といっしょに踊っていた人の不足が目立ったりしていたが、最後には遜色ないか上手な人を上回るくらい魅力的な踊りになっていて驚いた。若者たちが本心を語ってくれる場面があったし、本番が迫っているのにまだまだ不十分な点があり大丈夫かいねと思わされる場面もあった。最後はスタンディングオベイションのなか、ピナ・バウシュが出演者に一輪ずつバラを渡していく達成感~な場面なのだが、それもこれも淡々と描かれているので淡々と観てしまう。
そんなわけで私が素晴らしいと思ったのは、コンタクトホーフというダンスと、それを創造したピナ・バウシュだった。
コンタクトホーフには喜怒哀楽がつまっている。個人と個人、あるいは個人と集団、はたまた集団と集団の関係性が描かれている。プロのダンサーの洗練された踊りは見応えがあるだろうとは思うけれど、洗練された動きよりも感情を開放して演じることの方がより大切な作品のような気がする。だから、老人が演じても若者が演じても、それぞれの世代のコンタクトホーフが出来上がり、観客は感動することができるのだろう。
そんなわけで、若者たちのコンタクトホーフを「とおし」で見せてもらえなかったのが残念だった。
TANZTRAUME
監督:アン・リンセル
(こうちコミュニティシネマ 2012/08/22 高知県立美術館ホール)
[追記]
2003年の高知公演の感想です。読み返すと、なかなかよう書けてます。よかったらどうぞ。
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ピナ・バウシュとヴッパタール舞踊団